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ブル相場10年のNY株、懸念少なくない
2019/03/11 10:49
「週間で2%超の下落」
先週のニューヨーク株式相場は軟調でした。
S&P500の上値の重さが目立ちました。先週は5日続落、週間ベースで2.16%下落しました。ダウは576ポイント、率にして2.21%下げました。ナスダックは2.46%安で1週間の取引を終えました。
雇用統計をはじめアメリカ経済の減速を示す経済指標が相次いで発表されたことが影響しました。特に、雇用者数が予想を大幅に下回り、想定以上の早いペースで景気が減速するとの不安感を生みました。ECBが経済成長見通しを予想以上に引き下げると同時に、景気刺激に動いたことも株価に影響しました。
加えて、弱い成長目標を掲げた中国とアメリカの貿易交渉の行方が不透明なことも投資家心理の悪化につながりました。つい最近まで、交渉が進んでいる、米中首脳会談で最終合意する可能性があるとされていました。しかし、ここにきて、「まだ多くの相違点がある」とのアメリカ政府高官の発言が相次ぎました。
2月末のベトナムでの米朝首脳会談で、トランプ大統領が金正恩委員長との会談を途中で打ち切ったことで、中国政府が一段と慎重になったと指摘されました。3月末にも開催されるとされた米中首脳会談が4月以降に先送りされる公算が高まりつつあります。米中交渉の不透明感が株価の上値を重くました。
「米中、ブレグジット、経済指標」
先週のニューヨーク株式相場は軟調でしたが、8日金曜日の取引終了間際に下げ幅を大幅に縮めました。CNBCの人気コメンテーターのジム・クイレマー氏は、8日の取引終了後の時間外取引で高く取引されたオンラインでファッション情報などを提供しているスティッチ・フィックスに注目しました。11日の取引終了後に決算を発表しますが、予想を大幅に超える可能性があるとコメントしました。
今週は、スポーツ小売量販店のデイックス、アドビ、ブロードコム、化粧品販売のアルタなども決算発表を予定しています。
アメリカ経済の減速が懸念される中、今週発表される小売売上高(11日)、消費者物価指数(12日)、生産者物価指数(13日)、ミシガン大学の消費者態度指数と鉱工業生産(15日)が株価を動かす可能性があります。
ブレグジットをめぐる12日のイギリス議会の採決が投資家心理に影響しそうです。離脱修正案が否決されると予想されていますが、ブレグジットの期日が延期されるかどうかが決まる可能性があります。米中貿易交渉をめぐる動きも引き続き株価に影響しそうです。
エチオピア航空の旅客機が10日、アディスアベバで墜落しました。墜落したのは、新型のボーイング737MAX8で、去年10月に墜落したインドネシアのライオン航空機と同型でした。ボーイング株は中国からの受注が多いことから米中交渉の不透明感で軟調に推移していました、週明け11日の取引ではエチオピア航空機事故の影響が出そうです。
「ブル相場10年」
金融危機を受けた株価急落から上昇基調に転じて丸10年。ブル(強気)相場が継続中です。3月24日は、ドットコムバブルがピークを打った19周年にあたります。
ブル相場がいつまで続くか。バロンズは、アメリカ経済に減速の兆候があり悲観論が根強いが、近く景気後退に陥るとの見方はほとんどないとした上で、株式相場が近い将来にベア(弱気)入りする可能性が低そうだと伝えました。もうしばらくブル相場が続く可能性があるとしています。
方向を決めるのはアメリカ経済次第。その意味でも、経済指標に株価が一段と敏感になりそうです。
[March 10, 2019 NY 142]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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