週刊2分でわかるNYダウNYダウ平均株価の情報をタイムリーに、より分かりやすくお伝えするレポート
重要局面のNY株式相場
2019/01/15 11:06
「5日続伸後に小幅続落」
14日のニューヨーク株式相場は続落しました。2日連続で下げたのは今年初めて。中国経済の減速懸念が影響、企業の業績への警戒感で投資家心理がやや悪化しました。ダウは86ポイント安。ナスダックは65ポイント(0.94%)下げました。S&P500は13ポイント安でした。
S&P500は2600に近づき、その節目を超えるか注目されています。12月以降に不安定な展開が続きましたが、S&P500がテクニカル上の重要水準とされる2600を超えて上昇すると、上昇基調に戻るとみられています。今週の焦点の一つです。14日の終値は2582ポイントでした。
先週のニューヨーク株式相場は堅調でした。前の週末の上げと合わせ5日連続で上昇した後、6日ぶりに下げて1週間の取引を終えました。
米中の貿易をめぐる次官級協議が進展したと幅広く伝えられたことで安心感が広がりました。焦点は、月末にワシントンで行われる見通しの米中の閣僚協議に移りました。
ただ、メキシコ国境の壁をめぐるトランプ大統領と民主党の対立による政府機関の一部閉鎖は過去最長を記録。週明け後も解決の目処がたっていません。イギリスのEU離脱をめぐる不透明感への懸念もあります。
ダウは先週1週間で562ポイント(2.40%)上昇しました。S&P500は2.54%上げて1週間を終えました。テクノロジー株が積極的に買い戻されたことでナスダックは週間ベースで3.45%上昇しました。
恐れていた事態には発展しなかった。同時に、望んでいた安心感は得られなかった。バロンズは先週の相場展開をこう表現しました。
ウォール街に「January Effect(1月効果)」という言葉があります。小型株、パフォーマンスが悪い銘柄が1月に上昇する傾向があるという一種の格言です。先週の相場展開はまさに「1月効果」だったとの指摘があります。
1月効果が確実になるかどうかは、S&P500が2600を超えて上昇するか。軟調なFAANG株が買い戻されるかどうかにかかっています。
「決算と政局」
今週のニューヨーク株式マーケットでは、四半期決算が最大の材料になりそうです。主要機関の決算発表が相次ぎます。
14日に発表された大手銀行シティグループの決算は市場予想を上回りました。
15日には、JPモルガンチェースとウェルズファーゴが10−12月期の決算発表を予定しています。
16日は、バンク・オブ・アメリカ、ブラックロック、ゴールドマンサックスが四半期決算、17日はモルガンスタンレーとアメックスが決算を発表します。17日にはFAANGの一角であるネットフリックスの決算も予定されています。18日はステートストリート銀行が発表します。
デパートの不振が伝えられる中、16日は商務省の小売売上高の発表予定日です。ただ、政府機関の一部閉鎖の影響で発表が延期される可能性が高そうです。
政府機関の閉鎖の影響が広がっています。11日の給料日には80万人の政府職員に給与が支給されませんでした。保安検査担当者が確保できず、一部の空港に支障が出ています。SECの承認作業が停止され、IPOやM&Aが進みません。
トランプ大統領と議会の対立は平行線のまま。トランプ大統領はややトーンダウンして「非常事態を宣言しない」と述べていますが、予断を許さない。ワシントンの動向をウォール街は注視しています。
「ロシア疑惑」
ニューヨークタイムズが11日、FRBがトランプ大統領に対して、ロシアの利益のために活動していた疑いで2017年に捜査を開始していたと報じました。匿名の情報筋の話を伝えたもの。
これに関連し、ワシントンポストは12日、トランプ大統領がロシアのプーチン大統領との会談記録を隠蔽した疑いがあると報じました。これまでに5回にわたり非公式で会談したが、詳細な記録が一切残っていないことがわかったとしています。
トランプ大統領は、2016年の大統領選でロシアと共謀したことは絶対にないと繰り返し主張。隠蔽もしていないと強調しています。
一方、モラー特別検察官のロシア疑惑をめぐる捜査が大詰めの段階を迎えています。
ロシア疑惑に関連した動きが、政府閉鎖をめぐるワシントンの動きと並んで株式マーケットに影響するかもしれません。
[January 14, 2019 NY 134]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
- ※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- ※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
- ※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
- ※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
バックナンバー
-
2021/02/22 10:12
米国債利回りにらむ
「景気敏感株が堅調」先週のニューヨーク株式市場では、重機のキャタピラーや農機具大手のディーアなど景気に敏感な株が買われました。米国債価格は下落、価格と…
-
2021/02/15 11:25
上がり続ける相場、一部で懸念も
「最高値」大型経済対策への期待、連邦準備理事会(FRB)の超緩和策の維持、ワクチンの普及。新型コロナウイルスのパンデミックで打撃を受けたアメリカ経済が…
-
2021/02/08 10:35
米国債利回り上昇を意識か
「経済対策への期待が相場押上げ」アメリカの1月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比4万9000人増にとどまりました。予想を下振れ。失業率は改善しまし…
-
2021/02/01 10:03
不安定な展開続くか
「ゲームストップ問題」政局混迷、新型コロナウイルスのパンデミック(疾病の大流行)、弱めの経済指標。悪い材料が多いにも関わらず上昇を続けたアメリカの株式…
-
2021/01/25 10:16
目覚めたFAANG+マイクロソフト
「ナスダック前週比4.2%高」利益確定の売りが圧迫し株価低迷が続いたテクノロジー株を代表するFAANG(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、…