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米国債利回り3%でどうなる
2018/04/23 08:53
「終盤に崩れる」
先週のニューヨーク株式マーケット。買いが先行し上昇基調が続いたため、「調整局面は終わった」との思惑が広がりました。しかし、終盤に不安定になり、思惑と現実に隔たりがあることが表面化しました。
ダウは週前半の上昇が寄与して102ポイント(0.42%)上げました。S&Pは週間ベースで0.52%高。ナスダックは0.56%上昇しました。
投資家が注目したのは金利の上昇です。インフレ率の上昇傾向が強まるとの観測、FRBが利上げペースを早めるとの見方などを背景に、米2年債の利回りが2.47%まで上昇しました。2008年9月8日に2.54%を記録しましたが、それ以来の高水準です。米10年債との利回り格差が縮まる「フラット化」がウォール街で話題になりました。
法人向け融資や消費者向けローン、住宅ローン金利に影響することから重視される米10年債利回りは2.96%まで上昇。節目とされる3%が視野に入りました。2月に株価が大幅に崩れたきっかけは、米10年債利回りが3%に近づいたことでした。2月の恐怖感が投資家の頭をよぎったことは明らかです。
個別には、アップルの下げが目立ちました。1週間の下落率は4%を超えました。iPhoneの部品を提供している台湾メーカーが弱い業績見通しを発表したことがきっかけ。アップルの業績への懸念が広がりました。最新機種のiPhone X(テン)の販売を停止したほうがいいのではないかとのアナリストもいました。アップルは、5月1日に四半期決算の発表を予定しています。
「金利と決算」
今週のニューヨーク株式相場は、引き続き米国債利回りに反応する展開が予想されます。米10年債利回りが3%台に乗せると、株価が急落するとの予想が少なくありません。
四半期決算の発表がピークを迎えます。S&P500採用銘柄の約3分の1が決算発表を予定しています。
月曜日はグーグルの親会社のアルファベットやキンバリー・クラーク、火曜日は、3M、コカコーラ、キャタピラー、ボーイングなどが決算を発表します。水曜日は、クアルコム、コムキャスト、フェイスブック。木曜日は、マイクロソフトやスターバックスなど。そして、金曜日はエクソン・モービルやシェブロンなどが四半期決算を発表します。
それぞれ堅調な業績が予想されています。利回り上昇への懸念が根強い中、予想を上回る決算で投資家心理が好転するかが注目です。
経済指標では、金曜日に発表されるアメリカの第1四半期のGDP速報値が株式相場に影響する可能性があります。2.2〜2.3%成長がコンセンサスですが、バークレイズは1.5%の伸びにとどまるとの見通しに下方修正しました。
朝鮮半島情勢も相場に影響しそうです。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、核実験と大陸弾道ミサイル(ICBM)の実験の中止と核実験場の閉鎖を宣言したことが20日明らかになりました。トランプ大統領は歓迎する意向を示しましたが、政権内には慎重な見方が少なくありません。27日の南北首脳会談に注目が集まっています。
「ロシア疑惑」
週末のケーブルTVのニュースチャンネルは、パパ・ブッシュ元大統領夫人のバーバラさんの告別式を除くと、ロシア疑惑に多くの時間を割きました。多くの主要紙のトップニュースもロシア疑惑関連でした。
アメリカの民主党全国委員会は20日、ロシア政府とトランプ大統領陣営、そして「ウィキリークス」を、2016年の大統領選に介入したとして提訴しました。
トランプ大統領に解任されたコミー元FBI長官の12ページにわたる新たなメモも週末に公表されました。ロシア疑惑をめぐる問題がどう発展するのか。ウォール街が注目しています。
[April 23, 2018 NY 097]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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