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崩れたダウ、1987年繰り返すか
2018/02/05 09:18
「トランプ時代最悪の週」
ニューヨーク株式相場が崩れました。ダウは先週金曜日2日に665ポイント下げました。週間ベースでは1095ポイント(4.12%)下落しました。S&P500は3.85%、ナスダックは3.53%下げました。
週間の下げ幅は過去2年で最悪。トランプ大統領が就任後で最悪の1週間でした。
大幅な下落の原因は複数あると指摘されています。アップルなど注目企業の一部の決算が弱かったこと。アマゾン、JPモルガンチェース、バークシャーハサウェイが医療保険費を下げるため共同で会社を設立すると発表したことで、医療保険各社が軒並み売られました。2日に発表されたアメリカの雇用統計は予想を上回りましたが、FRBが利上げペースを早めるとの観測が広がり、米国債利回りが急上昇したことも株安の背景とされています。
もっとも株価を押し下げたのは投資家心理かもしれません。歴史的な上昇基調が続き、多くの投資家が警戒感を強めていました。「高くなりすぎた」「大幅な調整があってもおかしくない」との見方が広がりました。恐怖指数であるVIXが先週急上昇、投資家心理の変化を反映しています。
「利回りとVIX」
今週のアメリカの経済指標は薄めです。ニューヨーク株式マーケットは、引き続き米国債の利回りと恐怖指数のVIXを強く意識した展開が予想されます。
FRBのイエレン議長が3日退任、パウエル理事が新議長に就任しました。パウエル氏は5日に宣誓する予定です。今週はまた、ニューヨーク連銀のダドリー総裁ら6人のFRB幹部が講演など予定しています。米国債利回りが急ピッチで上昇していること、金融マーケットが不安定になっていることをどうみているのか。注目を集めそうです。
決算も続きます。火曜日にディズニーやGMなどが四半期決算を発表。水曜日はハズブロやテスラ、木曜日はAIGやエヌビディアなどが決算を予定しています。金曜日には、アップルがスマートスピーカーのホームポッドを発売します。
ワシントンでは、先週末に公開されたFBIと司法省のロシア疑惑をめぐる捜査に関する議会のメモが話題になっています。メモをめぐり議会とホワイトハウスが騒がしくなる可能性があります。8日に暫定予算が期限を迎えます。与党の共和党は新たなつなぎ予算を成立させる方向で調整していますが、ロシア疑惑をめぐる混乱が影響する可能性も予想されます。
「1987年との違い」
1987年10月19日、ニューヨーク株式相場が急落しました。ダウは508ポイント下げました。いわゆる「ブラックマンデー」です。
先週金曜日2日のダウは665ポイント安。「ブラックマンデー」の記憶が蘇ったベテラン投資家も少なくありませんでした。ただ、1987年当時と現在のダウの水準は大きく異なっています。ブラックマンデーのダウの下落率は22%でしたが、先週2日は2.5%安。S&P500に採用されている企業の株価収益率が31年前は20倍を超えていましたが、現在は約18%です。長期金利の水準も大きく違います。
ウォールストリートジャーナルは、株価が安定するまで下げが加速すると投資家が懸念していると報じました。原油、金、ビットコインの下落が、リスク資産がさらに下がることを示唆しているとの見方があるとしています。ただ、企業の業績は堅調だとしています。
バロンズは、先週の下落にもかかわらず、S&P500は5%の調整がない取引日が404日にわたり続いていると伝えました。チャートの50日移動平均近くになったが、200日移動平均を上回っているとしています。その上で、「下落は株式マーケットの健全さを示している」とのストラテジストのコメントを紹介しました。
[February 05, 2018 NY 086]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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