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ロシア疑惑とFRB人事
2017/10/30 08:29
「テクノロジー株高い」
テクノロジー株が目立って上昇しました。ニューヨーク株式市場の先週27日の取引で、アマゾンは13%高、グーグルの親会社アルファベットが4.3%高、そしてマイクロソフトは6.4%上昇しました。予想を上回る決算、強気の業績見通しが背景です。
テクノロジー株の比率が高いナスダックの27日の上昇率は2.2%に達しました。ダウの上昇率は0.14%。バロンズによると、ダウとナスダックの1日当たりの上昇率格差は2002年以来の大きさでした。ナスダックとS&P500は、いずれも最高値を更新して先週の取引を終えました。
「アップルとFB」
今週もテクノロジー株の上昇が続くのか。鍵を握るのはアップルとフェイスブック。後者は水曜日に四半期決算を発表します。木曜日はアップルの発表です。アップルについては、先に発売したiPhone8の販売の不調が伝えられていますが、今週末に発売するiPhone Xの予約販売はアナリストの予想を上回る強さをみせています。四半期の業績より、次の四半期の見通しに注目が集まりそうです。
今週はさらに、スターバックス、アンダー・アーマー、ファイザー、マスターカード、メットライフ、バークシャー・ハサウェイなどの有力企業も四半期決算の発表を予定しています。
アメリカの経済指標では、30日のPCEコアデフレーターと3日の雇用統計が材料になりそうです。
FRBは今週、金融政策を決める会合(FOMC)を開きます。1日の取引時間中に声明が発表されます。政策金利が据え置かれるとの予想がコンセンサスです。相場への影響は限定的になる可能性があります。それよりも、FRBの次期議長人事が相場を動かしそうです。
トランプ大統領が今週末にアジア歴訪に出発します。その前に、FRBの次期議長を指名する可能性があるとホワイトハウスが明らかにしています。
ウォールストリートジャーナルをはじめ複数のメディアは週末、ジェローム・パウエル理事が次期議長に指名される見通しだと報じました。イエレン議長については、オバマ前政権の色がついているため、あえて交代させる可能性があるとしています。
少し前は、パウエル理事と並んで、スタンフォード大学のジョン・テーラー教授が有力だと伝えられました。「トランプ大統領が毎日考えを変える」との報道もあり、発表までは予断を許しません。
パウエル理事が指名されれば株価にポジティブ、タカ派のテイラー教授であればネガティブに反応すると指摘されています。今週の最大の材料と言えそうです。
「ロシア疑惑」
CNNが27日夜、去年のアメリカ大統領選にロシアが関与したとされる「ロシア疑惑」について、ワシントンの連邦大陪審が容疑者の訴追を承認したと報じました。続く形で、ウォールストリートジャーナルが、モラー特別検察官は30日にも1人の身柄を拘束する可能性があると伝えました。
「ロシア疑惑」の最初の逮捕者が誰になるかは不明です。今年7月、トランプ大統領の選挙本部長を務めたマナフォート氏が自宅の捜査を受けました。プリーバス前大統領首席補佐官とスパイサー前報道官は、それぞれ今月、事情聴取されています。
トランプ政権の関係者が訴追されれば、政権にとって大きな打撃になることは必至です。
「ロシア疑惑」をめぐっては、民主党のヒラリー・クリントン候補の陣営も関与したと伝えられました。ワシントンポストは、「ロシア疑惑」の捜査がクリントン氏に向かわないことについて、トランプ大統領が不満を高めていると報じました。
「ロシア疑惑」の行方は、今週のニューヨーク株式相場に影響する可能性があります。特に30日の相場に影響しそうです。FRB人事と並び、注目が集まっています。
[October 30, 2017 NY 072]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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