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9月は最高値、10月はどうか
2017/10/02 08:30
「ダウは高値とどかず」
不安定な相場展開が警戒された9月のニューヨーク株式相場。終わってみれば、相場は安定、高く推移しました。その象徴がラッセル2000。小型株の代表指数が過去最高値で9月の取引を終えました。
ファンドマネージャーらがベンチマークにしているS&P500、そしてテクノロジー株の寄与度が高いナスダックも最高値を更新しました。ただ、アメリカを代表する30企業で構成される大型株の指標であるダウは最高値には届きませんでした。
ダウは先週、13ポイント、もしくは0.25%上昇しました。S&P500は0.68%高、ナスダックは1.07%上昇しました。
ダウの月間上昇率は2.08%。四半期ベースでは、20年ぶりに8四半期連続の上昇です。
トランプ政権の税制改革への期待が株価を下支えしました。トランプ政権と共和党が27日に公表した税制改革のフレームワークでは、焦点の法人税率を現行の35%から大幅に引き下げ20%にするとしました。中間層は年間1000米ドルの節税になるとホワイトハウスが主張していますが、全体的には、企業、特にウォール街、富裕層に有利な税制と分析されています。ニューヨーク株式マーケットにとっては、ポジティブな内容です。
問題は、議会が法案を作成する中で、フレームワークの骨子がどこまで残るかどうか、年内に成立するかどうかです。10月はその行方をにらんだ展開になりそうです。
「雇用統計」
税制改革がヤマ場を迎えるのはおそらく12月。まだ時間があるので、当面、特に今週は経済指標に関心が集まりそうです。
2日の新車販売台数、4日のISM非製造業景況指数とADP全米雇用報告、5日の貿易統計、そして6日の雇用統計など、今週は重要なデータの発表が目白押しです。
FRB幹部の発言も注目されています。4日のイエレン議長、6日のニューヨーク連銀のダドリー総裁の講演のほか、複数のFRB理事や地区連銀総裁が発言する機会があります。
政治では、トランプ大統領の信任問題が再び材料になりそうです。ハリケーン「マリア」で甚大な被害が出た自治領プエルトリコへの対応の遅れが批判されています。プライス厚生長官は29日に、多額の公金を出張に使ったスキャンダルで、政権初の閣僚辞任に追い込まれました。北朝鮮への対応をめぐるトランプ大統領とティラーソン国務長官の見解の違いも表面化しています。
海外要因も株価に影響する可能性があります。スペインのカタルーニャ州の独立の是非を問う住民投票をめぐり、スペイン中央政府と独立派が1日に激しく衝突、多数のけが人が出ています。北朝鮮問題と合わせ、南ヨーロッパの政情がネガティブに影響する可能性があります。
「10月相場」
ストック・トレーダーズ・アルマナックによると、10月は株高の月と言われているようです。歴史的には平均で0.7%上昇しています。
同時に、10月は株価が最も不安定な月でもあります。1987年のブラックマンデー、2008年の暴落など、株価が10月に急落したことが何度かありました。
季節的に、ヘッジファンドと個人投資家の売りが増えやすいのも10月です。株価が最高値で推移、バリュエーションが高くなっていることで警戒感が強まっています。
税制改革への期待、そして来週から始まる四半期決算に対する強気な見通しを背景に、株価が大きく崩れる兆しはありません。ただ、過去の暴落は、ちょっとしたきっかけで崩れたと分析されています。見えていない何かがあるのでしょうか。現時点では不明です。
[October 02, 2017 NY 068]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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