松島新の週刊2分でわかるNYダウNYダウ平均株価の情報をタイムリーに、より分かりやすくお伝えするレポート
不安定な展開も、CPIに注目
2022/05/09 07:25
アメリカの株式市場はボラティリティの高い展開が続いています。上下に大きく振れ、下値を切り下げています。
先週の最大の材料は連邦準備理事会(FRB)が金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)でした。予想通り0.50%利上げと量的引き締め(QT)開始を決めました。会合後のパウエル議長の記者会見はインフレ抑制を優先するタカ派な内容でしたが、0.75%利上げの可能性を事実上否定する発言が注目を集めました。市場関係者の恐怖が薄れ、株式相場は約3%反発しました。FOMCの消化が進んだ5日の取引では高インフレとFRB積極利上げへの不安が再燃、株式相場は急反落しました。ダウは1000ドル超上下する荒い展開。
6日発表のアメリカ雇用統計で賃金インフレが示されたことで、心理が改善しないまま週を終えました。金利に敏感なテクノロジー企業の比率が大きいナスダック総合株価指数は週間ベースで1.5%下落しました。
「CPIとFRB」
今週のアメリカ株式相場も不安定な展開になるとの予想が優勢です。焦点になるのは11日発表の4月消費者物価指数(CPI)。前年同月比8.5%上昇だった3月統計から伸びが鈍化すると予想されています。クリーブランド地区連銀のインフレーション・ナウキャスティングは、4月CPIが前年比8.14%上昇を示唆。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前年比6.12%上昇になる可能性を示しています。
CPIを受け米国債利回りがどう動くか注目。CNBCは、金利が株式市場にとって引き続き重要な材料であると伝えました。長期金利の指標である米10年物国債の利回りが株式相場の方向を決めることになりそうだとしています。
FRB高官の発言も米国債利回りと株式相場に影響しそう。アトランタ地区連銀のボスティック総裁、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁、リッチモンド地区連銀のバーキン総裁、ウォラー理事、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁、クリーブランド地区連銀のメスター総裁、サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁が今週発言する機会があります。
ディズニー、ヒルトンやハイアットなどホスピタリティ、エネルギー会社が四半期決算を今週予定。業績見通しが心理に影響する可能性があります。
「投資行動の変化」
株式相場の下げ加速、投資行動が変わった。ウォール・ストリート・ジャーナルは週末、過去2年間の投資戦略が通用しなくなり、下がった局面で買う「ディップ買い」が入らなくなったと報じました。
パンデミック(疾病の世界的流行)中に人気を集めた巣ごもり銘柄であるネットフリックスは年初から70%下落。アマゾンは31%安。もはや「ディップ買い」で短期利益は期待できなくなったとしています。オプション取引も保守的なアプローチに変化、ゲームストップやAMCといったミーム銘柄が低迷していると伝えました。リスクに敏感なビットコインをはじめとする仮想通貨も大幅に下落。幅広い金融市場で悲観的な見方が強まったと加えました。
[May 08 2022 NY 305]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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