松島新の週刊2分でわかるNYダウNYダウ平均株価の情報をタイムリーに、より分かりやすくお伝えするレポート
急落した米株相場、さらなる混乱示唆する円安
2022/04/25 07:36
連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めによるリセッション(景気後退)リスクが強く意識されました。投資情報誌バロンズは、投資家がようやく最悪シリオを意識しはじめたと伝えました。
ダウ工業株30種平均は先週、週間ベースで1.9%下落。S&P500種株価指数は2.8%安。ナスダック総合株価指数は3.8%安と急落しました。GAFAM(グーグルの親会社アルファベット、アップル、フェイスブックの親会社メタ、アマゾン、マイクロソフト)と呼ばれる主力ハイテク株が軒並み売られ、ネットフリックスは先週半ばに35%急落しました。22日の取引でダウは一時1019ドル下落。981ドル安とほぼ安値で取引を終えました。
下落基調は21日から始まりました。FRBのパウエル議長が5月3~4日の連邦公開市場委員会(FOMC)の0.50%利下げを示唆。成長が鈍化する可能性があると述べました。タカ派で知られるセントルイス地区連銀のブラード総裁は0.75%利上げの可能性にはじめて言及。CMEグループのフェドウォッチが示唆する5月の0.5%利上げ確率はほぼ100%に上がり、6月の0.75%利上げ確率は急上昇しました。
「決算とインフレ指標」
不安定な相場が今週も続くのか。決算が方向を決めることになりそうです。
マイクロソフトとアルファベットは26日、メタは27日、アップルとアマゾンが28日に四半期決算の発表を予定しています。GMとフォード、半導体のクアルコム、ボーイング、ペイパル、イーライリリーとメルク、マクドナルド、キャタピラー、エクソンとシェブロンなども今週決算を発表します。
FRBの最高意思決定機関FOMCの会合を翌週に控え、FRB高官の公での発言が禁じられるブラックアウト期間に入りました。金融政策に影響する3月個人消費支出(PCE)価格指数は24日に発表されます。特にFRBがインフレの目安として重視するPCEコア価格指数が注目。2月の5.4%から5.3%上昇に伸びが鈍化すると予想されています。26日発表の住宅価格指数も相場に影響する可能性があります。
「円安の影響」
円相場の急激な下落は日本固有の問題。日経新聞をはじめ日本のメディアが大きくとりあげる一方、欧米メディアはほとんど報じませんでした。「日本だけの問題ではなくなった」と週末のウォール・ストリート・ジャーナルがトップ級で伝えました。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、円は世界で3番目に取引量の多い通貨であり、円急落は日本だけでなく23兆ドル規模の米国債市場に影響する可能性があると報じました。日米利回り格差拡大を背景に日本の投資家にとって米国債は理論的に魅力だが、日本の機関投資家の為替変動をヘッジするコストが上昇、事実上の利回り格差はほとんどないと解説。日本の投資家は高いヘッジコストを嫌い、米国債を買うのではなく売りに回る可能性があり、結果として米国債利回りは上昇し株式相場をさらに圧迫するリスクがあると伝えました。
ウォール・ストリート・ジャーナルの影響は大きく、ウォール街で米国債利回りと並び円相場への注目が集まる可能性がありそう。
[APRIL 24 202 2 NY 303]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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