松島新の週刊2分でわかるNYダウNYダウ平均株価の情報をタイムリーに、より分かりやすくお伝えするレポート
タカ派FRBに株価反応、次の試練は決算
2022/01/10 07:33
「ナスダックに売り」
2022年第1週のアメリカ株式市場は初日の取引こそ堅調でしたが、週半ばから相場が崩れました。
連邦準備理事会(FRB)が5日に公表した連邦公開市場委員会(FOMC)の12月会合の議事要旨が影響しました。政策メンバーが高インフレを強く警戒、3月にも利上げに動く可能性を示唆しました。約8.7兆ドルに倍増したバランスシートの縮小に関しても深く議論していたことがわかり、利上げ後の早期QT(量的引き締め)があるとの観測が広がりました。
タカ派なFRB議事要旨に米国債が反応しました。長期金利の指標である米10年物国債の利回りは一時1.80%近辺に上昇、短期金利のベンチマークの米2年物国債利回りは一時0.9%台に急上昇しました。利回り上昇を受け、金利に敏感なグロース株、特にテクノロジー株が幅広く売られました。ハイテク銘柄の比重が大きいナスダック総合株価指数は前週末比4.5%安で取引を終えました。
ダウ工業株30種平均は0.3%安。構成銘柄のセールスフォースの大幅な下げが影響しました。S&P500種株価指数は週間ベースで1.9%下落。電気自動車(EV)のテスラやバイオ製薬会社モデルナが大幅に下落したのが目立ちました。エネルギー株と銀行株は上昇しました。
投資情報誌バロンズは、「割高もしくは変動が大きい銘柄を保有していることはリスク」とするウェルズファーゴのストラテジストのコメントを引用。「株価を見直す動きが進んでいる」としています。
「米CPI、米国債入札、銀行決算」
今週のアメリカ株式市場は材料が豊富です。
経済指標の注目は12日発表のアメリカの12月消費者物価指数(CPI)。前年同月比7.0%と、11月の6.8%から加速すると予想されています。強い数字がでれば、FRBの早期引き締め観測が一段強まりそう。連邦議会上院で11日、FRBのパウエル議長の続投承認をめぐる公聴会が開かれます。カンザスシティ地区連銀のジョージ総裁、セントルイス地区連銀のブラード総裁、ニューヨーク連銀のウィルアムズ総裁らの講演が予定されています。
今週は米国債の入札が3回予定されています。特に12日の米10年物国債の入札結果が相場に影響する可能性があります。
2021年第4四半期(10~12月)の決算が本格化します。12日にJPモルガンチェース、ブラックロック、シティグループ、ウェルズファーゴが決算発表を予定しています。市場全体を動かす可能性があります。
「決算が試練に」
ウォール・ストリート・ジャーナルは9日、FRBの早期利上げ見通しに動揺したアメリカ株式市場が新たな試練に直面すると報じました。金利上昇期待を背景に割高な銘柄が敬遠される中で、企業決算が相場上昇基調継続の重要な鍵になるとしています。今週は、金融大手のほか、デルタ航空、JBハント、P&G、ベイカー・ヒューズなどが決算発表を予定していると伝えました。
[JANURARY 09 2022 NY288]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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