松島新の週刊2分でわかるNYダウNYダウ平均株価の情報をタイムリーに、より分かりやすくお伝えするレポート
2022年米株相場に慎重な見方
2022/01/03 07:35
「ダウ年間19%高」
アメリカの株式相場は3年連続で大幅な上昇を記録しました。幅広い投資家がベンチマークにしているS&P500種株価指数は前年比27%高で2021年の取引を終えました。ナスダック総合株価指数(21%高)を2016年以来はじめて上回ったことが話題を集めました。ダウ工業株30種平均は19%高で終えました。
投資情報誌バロンズによりますと、S&P500を構成する全11セクター(業種)が少なくも14%上昇しました。1995年以降で初めて。構成銘柄の90%が前年比で上昇。ダウのリターンは配当を加えると21.5%に上がるとしています。
個別には大型ハイテク株の上昇が目立ちました。アップルは前年比35%上昇。グーグルの親会社のアルファベットは67%高。マイクロソフトは54%上昇。フェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズは年間ベースで26%上昇しました。GAFAMの中でアマゾンは4%高と伸び悩みました。アマゾンは2020年に76%上昇しています。
5社の時価総額の合計は10兆ドル(約1150兆円)を超えました。東証一部の合計は約700兆円、GAFAMの時価総額がいかに大きいかがわかります。2021年に52%上昇したテスラを加えた6社の時価総額の合計は11兆ドル(約1265兆円)に達します。
「FOMC議事録と米雇用統計」
今週のアメリカ株式市場は材料が豊富です。5日に連邦準備理事会(FRB)の12月会合議事要旨が公表されます。タカ派色を強めた会合で、利上げとQT(量的引き締め)の議論がどこまで進んだかが焦点。週後半にセントルイス地区連銀のブラード総裁、サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁、アトランタ地区連銀のボスティック総裁、リッチモンド地区連銀のバーキン総裁の講演が予定されています。
7日発表のアメリカ雇用統計も相場に影響しそう。エコノミストは非農業部門の雇用者数が40万5000人増と11月の21万人から伸びが加速すると予想しています。失業率は4.2%から4.1%に改善するとの予想がコンセンサスです。
CNBCは、前年の勢いが続く可能性があるものの、投資家は企業業績と見通しに一層慎重になる可能性があると伝えました。
「インフレ」
ワシントン・ポスト紙によりますと、1日1日に欠航となったアメリカの航空会社のフライトは2200便を超えました。ハブ空港があるニューヨークとシカゴの悪天候が影響しました。アメリカの空の交通の混乱はクリスマスイブごろに始まりました。悪天候のほか、スタッフやクルーが新型コロナウイルスのオミクロン型変異種に感染したことで事態が深刻化しました。
1日に発表されたアメリカ国内の新規感染者は38万6920人と14日前と比べ202%増加しました。死者は1240人で4%減。デルタ型と比べ重症化リスクが低いことが数字にあらわれているものの、感染者は過去最多。オミクロン株の猛威が市場に影響するリスクがありそう。
ウォール・ストリート・ジャーナルは2日、オミクロン株の猛威で経済回復が遅れるとの懸念があるほか、サプライチェーン(供給網)の混乱と労働者不足を悪化させインフレがさらに加速するとの警戒もあると伝えました。FRBが利上げする見通しの中、2022年のアメリカ相場は不安定な展開になると予想されているとしています。
[JANURARY 02 2022 NY287]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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