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リフレ相場、成長株と景気敏感株に明暗
2021/03/08 15:30
「強い雇用統計受け大幅高」
リフレ相場で成長株の痛みが増している。バロンズの最新号は先週のアメリカの株式市場をこう解説しました。
リフレとは、デフレを脱却したものの、インフレ加速には至っていない状況を指します。不景気後の初期の景気回復の状態ともいえます。この段階で株式市場では、景気に敏感な石油株や産業株などが積極的に買われ、成長が見込まれるテクノロジー株などが売られる傾向があります。先週のニューヨーク株式市場では、シェブロンやアメリカン・エキスプレスが大幅に上昇した半面、電気自動車(EV)のテスラやペイパルなどが大幅に下落しました。
アメリカ労働省が5日に発表した2月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が37万9000人増と、ダウ・ジョーンズがまとめた予想中央値(21万人増)を大幅に上回りました。バロンズによりますと、強い雇用統計を受け10年物の米物価連動債(TIPS)の利回りは2.24%に上昇、米10年物国債の利回りが1.551%で取引を終えました。
アメリカの株式相場は先週、大きく振れました。S&P500株価指数は月曜から木曜までの4日間で3.4%下落、金曜日に2%近く戻しました。リフレ相場をまだ織り込んでおらず、テクノロジーなどの成長株に今後影響する可能性があるとバロンズが伝えました。
「経済対策期待と長期金利」
世界保健機構(WHO)がパンデミック(疾病の大流行)を宣言して丸1年を迎える8日の週のアメリカ株式市場では、コロナ危機に対応した経済対策が材料になると予想されます。
アメリカ連邦議会上院は6日、1.9兆ドル(約205兆円)規模の経済対策法案を賛成多数で可決しました。下院を通過した案が修正されたため、下院は修正バーションを早ければ9日にも採決する見通し。民主党が過半数を持つため可決する公算。バイデン大統領は早くも勝利宣言、「巨大な一歩だ」と評価しました。
予想された展開。CNBCは、経済対策期待が株式相場を押し上げる可能性があると同時に、期待で長期金利が上昇しインフレ懸念が広がればネガティブに影響することも予想されると伝えました。
投資家がインフレに神経質になるなか、10日発表の消費物価指数(CPI)と12日の生産者物価指数(PPI)が相場を動かす材料になると予想されています。9日に米3年物国債、10日は米10年物国債、そして11日に米30年物国債の入札が予定されています。入札結果で利回りが振れる可能性があります。
「あれから1年」
WHOのパンデミック宣言を受けトランプ前大統領が緊急事態を導入。アメリカの主要指数であるS&P500株価指数はベア相場入り。過去最長だったブル(強気)相場が終わりました。
株式相場が去年底打ちしたのは3月23日でした。ダウ工業株30種平均は翌24日の取引で11%超上昇、1933年以降で最も大きい上昇率を記録しました。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は週末、アメリカは依然として1年前と同じパンデミック下にあり、株式先物は不透明感を反映していると報じました。
投資家は今週、インフレの統計に注目、インフレ率の上昇をめぐる最近の議論を見極めようとするだろうとしています。過去に参考例がなく、新型コロナウイルスのワクチンが初めて承認された後に大幅上昇しなかったことから、投資家はパンデミックの明確な転換点を待っているとWSJが続けました。
[March 07, 2021 NY245]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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