松島新の週刊2分でわかるNYダウNYダウ平均株価の情報をタイムリーに、より分かりやすくお伝えするレポート
ダウ8週続落は1932年以来、底はまだ
2022/05/23 07:33
アメリカ株式市場のボラリティが高まりました。CNBCの人気コメンテーター、ジム・クレマー氏は、ロシアのウクライナ侵攻、中国の新型コロナウイルス感染拡大を受けたロックダウン(都市封鎖)、インフレ抑制のための連邦準備理事会(FRB)の積極的な利上げの3つの材料に対する警戒感がある限り、株式市場が本格回復することはないと予想しました。
20日の取引は投資家の心理の揺れを反映し上下に大きく振れるジェットコースターのような展開でした。週間ベースではダウ工業株30種平均は2.9%下落。1932年以降で初めて8週連続で下落しました。
S&P500種株価指数は前週末比3%安。20日の取引時間中に直近高値から20%超下げベア(弱気)領域に入りました。取引終了前の30分間で買い戻され、高値から18.7%低い水準で先週の取引を終えました。ナスダックは週間ベースで3.8%安。直近高値からの下落率は30%に達しました。ナスダックはドットコムバブル崩壊があった2001年以来となる7週連続で下落しました。
ダウ構成銘柄でもあるシスコシステムズは弱い業績見通しが嫌気され急落。デル、ショッピファイ、ワークデイ、オクタ、ツイッター、テスラなどの下げの大きさも目立ちました。アップルは8週連続で下落。アマゾンやアルファベットは週間ベースで約5%下げました。先週はウォルマートとターゲットをはじめ小売り大手への積極的な売りも目立ちました。コスト増が企業収益を圧迫するとの警戒感が強まった1週間でした。
「小売り決算とFRB高官」
今週のアメリカ株式市場は当面の底を探る展開になると予想されています。鍵を握るのは小売り大手の決算になりそう。
日本でも知られたコストコ、デパート大手のメイシーズとノードストローム、家電小売り大手ベストバイが四半期決算の発表を予定しています。今週はまた、巣ごもり銘柄のズーム、住宅大手のトールブラザーズ、半導体のエヌビディアなども決算を発表します。
パウエル議長をはじめ連邦準備理事会(FRB)高官が発言する機会が多くあります。25日には0.5%利上げを決めた5月3~4日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表され、材料になりそう。
経済指標では27日の個人所得・支出、そして個人消費支出(PCE)価格指数が注目。FRBはPCEコア価格指数をインフレの目安として重視しています。27日にはミシガン大学の消費者信頼感指数も発表されます。
「ベア相場」
S&P500が一時ベア領域に入ったことで、週末はベア相場をめぐる多くの報道がありました。
CNBCは、投資家の心理状態を示すシンボルであり、持続的が株価の大幅下落を示すのがベアだと解説しました。投資会社サンダーズ・モリスのバル氏によると、平均的なベア相場は338日続くとしています。ウォール・ストリート・ジャーナルによりますと、リーマンショックがあった2007~2009年のベア相場は取引がない日を含め517日、ドッココムバブルの2000~2002年は929日続きました。
投資情報誌バロンズは、S&P500は終値でベア入りを回避したものの、売りはまだ続く可能性があると報じました。マーケットはまだ底を確認していないとしています。
[May 22 2022 NY 307]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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