(AM)ワクチン開発への期待で、市場はリスクオン方向へ

2020/07/16 08:22

デイリーフラッシュ

【ポイント】
・市場は「コロナ」感染拡大を横目でみながら、ワクチン治験の結果を好感
・トランプ大統領の対中姿勢軟化、原油価格の上昇もプラス要因か
・投資家心理の改善が続くか。本日の材料は豪雇用統計、中国GDP、ECB理事会など

(欧米市場レビュー)

15日の欧米為替市場では、米ドルユーロ英ポンドが、ほぼこの順番で軟調。VIX指数(恐怖指数)も低下しており、投資家心理がリスクオン方向に進んだことがうかがえます。米ドル実効レートは約1カ月ぶりの安値をつけました。一方で、南アランドが強く、カナダドルNZドルも堅調でした。また、豪ドルメキシコペソは対円で上昇しましたが、トルコリラは対円で小幅下落しました。

15日の日銀の決定会合は金融政策の現状維持を決定しました。予想通りの結果で為替市場はほとんど反応しませんでした。その後、黒田総裁の会見後に欧州市場で米ドル/円はやや軟化しましたが、日銀の決定を受けてというより、FRB関係者の米景気に対する弱気の見解が伝えられたことが影響したようです。

一方、BOC(カナダ中銀)も金融政策の現状維持を決定しましたが、直後にカナダドルは上昇。金融政策報告のなかで、少なくとも2023年まで利上げしないと示唆されたことが、景気回復期待を通じてカナダドルをサポートしたのかもしれません。

米株は堅調。NYダウは約1カ月ぶりの高値。S&P500は6月8日につけたコロナショック後の高値にほぼ並びました。NASDAQ総合指数は7月10日につけた最高値近辺で推移(いずれも終値ベース)。

「コロナ」の感染拡大が続くなかで、ワクチンの治験で有望な結果が出たモデルナの株価は上場来高値に急伸。ワクチン開発への期待が投資家心理の改善につながりました。

また、香港情勢を巡って、トランプ大統領が中国高官への制裁を当面見送るとの報道も、米中摩擦の懸念をやわらげ、株価のプラス材料となったようです。

ベージュブック(米地区連銀経済報告)は、7月初めに景気回復初期の兆候がみられたと報告。ただ、「コロナ」の感染状況次第で「見通しは極めて不透明だ」とも説明されました。

OPEC(石油輸出国機構)と非OPEC産油国で構成する「OPECプラス」は当初の予定通り協調減産量を現在の日量960万バレルから同770万バレルへと縮小(=供給を増加)させる決定をしました。サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は「供給増加は世界の需要が回復する中で消費される」と指摘しました。

「OPECプラス」の決定後も原油価格は堅調。WTI原油先物価格は41.04ドル/バレルと、3月上旬以来の高値をつけました。

(本日の相場見通し)

15日の欧米市場でみられた投資家心理の改善が本日も続くかどうか。

本日(日本時間10:30)、豪州の6月雇用統計発表。5月以降に経済活動が再開されたことで雇用者数は4カ月ぶりに増加に転じそうです。一方で、労働市場への復帰する人が増えることで失業者も増えるため、失業率は上昇するかもしれません。もっとも、「コロナ」感染の再拡大によって、7月に入ってメルボルン都市圏で6週間のロックダウン(都市封鎖)が実施されることもあり、6月に雇用が増えたとしても7月に再び減少に転じる可能性があります。

日本時間11:00に中国の4-6月期GDP発表。1-3月期のGDPは前年比-6.8%と大きく落ち込みましたが、他国に比べて早期にロックダウンとその解除を行ったため、4-6月期のGDPは前期から反発するでしょう。ただし、前年比ではマイナスか、せいぜい横ばいとみられます。

日本時間20:45にECB理事会の結果発表。ユーロ圏の景気は最悪期を脱したとみられ、ECBは一連の金融緩和・金融支援策の効果を見極めるために、今回は現状維持となりそうです。政府債務危機の尺度であるドイツとイタリアの長期金利差は縮小傾向(≒債務懸念の後退)。
21:30からのラガルド総裁の記者会見では、17-18日に開催されるEUサミット(首脳会議)において欧州復興基金構想で前進・合意するよう要請がありそうです。

日本時間21:30に米国の6月小売売上高7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数先週の新規失業保険申請件数などの経済指標が発表されます。
15日のベージュブックでは景気回復初期の兆候が報告されました。多くの州や自治体が「経済再開」の停止や巻き戻しに踏み切るなか、とりわけ直近のデータ(フィラ指数や失業保険申請件数)でその影響を点検することになりそうです。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。」


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