(AM) トルコのシリア侵攻へのトランプ大統領の対応は? 対中関税引き上げは延期されるか

2019/10/10 08:17

デイリーフラッシュ


【ポイント】
・トルコがクルド人勢力の掃討のためシリアに侵攻
・容認か、制裁か、トランプ大統領の態度は不鮮明
・米中貿易協議開始を前に報道が錯綜
・FOMC議事録によれば、緩和終了時期の議論を開始

(欧米市場レビュー)

 9日欧米時間の外為市場では、米ドルユーロが堅調、が軟調でした。10-11日に開催される米中貿易協議に対する期待もあり(後述)、米株が堅調、米長期金利(10年物国債利回り)も上昇しました。ただ、終盤にかけて米ドル、株価とも軟化しました。

 ブレグジットに関して、EUはアイルランド国境のバックストップに期限を設定する用意があるとの報道を受けて合意への期待が高まり、ポンドは一時上昇。しかし、直後にEUは大幅な譲歩はしないとの報道が出たため、ポンドはすぐに戻しました。

 トルコリラは続落。現地時間9日午後4時にトルコ軍がクルド人勢力の掃討のためにシリア国境に侵攻し、米国との関係悪化が懸念されました(後述)。

 豪ドルNZドルは比較的堅調でした。米中貿易協議に向けて一部明るさがみえてリスクオフが後退したことが背景。メキシコペソ南アランドは前日までの下げの反動も加わって対米ドル、対円で上昇しました。

(本日の相場見通し)

 当初、トランプ大統領はトルコの軍事行動を容認する姿勢をみせていました。しかし、共和党議員を含め国内からの批判を受けて態度を変え、9日には「トルコの攻撃を支持しない」「トルコがクルド人勢力を一掃するのなら、私がトルコ経済を一掃する」などと発言しました。トルコがある程度自制するのか、それとも大規模作戦を実施して米国が制裁措置を打ち出すのか、現時点で予断を許しません。


 本日10日からワシントンで米中閣僚級貿易協議が開始されます。9日には以下のような報道がありました。前日までと比べてやや明るいトーンもみられますが、報道は錯綜しているようです。

「中国が米国産大豆の追加購入を提案(FT)」
「米中貿易摩擦と協議の繰り返し、それが延々と続く(環球時報)」
「中国、米との部分的貿易協定排除せず(ブルームバーグ)」
「米副大統領、市場開放や強制技術移転への対応を要求(同上)」

 中国が望むような狭い範囲で合意する可能性はありますが、それによって15日に予定される米国の対中関税引き上げ(第1-3弾2500億ドル分×25%⇒30%)が延期されるのか、否か。それとも、米国が強制技術移転や知的財産権、政府補助金の改革など広範な要求を突き付けて結局物別れに終わるのか。その結果によって、市場に影響が出そうです。

 米FOMC議事録(9/17-18開催分)では、利下げ終了時期についての議論が開始されたことが明らかになりました。パウエル議長が言う「(利下げは)サイクル中盤の調整」とのメッセージを市場に伝えるべきとの声もあったようです。これは、FOMC参加者の政策金利見通し、いわゆる「ドット・プロット」が2回以上の追加利下げを想定していなかったことと整合的です。

 足もとで世界および米国の経済情勢は一段と厳しさを増したようにみえます。一方、パウエル議長は9日の講演で、米経済はいくらかのリスクを抱えているものの、良好な状態にあるとの認識を改めて示しました。

 FOMC議事録では「市場は利下げを織り込み過ぎている」とも指摘されました。FOMCと市場の見方の差が、前者に寄ることで修正されるのか(市場の利下げ観測の後退)。後者に寄ることで修正されるのか(FOMCが2回以上の追加利下げを実施)。それは今後の経済情勢に大きく依存するでしょう。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。」