(AM) 米中貿易協議やブレグジットを巡りリスクオフの展開

2019/10/09 07:59

デイリーフラッシュ


【ポイント】
・10-11日の米中貿易協議に暗雲広がる
・米FRBの追加緩和は米ドル高材料?
・ブレグジット協定案の合意は「事実上不可能」!?
・引き続きリスクオフに要注意

(欧米市場レビュー)

 8日欧米時間の外為市場では、(やスイスフラン)が高く、米ドルも堅調でした。NYダウが300ドル超下落、長期金利(10年物国債利回り)も低下するなど、典型的なリスクオフの相場でした。

 米国が人権問題に絡んで中国当局者へのビザ発給を停止、中国の企業8社をブラックリストに加えました。一方、ワシントンを訪問する中国代表団が滞在を1日短縮すると報道されました。10月15日の米国の対中関税引き上げを前に、米中貿易協議に暗雲が広がりました。

 パウエルFRB議長は講演で短期市場の資金需給ひっ迫を緩和するため、国債購入を再開すると発表しました。量的緩和の復活ではないとしましたが、市場は好感したようです。また、シカゴ連銀のエバンス総裁は「さらなる保険として0.25%の利下げをする根拠はある」と語り、それも米ドルをサポートしました。ここもと、利下げや緩和強化の観測は、景気が刺激されるとの観測を通じて、米ドルにプラスに作用しているようです。

 ポンドは主要通貨に対して下落。ジョンソン英首相はメルケル独首相に電話で、協定案の合意は事実上不可能と伝えたようです。一方、トゥスクEU大統領はジョンソン首相が「非難合戦」に終始していると批判しました。英政府は、「合意なき離脱」に向けて政府がしていること、企業や個人がすべきことを解説した文書を公表。「合意なき離脱」の可能性が意識されました。ユーロもポンドに連れて軟調でした。

 リスクオフの地合いのなかで、南アランドメキシコペソなど新興国通貨は軟調。前日に大幅安となったトルコリラは、トランプ大統領が「トルコは重用な貿易相手国」とツイートしてトルコ寄りの姿勢を示したことで、下げ止まりました。

NZドルは対米ドルで10月1日につけた4年ぶりの安値から反発していますが、短期のポジション調整との見方が優勢です。豪ドルカナダドルはマチマチでした。

(本日の相場見通し)

 本日(日本時間10日午前3時)、米FOMC議事録が公表されます。2回目の利下げを決定した9月17-18日開催分です。投票メンバーのうち2人が据え置きを主張、1人が0.50%の利下げを主張して反対しました。0.25%利下げの決定までどのような議論がされたのかが興味深いところです。

 FOMC参加者の政策金利見通し、いわゆる「ドット・プロット」では、さらに2回以上の利下げを想定した参加者はゼロで、(利下げに慎重な)タカ派的と受け止められました。議事録が(利下げに積極的な)ハト派的内容であれば、米ドルに下押し圧力が加わるかもしれません。上述したように追加緩和による景気刺激への期待が高まっているため、議事録を受けて株価が上昇するようであれば、米ドルの下げは限定的となりそうです。

 メキシコの9月CPI(消費者物価指数)が発表されます。8月の+3.16%から鈍化する可能性が高く、そうなれば8月、9月に続いて次回11月4日の会合でも利下げするとの観測が高まりそうです。それはメキシコペソにとってマイナス要因となりそうです。

 米下院で進められているトランプ大統領の弾劾調査の行方、トルコ・シリア情勢で迷走するトランプ大統領の対応、暗雲が広がる米中貿易協議に関する新たな報道、ブレグジット関連での「合意なき離脱」の観測の高まりなどが引き続き相場材料になるかもしれません。とりわけ、リスクオフの地合いの強まりには要注意でしょう。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。」