吉田 恒スペシャルレポート

2017/04/17 09:50今週の注目通貨(米ドル/円)= 朝鮮半島懸念でなぜ「有事の円買い」か?鍵は米長期金利の動き?!

◆要約◆
・朝鮮半島リスクでの円高は、「米長期金利低下=米ドル安・円高」の関係が基本。
・景気回復不変なら円高は一時的。52週MAを参考にすると、最長でも今月中に一巡か?!

 
◆なぜ「有事の円買い」なのか?
 
 米ドル/円は先週、昨年11月以来の108円台まで米ドル安・円高となりました。北朝鮮情勢など地政学リスクへの警戒などから、リスクオフの株安、円高が進んだとの解説が一般的でしょう。
 それにしても、朝鮮半島情勢への懸念が、なぜ隣国・日本にもかかわらず「有事の円買い」になっているのか。そもそもリスクオフ局面で、安全資産として円が選好されることに疑問が投げかけられることは少なくないので、今回はこのテーマから考えてみたいと思います。

 リスクオフ局面で、米ドル安・円高が進むのは、とくに最近の場合は、米ドル/円が日米長期金利差、とくに米長期金利との相関性が高い影響が大きいでしょう≪資料1参照≫
リスクオフ局面で、代表的な安全資産である米国債が選好され、米国債利回り、つまり米長期金利が低下するのは最近だけのことではありませんが、最近は上述のように、そんな米長期金利と米ドル/円の相関性が高くなったことから、朝鮮半島発リスクオフでも、「米長期金利低下=米ドル安・円高」といった「有事の円買い」になっているのでしょう。

ちなみに、米ドル/円と日米長期金利差の相関性が高くなったのは、昨年夏以降であり、それ以前は米ドル/円は日経平均など株価との相関性の高い時期が長く続きました。この場合も、リスクオフでは代表的なリスク資産の株が下落するわけですが、「株安=米ドル安・円高」といった相関関係から、やはり「有事の円買い」となっていたわけです。
以上のように見ると、「有事の円買い」がこれまで続いてきたわけですが、連動する対象はじつは変わってきたということはいえるかもしれません。

ところで、「有事の円買い」と述べてきましたが、正確には「円買い戻し」ということかもしれません。CFTC統計の投機筋の円ポジションは、今年初め8万枚を超える大幅な売り越し(米ドル買い越し)でしたが、先週は3万枚に売り越しが縮小しました≪資料2参照≫
要するに、大幅な米ドル買い・円売りに傾斜したポジションの修正が最近にかけて加速してきたわけです。大幅な円売りは、リスクオンを反映した結果でした。その意味では、リスクオンの修正局面で、円も買い戻しが続いたというのが正確な説明ではないでしょうか。
 
以上を踏まえた上で、リスクオフの円高がこの先も続くかについて考えてみたいと思います。円の総合力を示す実効相場は、先週から52週MA(移動平均線)前後まで上昇してきました≪資料3参照≫。経験的に、一時的な動きは52週MAを大きく長くブレークしない程度にとどまるし、逆に大きく長くブレークする動きは中期的な基調転換の可能性を示すものです。
「リスクオン=円安、リスクオフ=円高」を前提にすれば、リスクオンに変化がなければ円高はあくまで一時的であり、一時的な動きなら52週MAを最長でも1か月以上ブレークしない可能性が高く、要するに円高は今月中にクライマックスを迎えるとの見通しになります。
逆にいえば、5月にかけて円高が続くなら、リスクオフへ転換したということになるわけですが、その可能性はどうか?昨年以降の景気回復が崩れたとの見方は基本的にはなさそうです。
では、トランプ政権が軍事的に強硬化し、景気回復を遮断する懸念はあるのか。双日総研の吉崎達彦氏によると、「対北朝鮮の軍事行動は、実戦面でも国際法上でもハードルはかなり高い」(4月10日付け溜池通信)との見方が基本のようです。以上のように見ると、基本はやはり、行き過ぎたリスクオンの反動に伴う一時的な円高の可能性が高いのではないでしょうか。(了)

≪資料1 =米ドル/円と日米10年債利回り差 (2016年7月-)≫
 
(出所:Bloombergより作成)

≪資料2=CFTC統計の円ポジション (2016年-)≫
 
(出所:Bloombergより作成)

≪資料3=円実効相場と52週MA (2000年-)≫
 
(出所:Bloombergより作成)

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