2012/06/06
米追加対策に大いなる「誤解」の可能性はないか
1日発表された米5月雇用統計が予想より悪かったことから、米景気に対しても追加的な対策が注目されているようです。ただ、それがいわゆるQE3など長期国債を一段と購入するということになるかといえば、ちょっと違うのではないでしょうか。
◆「雇用ショック」でQE3の可能性は消えた?!
米雇用統計の結果を受けて、米10年債利回りは一時過去最低を大きく更新し1.5%割れとなりました。ところで、量的緩和、QEの一つの目的は、国債利回りの低位安定、誘導です。その観点からすると、すでに過去最低まで利回りが低下している中で、新たにQEにより長期国債購入に動く可能性が本当にあるでしょうか。
むしろ雇用統計が良くて金利が急騰となったら、金利の低位安定、誘導の目的で長期国債購入、QE3ということはあったのかもしれませんが、長期国債を購入する前に、雇用統計悪化で金利が先に低下したことで、QE3の可能性はかえって後退したという考え方にならないでしょうか。
それにしても雇用統計が悪く、米景気の先行きにも不安が再燃し、追加的景気対策が必要ならQE3が上記のような理由から難しいとした場合、何ができるでしょうか。一つはドル安誘導でしょう。長期国債利回りが過去最低まで低下した中でさらに長期国債を購入するなら、それはドル安誘導が目的と外国からは受け止められる可能性があるでしょう。
そもそも2010年11月、QE2を決定した時でも海外からは「米国が通貨戦争を仕掛けている」との批判が噴出しました。それを考えると、利回り過去最低更新中に、QE3に動くことは一層の「通貨戦争」批判となることが必至とみられるだけに、簡単ではないでしょう。
◆債券「買い」ではなく「売り」になる?!
QE3、ドル安政策以外の追加的景気対策の一つは欧州へのプレッシャーでしょう。そもそも最近の米株などは依然として比較的高い水準にあり、景気へのマイナス要因は欧州債務危機などの影響が圧倒的に大きいといえそうです。欧州危機の悪影響がなくなることこそ、米景気にとっても目先最も効果のある対策の可能性であるわけです。
そういったことからすると、5日、G7緊急電話会議となったのも「雇用統計ショック」の影響があった可能性が考えられなくありません。G7緊急会議は通常、金融市場がパニックに陥った際に行われるもので、今回の場合「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数が比較的安定している中ではちょっと唐突感のある緊急会議でしたが、米国のプレッシャーが多分に影響した可能性もあるかもしれません。
金融政策、通貨政策以外の景気対策はもちろん財政政策です。ただ、昨年8月には米国債が最高格付けを失うなど、財政赤字への監視も厳しい中では動きにくいことは間違いありません。
それにしてもこれまで見てきたように、他の政策に制約もある中では、徐々に財政政策発動への関心も再燃しつつありそうです。野党共和党では年末で期限が切れるブッシュ減税の延長や、来年からの一律強制歳出カット回避を求める動きがあるようです。
そのような歳出拡大策は債券需給には「売り」の示唆になるものです。ましてや、昨年8月に続くさらなる国債格下げをもたらす可能性のあるものでしょう。
追加対策がQE3ならそれは債券需給的には「買い」の示唆ですが、これまで見てきたことからすると正反対の「売り」を示唆する構図に変わっている可能性もあるのではないでしょうか。
仮にバーナンキFRB議長が、「追加的な景気対策は、長期国債を購入すること以外に手段がないものでは決してない」などと語ったら、過去最低利回りを更新し、「債券バブル」警戒論もある債券相場で「バブル破裂」のような動きにならないでしょうか。(了)
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