今月の特集

2017年08月【アップデート】主要中央銀行、それぞれの金融政策

 

**************************

はじめに

 主要中央銀行の金融政策の行方が、引き続き為替相場の重要な材料となりそうです。

7月の「主要中央銀行、それぞれの金融政策」を、8月15日時点の最新情報を基にアップデートしました(7月分と合わせてご覧ください)。

8月中は、10日のRBNZを最後にして主要な金融政策会合は予定されていません。ただし、24-26日に、米ワイオミング州ジャクソンホールでカンザスシティ連銀のシンポジウムが開催されます。FRB関係者だけでなく、各国の中央銀行関係者が集う一大イベントです。過去にも金融政策のヒントが出されたことから、今回も市場で大いに注目されています。今回はどんなメッセージが発せられるのか、興味深いところです。

 

◆米国:FRB(連邦準備制度理事会)

アップデート:

 6月のイエレン議長の議会証言や、その後の関係者の発言から、9月にB/S(バランスシート)の縮小を発表する可能性がある(開始は10月?)。その場合、B/S縮小の影響を見極めつつ、6月に次ぐ利上げのタイミングを模索することになる。利上げは早くても12月とみられ、来年にズレ込む可能性も相応にある。

 B/S縮小は、利上げと並んで金融政策正常化の一環。ただし、FRBはB/S縮小を積極的な金融政策手段とは考えておらず、いったん開始すればよほどのことがない限り、事前に決められたペースで行われる自動パイロット。

 市場の関心は、次の利上げのタイミングとその後のペースへと向いている。FFレート(政策金利)先物によれば、市場が織り込む、年内の利上げの確率は50%前後で推移してきた。また、2018年末までに利上げゼロないし1回の確率が55%程度まで上昇している。

 6月のFOMCの金融政策見通し(参加者の中央値)によれば、17年中にあと1回、18年にさらに3回の利上げが想定されていた。FOMCの見通しは17人の参加者のバラつきのある見通しの中央値に過ぎないが、市場の見方とのかい離がどのように調整されるのかが注目される。

 

◆ユーロ圏:ECB(欧州中銀)

アップデート:

 6月27日、ECBの年次シンポジウムでドラギ総裁は「デフレ圧力はリフレの力に置き換わった」と述べ、QE縮小が視野に入りつつあることを示唆した。ただ、ECBは7月20日の理事会で金融政策の現状維持を決定。現在「少なくとも2017年度まで続ける」としている月間600億ユーロの債券購入(QE)について、ドラギ総裁は会見で「まだ、そこ(テーパリングの協議を始めるような経済状況)には至っていない」と述べ、「協議は秋以降に行う」と付け加えた。

 一部の報道によれば、複数の匿名のECB関係者が、テーパリングの決定は次回9月7日の理事会ではなく、10月26日の理事会以降になるとの見通しを示している。

 OIS(翌日物金利スワップ)によれば、上述の年次フォーラム直後には2018年末までにECBが利上げ(*)する確率が90%前後まで上昇したが、足元では五分五分となっている。

 (*)ECBの場合、OISの対象は預金金利(現行-0.4%)であり、利上げは0.1%幅が想定されている。

 

◆英国:BOE(イングランド銀行)

アップデート:

 6月15日のMPC(金融政策委員会)では、金融政策の現状維持が決定された。ただし、票決は5対3で、3人の委員が利上げを主張して反対票を投じていた。CPIが2%の目標を上回って加速していたことが大きかった模様だ。その後、6月27日のECBの年次シンポジウムで、カーニー総裁は、「金融緩和をいくぶん解除することが必要になる公算は大きい」と発言。従来は、ブレグジットを懸念して金融緩和を継続する意向を示していたので、スタンスがやや変わったとの印象を与えた。

 しかし、その後に発表された6月のCPIの伸びが鈍化したこともあり、8月3日のMPCでは6対2で現状維持が決定され、利上げ観測がやや後退した格好となっている。

 OISによれば、市場が織り込む年内利上げの確率は7月上旬に40%前後まで上昇したが、足元では20%程度まで低下している。

 

◆日本:BOJ(日本銀行)

アップデート:

 7月20日、日銀は金融政策決定会合で、現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の維持を決定した。そして、「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で、2%の物価上昇率の達成時期を従来の「2018年度ごろ」から「2019年度ごろ」へ1年先送りした。

 黒田総裁は会合後の会見で、「現時点で追加緩和が必要だとは考えていない」と述べたものの、「何があっても追加緩和を考えないということではない」と含みを残した。

 ECBを含めて主要中央銀行が金融政策正常化を意識し始めるなか、日銀は非伝統的金融緩和からの「出口」が全く見えない状況が続いている。黒田総裁の任期満了が18年4月に到来するため、後任人事はどうなるか、任期満了前に黒田総裁が「出口」の地ならしを行うのかが引き続き注目される。

 OISによれば、市場が織り込む2018年末までの「据え置き」の確率は80%程度。そして、利上げと利下げの確率がほぼ同程度の10%前後。とりわけ、足元で利下げ確率が上昇していることが他の中央銀行とは一線を画している。

 

◆カナダ:BOC(カナダ銀行)

アップデート:

 BOCは7月12日の会合で、2010年9月以来、6年10か月ぶりの利上げを決定。政策金利を0.25%引き上げた(0.50%→0.75%へ)。

 BOCは声明で、金融政策について「現時点での見通しは、金融刺激策の一部解除を正当化する」としつつも、「政策金利の将来の調整は、今後発表される、インフレ見通しに関する指標次第」と強調。先行きの不透明感や金融システムの脆弱性も引き続き考慮するとし、追加利上げに言及しなかった。

ポロズ総裁は6月27日に「2015年の利下げはその役割を終えた」との見解を示しており、BOCは政策金利をまずは2015年の利下げ前の水準に戻すとみられる。2015年に2回(0.25%×2)の利下げを行ったため、少なくともあと1回は利上げを行うと考えることができそう。

 市場の関心は、追加利上げの有無よりも、次の利上げがいつになるのか?へ移っている。OISによれば、BOCが年内に追加利上げを行う確率が約70%。7月後半の80%程度から若干低下したものの、市場では年内の追加利上げが有力視されている。BOCの年内の会合は、9月、10月、12月に行われる予定。

 

◆豪州:RBA(豪準備銀行)

アップデート:

 RBAは8月1日の会合で、政策金利を1.50%に据え置いた。その時の議事録(15日公表)では、住宅市場と家計債務を注視する意向が示されるとともに、低インフレ環境下で高水準の家計債務に伴うリスクとのバランスをとる必要があるとの判断から、政策金利を据え置いたことが判明した。

金融政策の先行きについては、労働市場が改善傾向にあり、利下げの選択肢は消えつつあるとみられる。一方で、過去最高水準にある家計債務や、賃金の伸びが依然として鈍いことから、近い時期に利上げに転じる可能性も低いと考えられる。ロウ総裁は8月11日の議会証言で、「次の金利変更は引き下げではなく引き上げになるとの見方は理にかなっている」とし、次の一手が“利上げ”になる可能性が高いことを示唆。ただし、「利上げはしばらく先になる」とも述べ、政策金利を当面据え置く可能性を示した。賃金の伸びの加速が、RBAが利上げを検討し始める条件のひとつと考えられる。

 OISによれば、RBAが2018年6月までに利上げを行う確率は、7月半ばに60%程度まで上昇した後に反落。足もとでは40%前後で推移している。

 RBAは豪ドル高を懸念している。8月の会合時の声明では、「豪ドル高により、経済活動の好転とインフレ率の上昇が、現在の想定よりも鈍くなる可能性がある」と指摘した。そのため、豪ドルの上昇基調が強まる場合、利上げは後ずれする可能性もある。

 

◆NZ:RBNZ(NZ準備銀行)

アップデート:

 RBNZは8月10日の会合で政策金利を1.75%に据え置いた。金融政策報告における政策金利(OCR)見通しは、前回5月から変化なし。2019年4-6月期まで平均1.8%に維持された後、2019年7-9月期に平均1.9%へと上昇するとの見通しが示された。OCR見通しをみると、RBNZは今後2年間の政策金利の据え置きを想定しているとみられる。

 OISをみると、RBNZの利上げ観測が7月以降、大きく後退したことが確認できる。OISが織り込む、2018年6月までに利上げを行う確率は、7月初めにはほぼ100%だったが、足もとでは30%台へと低下している。

 RBNZはNZドル高を懸念しており、NZドルが上昇基調を強める場合、利上げが後ずれする可能性もある。8月の政策金利発表時の声明では、「貿易財インフレの上昇や、よりバランスの取れた成長を実現するために、NZドルの下落が必要だ」と強調。ウィーラー総裁は同日、「NZドルの下落を望む」と語った。

 

◆トルコ:TCMB(トルコ中央銀行)

アップデート:

 TCMBは7月27日の会合で、金融政策の現状維持を決定。3つの政策金利(1週間物レポ金利、翌日物貸出金利、翌日物借入金利)と、1月半ばから事実上の政策金利となっている後期流動性貸出金利をすべて据え置いた。

 声明では、「インフレ見通しが著しく改善するまで、金融政策の引き締めスタンスを維持する」としたうえで、「インフレ期待や企業の価格設定行動、そしてインフレに影響を及ぼすその他の要因を注視し、必要に応じて一段の金融引き締めを行う」と強調。追加利上げに含みを持たせた。

 トルコの7月CPIは前年比+9.79%と、TCMBのインフレ目標(+5%、その±2%が許容範囲)を大きく上回ったものの、4月のピーク(+11.87%)から4か月連続で上昇率が鈍化。トルコリラも対米ドルで比較的安定している。

 CPI上昇率の鈍化傾向が続き、トルコリラが反発基調を強めれば、TCMBは利下げを検討し始める可能性がある。その場合の手段として、後期流動性貸出金利を引き下げる、あるいは短期市場金利の誘導目標を現在の「後期流動性貸出金利」から、より低い金利水準である「翌日物貸出金利」へと戻すことが考えられる。次の一手は「利上げ」よりも「利下げ」の可能性の方が高いとみられる。

 

◆南アフリカ:SARB(南アフリカ準備銀行)

アップデート:

 SARBは7月20日、5年ぶりの利下げを決定。政策金利を7.00%から6.75%へ引き下げた。

 クガニャゴ総裁は会合後の会見で、「インフレ見通しが著しく改善した」との見方を示し、「インフレ見通しのリスクは均衡している」と指摘。一方で、成長見通しのリスクは下向きとしたうえで、「成長見通しが懸念事項だ」と強調した。インフレ見通しが改善するなか、経済成長見通しが悪化したことで、SARBは利下げを実施したとみられる。

 クガニャゴ総裁は会見で、「将来の金融政策はデータ次第」と発言。追加利下げには言及しなかったものの、経済指標で景気の悪化やCPI上昇率の鈍化が確認されれば、追加利下げに踏み切るとみられる。

 

●政策金利の推移

出所:Bloombergより作成

 
 

●金融政策会合のスケジュール

 

(チーフエコノミスト西田明弘/シニアアナリスト八代和也)

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

バックナンバー

「今月の特集」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ