今月の特集

2017年10月米税制改革の行方、年末にかけて議会審議が本格化

 

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◆はじめに

米議会はこれから年末にかけて税制改革案を審議します。果たして、市場が期待するように米経済や企業業績に好影響が出るのか、注意深く見守る必要がありそうです。

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◆税制改革フレームワーク

9月27日、トランプ政権と共和党幹部は「税制改革フレームワーク」を発表しました。市場の即座の反応は、株高、米ドル高でした。ただし、これは、タイトルにある通り、あくまでも「フレームワーク(枠組み)」に過ぎず、詳細の多くは不明か、あるいは今後の議会審議に委ねられるようです。

税制改革案の具体的な内容は以下の通りです。

とりわけ問題になりそうなのが、財政赤字の拡大につながる可能性があることです。税制改革案では、課税ベースの拡大、税の抜け道の封鎖、経済成長(による増収)により、財政の規律を維持すると謳われています。しかし、詳細が決まっていない現時点で、それが妥当かを判断するのは難しそうです。

中立の民間研究機関Tax Policy Centerの試算によると、税制改革フレームワークが実現すれば、財政赤字が当初10年間で2.4兆ドル拡大、次の10年間で3.2兆ドル拡大するとのことです。CBO(議会予算局)によれば、税制改革がない場合のベースラインの財政赤字は今後10年間で約10兆ドルです。したがって、税制改革によって財政赤字が20%強増加すると計算となります。

ただし、Tax Policy Centerの分析では、従来の予算同様に、税制改革によって経済成長等は影響を受けないとする「静的会計(static accounting)」が採用されました。トランプ政権および共和党幹部は、税制改革によって経済成長が高まり、その結果税収が増えるとする「動的会計(dynamic accounting)」を採用して、増収により財政赤字は増えない、あるいはそれほど大きくならないと主張する可能性があります。

なお、Tax Policy Centerは、税制改革のうち所得税に関する部分だけをみれば税収は増えるとしています。財政赤字拡大の大部分は法人税率の引き下げが原因となるようです。また、所得税減税の恩恵は最高レベルの富裕層に厚く、中低所得層の一部のグループにとっては増税になるとのことです。

 

◆税制改革案の議会審議

今後、税制改革は議会の手に委ねられ、詳細の決定と立法化が図られます。

議会が税制改革を立法化するルートは主に2通りあります。(1)予算の一部として立法化するか、(2)単独の法案として立法化するか、です。

 

(1)予算の一部として立法化

歳入と歳出の調節を行う予算調整法案に税制改革を盛り込む方法です。予算調整法案は、上院においてもフィリバスター(*)の対象にならず、単純過半数で可決されます。現在、上院100議席の内訳は、共和党52、民主党48なので、共和党の造反者を1名にとどめれば、民主党議員の賛成なしで立法化が可能です。スピード成立を目指すなら、税制改革を予算調整法案に盛り込むのが最善策でしょう。

(*)フィリバスターは、審議を延々と続けることで採決を無制限に先送りすること。採決妨害。60議席以上(スーパーマジョリティ)の賛成で審議を打ち切って採決を行うことができる。

ただし、予算調整法案に盛り込むためには、財政赤字拡大につながる項目(減税など)は有効期間を限定する必要があるなど、制約もあります。「税制改革フレームワーク」の内容が全て、予算調整法案に盛り込めるのかどうか、不透明な部分もあります。

10月1日に始まった2018年度の本予算はまだ決まっておらず、現在の継続予算は12月8日に期限切れとなります。この12月8日までにはデットシーリング(債務上限)の引き上げが必要になるため、この前後が重要なタイミングとなりそうです。

 

(2)単独の法案として立法化

上院で審議を打ち切って採決するためには、60議席以上の賛成が必要なため、民主党の協力は不可欠になります。その代り、予算と切り離して審議されるため、時間的制約が緩くなります。年内に成立させることができなくても、来年に改めて単独の法案として審議することも可能です。

民主党内にも税制改革の必要性を認める声はあるため、超党派での成立を目指すことになります。ただし、「税制改革フレームワーク」から大幅に修正される可能性もありそうです。

 

◆最後に

米議会が税制改革を成し遂げるかどうか、それは12月8日に期限が到来する2018年度予算やデットシーリングへの対応と同様に、米経済や金融政策だけでなく、株価、債券価格(金利)、米ドルの行方を左右する可能性があります。

議会審議に関する「3つのシナリオ」については、9月号【アップデート版】「米議会審議の行方と米ドル円相場」をご参照ください。

 

(チーフエコノミスト 西田明弘)

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