市場調査部レポート

2017/10/13 13:28米ドル/円、下押しの時間帯到来か

【相場環境】米金融政策・税制改革、不安定な欧州政治、衆院選挙
【全体観・米ドル】米ドル/円、下押しの時間帯到来か
【ユーロ】ユーロ/米ドル、押し目買いスタンスがワークしそう
【豪ドル】豪ドル/米ドルが上昇を続けるための条件は?
【NZドル】NZファースト党の選択に注目!!
【トルコリラ】トルコリラの下落は一服


【相場環境】 米金融政策・税制改革、不安定な欧州政治、衆院選挙   

◆米金融政策
11日に発表された米FOMCの議事録(9月19-20日開催分)は、年内利上げの可能性を示しました。
議事録によれば、多くの参加者が、中期的な見通しが大きく変わらないならば、年内もう1回の利上げが正当化される可能性が高いと考えました。ただし、他の数人は、年内利上げの判断は、今後の経済指標によってインフレ率が目標に向かっていると確信が持てるかどうかにかかっていると指摘しました。また、少数の参加者は、現行の低いインフレが長引かないと自信が持てるまで利上げを先送りすべきだと考えました。そして、全員が、今後のデータを詳しくモニターすることで合意しました。

FFレート(政策金利)先物によれば、12日時点で市場が織り込む年内利上げの確率は78.6%、FOMC議事録発表直前の80.4%からわずかに低下しましたが、依然としてかなり高い確率です。

もっとも、年内利上げが実現するためには、今後の経済指標によってハリケーンの影響が一時的だと示されること、例えば10月以降の雇用統計でNFP(非農業部門雇用者数)が7年ぶりのマイナスとなった9月から大きく反発することが必要でしょう。さらには、10月に開始されたバランスシート縮小の影響が限定的であること(=長期金利が大きく上昇しないこと)が確認される必要もあるかもしれません。

トランプ政権は、来年2月に任期が満了するイエレンFRB議長の後任人事に力を入れているようです。その進捗や結果は相場材料となりうるだけに注目する必要がありそうです。

◆米税制改革は進展するか
16日の週に、上院は税制改革を進める前段階として予算決議を採決する予定です。これは税制改革案を予算プロセスに組み込むためです。
税制改革案を単独の法案とした場合、上院では100議席中60議席の賛成がなければ可決することができません。少数派の採決妨害(フィリバスター)を阻止するために60議席が必要だからです(現在の共和党の議席は52)。

これに対して、上院が予算決議を採択して、それに基づいて歳入と歳出の調整を行う予算調整法案を提案し、その中に税制改革案を盛り込めば、単純過半数(50議席超)の賛成で成立します。つまり、民主党が誰一人賛成せず、共和党から造反者が2人出るとしても、可決することが可能です(賛成50反対50の場合は、上院議長でもある副大統領がタイブレーカー票を投じます)。

別な言い方をすれば、上院が予算決議を可決できないか、既に可決されている下院の予算決議との一本化に失敗すれば、税制改革の審議は一段と難航することになりそうです。

これとは別に、民主党の下院リーダーのペローシ議員は、トランプ大統領が停止を決めたDACA(不法移民の子供の強制送還を遅らせる措置)への対応を求めており、それがなければ予算審議に応じない意向を示しました。12月8日の期限に向けてシャットダウン(政府機関の一部閉鎖)の懸念が強まるかもしれません。

◆欧州政治情勢
10月15日、オーストリア総選挙。現在、中道右派の国民党と中道左派の社会民主党が「大連立」を組んでいます。事前調査では、国民党が第一党になり、現在のクルツ外相が弱冠31歳にして首相になる可能性が高いようです。また、社会民主党が下野する一方で、右派の自由党が第2党になり、連立政権に参加する可能性があります。国民党は移民制限を求めており、自由党はかつてEU離脱やユーロ離脱の国民投票を主張していました(現在はややトーンダウン)。選挙の結果次第では、ユーロ圏の求心力が一段と低下するかもしれません。

10月22日、イタリア北部2州で自治拡大を求める住民投票。ミラノを抱えるロンバルディア州とベネチアを抱えるベネト州で、自治拡大を求めるオンラインの住民投票が実施されます。これらの住民投票は直接、反EUや反ユーロではありませんが、中央政府の求心力低下につながる可能性があるために注目されます。
また、イタリアでは来春までに総選挙が実施されます。ジェンティローニ首相は現在、ポピュリズム政党の「五つ星運動」に不利となる選挙法改正を進めており、12日には下院で改正法が可決されました。ただし、上院投票の行方は不透明感が強く、仮に選挙法改正が頓挫するようであれば、イタリアの政治が不安定化する可能性もあります。

1日のスペイン・カタルーニャ自治州の住民投票で、約9割の住民が独立を支持しました。カタルーニャ自治州のプチデモン首相は独立を推進する権限を与えられたとしつつ、独立宣言については曖昧な発言にとどめました。

一方、スペインのラホイ首相は、プチデモン州首相に対して独立宣言をしたかどうかを、16日午前10時(日本時間同日午後5時)までに明確にするように要求しました。スペインの憲法の規定では、州の独立を認めていないため、プチデモン州首相を扇動罪で起訴するとの選択肢もあるようです。
カタルーニャ問題は、他の国における反EUや反ユーロの動き、地域の独立運動(スコットランドなど)を刺激する可能性もあるため、引き続き注意が必要でしょう。

◆ブレグジット交渉は暗礁のまま!?
英国とEUとの離脱交渉は引き続き難航しています。英国による拠出金負担、EUによる移行期間の設定など、両サイドが譲歩するかの報道もありますが、進展はほとんどないようです。EU側に英国に譲歩すべき理由はあまりなく、19-20日のEU首脳会談でも何も出てこない可能性が高そうです。

◆目まぐるしく変わる日本の選挙情勢
10月10日公示、22日投開票の衆院選の情勢。 ⇒ 10/11発行のシナリオレポート「衆院解散総選挙と為替相場」をご参照ください。

◆中国共産党大会で習体制は一段と強化されるか
18-24日、5年に一度の共産党大会が開催されます。そこでは、常任委員の指名などを通じて、習近平国家主席が一段と権力を集中させるかが注目されます。経済面では、外需から内需へ、投資から消費へのシフトをさらに推進するか、過剰債務の解消に向けた政策が打ち出されるか、人民元政策に影響がでるか、などがポイントとなりそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、下押しの時間帯到来か

米ドル/円につき、4つのテクニカル指標(スパンモデル®・ボリンジャーバンド・パラボリック・DMI)を使用し、“定線観測※”しつつ、タイムフレーム(時間軸)を変えながら、トレンドおよびコアレンジ、その他重要と思われるポイントについて見ていきたいと思います。(※本来の意味合いは、主に海洋研究において大規模かつ長期的な変動を知るため、観測定線を決めて繰り返し観測すること。ここでは、テクニカル指標を固定し、チャートのタイムフレームを変更しながら、通貨ペアのトレンドを確認する作業のことを言います。)

まずは月足チャートから。以下、米ドル/円・月足・スパンモデル®+21ヵ月ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21ヵ月MA(21ヵ月移動平均線)が右肩下がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足が薄い形状の青い雲(=“買い”の雲)の上辺付近にあること、そして、4) DMI(方向性指数)において、-DI>+DIとなっている (上図青丸印)ことから、米ドル/円の月足チャートでは、上下硬直性(=上値も下値もある程度限定的な状態) を伴う緩やかな下降トレンド形状となっていることが分かります。

上図チャートにおける着目ポイントは3点。

まず1点目は、21ヵ月MAの方向性。同ラインは、21ヵ月の期間における市場参加者の売買コストの平均値を示しており、その平均値が右肩下がりとなっていることから、月足レベルでの米ドル/円の大勢トレンドは「緩やかな下方向である」と判断することができます。

そして2点目は、DMIの3つのラインの動向。現状では、+DIと-DIが絡み合いながらも-DI>+DIとなっていること、また、トレンドの強弱を示すADXが右肩下がりとなっていることから、これらシグナルからの米ドル/円の大勢トレンドは「緩やかな下方向」を指向していると捉えてよさそうです。

最後の3点目は、ボリンジャーバンド・±2σラインの動向。現状、この2つのラインが21ヵ月MAに向かって収縮(スクイーズ)する展開となっており(上図黄色矢印)、相場の力を溜め込む時間帯であることが分かります。次なる拡張(エクスパンション)、つまり力の放出(=ビッグトレンドの出現)確認まではもうしばらくの時間的経過が必要であると想定され、当面は狭いレンジ内での推移となりそうです。

これら3点のメルクマールを総合すると、米ドル/円の月足(複合)チャートを示唆するトレンドは【緩やかな下降トレンド】、コアレンジは、SARからボリンジャーバンド・+1σライン内のゾーンである【105.60-114.00円】と仮定します。

同様に、週足複合チャートも見ていきましょう。以下、米ドル/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21週MA(21週移動平均線)が横向きであること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足が薄い形状の青い雲(=“買い”の雲)の上方にあること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の下方にあること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている (上図赤丸印)ことから、米ドル/円の週足チャートでは、典型的な横ばい基調(=レンジ相場)シグナルが示現しています。

週足チャートから判断する基本的なトレンドは【横ばい基調】(=レンジ相場)、コアレンジはボリンジャーバンド・±2σライン内のゾーンである【108.00-113.90円】と仮定します。

最後に、日足チャートを。以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足に接近する状態となりつつあること、3) ローソク足が青い雲(=“買い”の雲)の上方にあること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方にあること、そして、5) DMI(方向性指数)において、-DI>+DIとなっている (上図青丸印)ことから、米ドル/円の日足チャートでは、上昇トレンドの一服→下押しシグナルの出現が確認できます。

上図チャートでは、ボリンジャーバンド・±2σラインが21日MAに向かって収縮(スクイーズ)している(上図黄色矢印)ことから、月足チャート同様、相場の力を溜め込む時間帯となっています。

今後、仮にDMIで-DI>+DIの乖離が拡大し、さらにADXが右肩上がりの展開となった状態で、ボリンジャーバンド・±2σラインが拡張(エクスパンション)する動きとなった場合は、下降モメンタムがさらに強まる可能性を視野に入れるべきでしょう。

日足チャートから判断する基本的なトレンドは【横ばい基調】(=レンジ相場)、コアレンジはボリンジャーバンド・±2σライン内のゾーンである【111.30-113.30円】と仮定します。以上、月足・週足、そして日足チャートの各メルクマールから勘案するポイントは、米ドル/円の上値は限定的であるということ。足もとの米ドル/円は、下押し主体の時間帯となりそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、押し目買いスタンスがワークしそう

以下、ユーロ/米ドル・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21週MA(21週移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること、3) ローソク足が青い雲(=“買い”の雲)の上辺付近にあること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方にあること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DIと-DIが接近して絡み合う形状となっている(上図赤丸印)ことから、ユーロ/米ドルは上昇トレンド過程における下押し(=押し目)フローの時間帯であると判断します

上図チャートでは、4月から継続していた【上昇バンドウォーク】※が一旦崩れ、先行1スパン付近までの下押しの時間帯となっていることが分かります。(※ ローソク足が+1σラインと+2σラインの間のゾーンで推移する状態のこと。)

今後、仮にDMIで+DI>-DIの乖離が拡大し、また、ボリンジャーバンド・±2σラインが拡張(エクスパンション)する動きとなった場合は、再度上昇モメンタムが強まる可能性を視野に入れるべきでしょう。

週足チャートから判断する基本的なトレンドは【上昇基調】、コアレンジは先行1スパンとSARの間のゾーンである【1.1610-1.2040ドル】と仮定します。

足もとのユーロ/米ドルは、先行1スパン(≒1.1610ドル)付近までの下押しは、積極的に買い拾うスタンスでいいのかもしれません。<津田>


【豪ドル】 豪ドル/米ドルが上昇を続けるための条件は?

豪ドルは今週(10月9日の週)、対米ドル・対円ともに若干反発しました。豪ドル/米ドルの反発は、豪ドルの買い材料が提供されたというよりも、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録で米ドルが全般的に弱含んだことが大きいとみられます。豪ドル/円は豪ドル/米ドルにけん引されたと考えられます。

市場の関心は主に各国中銀の金融政策へと向いています。RBA(豪中銀)とFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に目を向けると、RBAが政策金利を当面据え置くとみられる一方、FRBは年内にも追加利上げに踏み切るとの見方が有力です。この見方に大きな変化がない限り、豪ドル/米ドルの上昇は一時的に終わる可能性があります。豪ドル/米ドルが上昇を続けるには、RBAの利上げ観測が浮上する、あるいはFRBの年内利上げ観測が後退する必要がありそうです。

来週(10月16日の週)発表される豪州の経済指標では、17日のRBA議事録(10月3日開催分)19日の雇用統計(9月)に注目です。RBA議事録で今後の金融政策について新たな材料が提供される、あるいは雇用統計が市場予想からかけ離れる結果になれば、豪ドルが反応する可能性もあります。<シニアアナリスト 八代和也>


【NZドル】 NZファースト党の選択に注目!!

9月23日に実施された総選挙では、国民党(56議席)は過半数の61議席に届かず、一方で労働党(46議席)も連立で合意している緑の党(8議席)を加えても61議席を確保できませんでした。国民党と労働党のいずれも政権を獲得するには、NZファースト党(9議席)の協力が不可欠。NZファースト党が連立相手として選んだ方が政権を獲得します。

NZファースト党が12日を期限としていた連立相手の最終決定を延期しました。同党のピータース党首は12日、国民党(与党)と労働党(最大野党)のどちらと連立を組むかを決定する党役員会が14から16日のいずれかに開催されると述べ、翌13日に党役員会は16日(月)に開催されるだろうと語りました。

仮に14日や15日、あるいは16日の取引開始前にNZファースト党の連立相手が決定した場合、16日のNZドルは窓をあけてスタートする可能性があり、注意が必要です。

NZファースト党が国民党を選択した場合、NZドルにとってプラス材料と考えられます。国民党がNZファースト党にどの程度譲歩するかによるものの、国民党政権が続くことによって現在の政策の継続性がある程度保たれるとの見方ができるためです。

一方、NZファースト党が労働党を選択すれば、NZドルにとってマイナス材料となりそうです。政権が交代することによって政策が大幅に変わる可能性があるためです。また、労働党がRBNZ(NZ中銀)の責務変更を提案し、NZファースト党がRBNZの為替介入を増やすように主張していることも、NZドルの重しになりそうです。労働党はRBNZの責務を現行の「物価安定」の1つから「物価安定」と「完全雇用の達成」の 2 つに変更することを提案しています。<八代>


【トルコリラ】 トルコリラの下落は一服

トルコリラが10月9日早朝に急落。トルコリラ/円は一時29.35円へと下落し、約半年ぶりの安値をつけました。

トルコリラが下落した背景には、トルコの地政学リスクが高まったことや、トルコと米国の双方がビザの発給を停止したことが挙げられます。

シリアの反政府組織が7日、同国北部のイドリブ県で勢力を増すイスラム過激派の掃討を目的とした軍事作戦を開始しました。反体制派を支援するトルコのエルドアン大統領は同日、新たな軍事作戦を展開すると表明。トルコはシリアとの国境沿いに戦車など軍事車両を配備し、榴弾砲を発射しました。

一方、在トルコ米大使館は8日、トルコ国内で非移民のビザの発給を停止したと発表。その後、トルコも米国でのビザの発給を停止しました。イスタンブールの米総領事館の職員をトルコ当局が先週逮捕しており、今回の米国の措置はその対抗との見方があります。トルコ政府は昨年7月のクーデター未遂事件の首謀者と断定するギュレン師の身柄を引き渡すように米国に繰り返し求め、米国がそれを拒否していることで、両国の関係が悪化していました。こうした状況のなかで、ビザの発給を双方が停止したことで、市場ではトルコと米国の関係が一段と悪化するとの懸念が高まりました。

地政学リスクの高まりや米国とトルコの関係悪化は、トルコリラにとってマイナス材料と考えられます。一方で、トルコリラは10日以降、対円や対米ドルで緩やかに反発しました。ビザの発給停止などの影響は薄れつつあるようにも見えます。トルコに関するネガティブ材料が新たに出てこなければ、トルコリラは下落基調を強める状況ではないかもしれません。<八代>


※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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