市場調査部レポート

2017/10/06 11:42『10月相場』は歴史的に荒れやすい?

【相場環境】欧州、米国、日本の政治情勢
【全体観・米ドル】『10月相場』は歴史的に荒れやすい?
【ユーロ】ユーロ/米ドル、典型的な下降トレンド形状に
【豪ドル】豪ドル/米ドルは下押し圧力が加わりやすい地合いか
【NZドル】市場の関心は連立協議、政局関連のニュースに注意
【加ドル】BOC総裁が追加利上げを急がない姿勢を示す


【相場環境】 欧州、米国、日本の政治情勢   

◆欧州にポピュリズムが再び台頭する兆し!?
1日のスペイン・カタルーニャ自治州の住民投票で、約9割の住民が独立を支持したと伝えられています。スペイン政府は認めていませんが、カタルーニャ自治州は一方的な独立宣言を行う可能性があります(EUは、カタルーニャが仮に独立したとしても、加盟を検討しない意向のようです)。

欧州では、3月のオランダ選挙で自由党が敗北し、4-5月のフランス大統領選挙で国民戦線のルペン党首が敗れるなど、ポピュリズムが下火となる兆しがありました。しかし、9月24日のドイツ総選挙ではユーロ離脱を主張するAfD(ドイツのための選択肢)が善戦し、メルケル首相のCDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)や、大連立を組んでいたSPD(社会民主党)から票を奪いました。メルケル首相は、FDP(自由民主党)と緑の党との「ジャマイカ連立(政党カラーを国旗に見立てたもの)」を模索していますが、年内の連立政権樹立は難しいとの見方があります。

今後も、欧州でポピュリズムの機運が高まりかねないイベントがあり、ユーロの弱気材料として注意する必要がありそうです。

10月15日、オーストリア総選挙。現在、中道右派の国民党と中道左派の社会民主党が「大連立」を組んでいますが、極右の自由党が議席を増やして連立政権に絡んでくる可能性があります。自由党は、かつてEU離脱やユーロ離脱の国民投票を主張していました。現在はややトーンダウンしているようですが、選挙の結果次第では、そうした主張を再び掲げるかもしれません。

10月22日、イタリア北部2州で自治拡大を求める住民投票。ミラノを抱えるロンバルディア州とベネチアを抱えるベネト州で、自治拡大を求めるオンラインの住民投票が実施されます。これらの住民投票は直接、反EUや反ユーロではありませんが、中央政府の求心力低下につながる可能性があるために注目されます。

また、イタリアでは来春までに総選挙が実施されます。現在、ジェンティローニ首相の民主党と、ポピュリズム政党の「五つ星運動」が支持率1位を競い合っています。今後、若い党首への交代があった「五つ星運動」が一段と支持を集めれば、政権奪取の可能性が意識されるかもしれません。

◆ブレグジットは「合意なし」も?
英国とEUとの離脱交渉は暗礁に乗り上げたままのようです。英国はEUに対して拠出金を支払う意向を表明しているものの、詳細は通商協定など離脱後の関係がある程度見えてからとのスタンスです。一方で、EUは拠出額の詳細が決まらなければ、話しは先に進まないとの姿勢を堅持しています。
英国のデービスEU離脱担当相は、3日の保守党大会で「(合意なしの場合に備えて)緊急計画の策定に取り組む必要がある」と述べました。

◆米税制改革は進展するか
27日、トランプ政権と共和党幹部は「税制改革フレームワーク」を発表しました。市場は株高、米ドル高で反応したようです。ただし、これは、タイトルにある通り、あくまでも「フレームワーク(枠組み)」に過ぎず、詳細の多くは不明か、あるいは今後の議会審議に委ねられるようです。

税制改革案の具体的な内容は以下の通りです。

とりわけ問題になりそうなのが、財政赤字の拡大につながる可能性があることです。税制改革案では、課税ベースの拡大、税の抜け道の封鎖、経済成長(による増収)により、財政の規律を維持すると謳われています。しかし、詳細が決まっていない現時点で、それが妥当かを判断するのは難しそうです。

今後、税制改革は議会の手に委ねられ、詳細の決定と立法化が図られます。
議会が税制改革を立法化するルートは主に2通りあります。(1)予算の一部として立法化するか、(2)単独の法案として立法化するか、です。

(1)予算の一部として立法化
歳入と歳出の調節を行う予算調整法案に税制改革を盛り込む方法です。予算調整法案は、上院においてもフィリバスター(*)の対象にならず、単純過半数で可決されます。現在、上院100議席の内訳は、共和党52、民主党48なので、共和党の造反者を1名にとどめれば、民主党議員の賛成なしで立法化が可能です。スピード成立を目指すなら、税制改革を予算調整法案に盛り込むのが最善策でしょう。

(*)フィリバスターは、審議を延々と続けることで採決を無制限に先送りすること。採決妨害。60議席以上(スーパーマジョリティ)の賛成で審議を打ち切って採決を行うことができる。

ただし、予算調整法案に盛り込むためには、財政赤字拡大につながる項目(減税など)は有効期間を限定する必要があるなど、制約もあります。「税制改革フレームワーク」の内容が全て、予算調整法案に盛り込めるのかどうか、不透明な部分もあります。

10月1日に始まった2018年度の本予算はまだ決まっておらず、現在の継続予算は12月8日に期限切れとなります。この12月8日までにはデットシーリング(債務上限)の引き上げが必要になるため、この前後が重要なタイミングとなりそうです。

(2)単独の法案として立法化
上院で審議を打ち切って採決するためには、60議席以上の賛成が必要なため、民主党の協力は不可欠になります。その代り、予算と切り離して審議されるため、時間的制約が緩くなります。年内に成立させることができなくても、来年に改めて単独の法案として審議することも可能です。

民主党内にも税制改革の必要性を認める声はあるため、超党派での成立を目指すことになります。ただし、「税制改革フレームワーク」から大幅に修正される可能性もありそうです。

米議会が税制改革を成し遂げるかどうか、それは12月8日に期限が到来する2018年度予算やデットシーリングへの対応と同様に、米経済や金融政策だけでなく、株価、債券価格(金利)、米ドルの行方を左右する可能性があります。

◆目まぐるしく変わる日本の選挙情勢
10月10日公示、22日投開票の衆院選の情勢が目まぐるしく変化しています。安倍首相は、野党の失策や準備不足をついて解散総選挙に踏み切りました。当初、与党の圧勝が予想されましたが、小池東京都知事が「希望の党」を立ち上げ、さらに民進党が事実上の合流に動いたことで、情勢が大きく変わりました。さらに、枝野元民進党代表代行が立憲民主党を立ち上げるに至り、今度は野党勢力が分断され、事態は混とんとしています。

日本株上昇のけん引役だった外国人投資家は政治の不安定・不透明を嫌う傾向があるため、今後の選挙情勢の変化が相場材料となる可能性もありそうです。 <チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 『10月相場』は歴史的に荒れやすい?

10月がスタートして、はや一週間が経過しようとしています。(6日執筆時)

『9-10月相場』と言えば、特に株式市場では伝統的に、「9月:世界的に最も株価が落ち込みやすい月」「10月:9月の次にパフォーマンスが悪い月」と言われている中、今年の『9-10月相場』は今のところ特にまとまった修正フローもなく、NYダウ平均に至っては10月5日の段階で最高値を更新する展開となっています。

そんな中、歴史的に『10月相場は荒れやすい』との基本的な見方があることは、マーケット参加者として念頭に入れておくべきでしょう。その事由の代表的なものとして、以下、過去10月に起こった歴史的出来事・事件一覧(抜粋)につき、ご確認ください。

<<【10月】に起こった歴史的出来事・事件(抜粋)>>

1929年10月24日 世界大恐慌(暗黒の木曜日)
1973年10月6日 第四次中東戦争勃発→第一次石油ショック
1987年10月19日 ブラックマンデー(暗黒の月曜日)
1998年10月 ロシア財政危機(8月)→LTCMの破綻
2008年10月7日 アイスランド危機(非常事態宣言)
2008年10月24日 リーマンショック後の最終C波クラッシュ(※注)
2014年10月29日 FRB、量的金融緩和第三弾(QE3)の終了
2014年10月31日 日銀による“黒田バズーカvol.2”(異次元金融緩和第二弾)の炸裂
 (※注 エリオット波動理論における【下降3波】のうちで最大の衝撃波と言われる動きのこと。)

こうして見ても、過去における【10月】に発生した出来事・事件は、世界史の教科書に掲載されるような、言わば“メガトン級”のカタリスト(=相場材料)となり得た事象が多く存在することが、『10月相場は荒れやすい』と言われる所以なのかもしれません。

これを以て、<必ず10月相場は荒れる>という断定的・主観的メッセージをお伝えしようという意図はありませんが、あくまで過去に起こった事象の一部として頭の片隅に置いていただければ幸いです。

そんな中、巷間、今月10月のカタリストとなり得る日柄予想としては、朝鮮労働党創建記念日(10月10日)や、中国共産党大会(10月18日-25日)前後と目されており、当該日前後における北朝鮮による軍事的挑発行動には十分に警戒すべきでしょう。

閑話休題。早速ですが、足もとの米ドル/円相場の重要ポイントを確認していきたいと思います。以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること、3) ローソク足が青い雲(=“買い”の雲)の上方にあること、そして、4) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている (上図赤丸印)ことから、米ドル/円の大勢のトレンドは上向きを示唆していることが分かります。(10/6時点の判断)

上図チャートにおける着目ポイントは3点。

まず1点目は、トレンドの転換点を示すパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯し、【売りシグナル】となっていること。当該シグナルは【上昇一服シグナル】とも取れるため、今後の動向に注目する必要があります。

2点目は、ボリンジャーバンド・±2σラインの動向。10/6時点において、この2つのラインは21日MAに向かって収縮(スクイーズ)する展開となっています(上図黄色矢印)。このシグナルは今までのトレンドの勢いが弱まっていることを示唆しており、トレンドの転換(=この場合は、上昇トレンドから下降トレンドへの転換)を示唆する動きと捉えるべきでしょう。

そして3点目は、ボリンジャーバンド・+1σラインとローソク足の関係(上図赤三角印)。10/6時点では、ローソク足が終値(実体線)レベルで+1σライン(≒112.94円)を下回っており、これからの時間帯において、明確に同ラインを下回るような状態となった場合は、9月中旬から継続していた【上昇バンドウォーク】の終了となり得ます。

これら3点のメルクマールを総合すると、10/6時点における米ドル/円は、上昇トレンドの勢いがやや低下しており、材料次第では21日MA(≒111.60円)付近までの下押しフローも考慮すべきなのかもしれません。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、典型的な下降トレンド形状に

以下、ユーロ/米ドル・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩下がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の下方にあること(上図赤三角印)、3) ローソク足が赤い雲(=“売り”の雲)の下方にあること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、そして、5) DMI(方向性指数)において、-DI>+DIとなり、ADXが右肩上がりとなっていること(上図青丸印)から、ユーロ/米ドルは典型的な下降トレンド形状となっていることが分かります。(10/6時点の判断)

上図チャートにおける着目ポイントは3点。

まず1点目は、ローソク足が雲を下抜けブレークしている点。青い雲(=“買い”の雲)を下抜けしていることから、「サポート帯ブレーク→下押し基調」が強まりつつあると見るべきでしょう。

2点目は、遅行スパンが明確にローソク足を下抜けブレークしている点。当該シグナルは、下降モメンタムが強まることを示唆する重要なメルクマールとなっていることもあり、10/6時点におけるユーロ/米ドルは下降トレンドの序盤段階と捉えてよいでしょう。

そして3点目は、ローソク足が-1σラインと-2σラインの間のゾーンを推移する【下降バンドウォーク】を形成していること。このシグナルは遅行スパン同様、下降トレンドを示す重要なメルクマールであるため、ユーロ/米ドルは当面、緩やかな下降トレンドが継続すると想定した方がよいでしょう。

これら3点のメルクマールを総合すると、10/6時点におけるユーロ/米ドルは、下降トレンドが徐々に強まることが想定され、-1σラインと-2σラインの間のゾーンを推移する【下降バンドウォーク】が継続しそうです。<津田>


【豪ドル】 豪ドル/米ドルは下押し圧力が加わりやすい地合いか

RBA(豪中銀)は10月3日、政策金利を過去最低の1.50%に据え置くことを決定しました。据え置きは12回連続です。

金融政策に関する文言は前回と同じでした。「低水準の金利が豪経済を引き続き支援している」と分析し、「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」と説明しました。

豪ドル高についても前回とほぼ同じ。「豪ドル高は物価圧力を抑制する一因になると予想される」とするとともに、「(豪ドル高は)生産や雇用の見通しの重しにもなっている」と指摘。「豪ドル高により、経済活動の好転とインフレ率の上昇が、現在の想定よりも鈍くなる可能性がある」との見方を示しました。

今回の声明は前回9月5日から大きな変化がなく、RBAは政策金利を当面据え置く可能性が高いことを示唆したと言えそうです。

主要国中銀の金融政策に目を向けると、FRB(米連邦準備制度理事会)やBOC(カナダ中銀)が今年利上げを実施し、市場では年内に追加利上げに踏み切るとの観測があります。BOE(英中銀)は9月の会合で、今後数か月以内に利上げに転じる可能性を示しました。それら主要国中銀とRBAとの金融政策の方向性の違いを背景に、豪ドルには下押し圧力が加わりやすい地合いと考えられます。

10月5日に発表された豪州の8月小売売上高も豪ドルの重しになりそうです。小売売上高は前月比-0.6%と、市場予想(+0.3%)に反して7月から減少しました。

豪ドル/米ドルは一段と下落する可能性があります。7月半ば以降、下値支持線として機能している0.78米ドルより下の水準で定着すれば、次は200日移動平均線が下値メドとして意識されそうです。同移動平均線は10月5日時点で0.7661米ドルに位置します。豪ドル/米ドルが反発傾向に転じるには、米ドルのマイナス材料が必要かもしれません。一方、豪ドル/円は、堅調な米ドル/円に下支えされて、比較的底堅い展開になる可能性があります。<シニアアナリスト 八代和也>


【NZドル】 市場の関心は連立協議、政局関連のニュースに注意

乳製品電子オークション(GDT)が10月3日に開催され、乳製品国際価格の指標であるGDT価格指数は1050と、前回9月19日の1075から低下しました。

NZにおいて乳製品は最大の輸出品(輸出全体の約3割を占める)であるため、NZドルはGDT価格指数の動向に影響を受けやすいという特徴があります。

GDT価格指数は昨年3月の628を起点に上昇基調を強め、今年6月には1096へと上昇。2014年6月以来の高値をつけました。その後は伸び悩み、足もとではやや頭打ち感があるものの、依然として2015年以降の高値圏を維持しています。また、天候不順によってNZの生産が昨年を下回っているため、乳製品の供給量が今後減少し、GDT価格指数は再び上昇するとの見方もあります。そう考えると、今回の結果は、NZドルにとってそれほど大きなマイナス材料ではないかもしれません。

ただ、市場の関心は現在、NZの連立協議の行方に向いているため、NZドルは乳製品価格の動向やNZの経済指標に反応しにくい地合いです。NZの政局関連のニュースに注意が必要です。9月23日に実施されたNZの総選挙では、国民党(与党)と労働党(最大野党)のいずれも過半数を獲得できず、両党のどちらが次の政権を担うかはNZファースト党が鍵を握ります。NZファースト党のピータース党首は、総選挙の最終結果が発表される10月7日以降に国民党と労働党のどちらと連立を組むかの判断を下す考えのようです。連立協議に進展がみられれば、NZドルが反応する可能性があります。<八代>


【加ドル】 BOC総裁が追加利上げを急がない姿勢を示す

BOC(カナダ中銀)のポロズ総裁は9月27日の講演で、今年7月に開始した利上げをいったん休止する可能性を示しました。BOCは7月と9月の2会合連続でそれぞれ0.25%の利上げに踏み切りました。

ポロズ総裁は政策金利について、「あらかじめ決まった道筋はなく、将来の道筋は経済指標次第だ」と強調。「家計の高水準な債務を背景に経済の金利上昇の感度が高いことを含め、複数の不確定要因が機械的に政策金利の見通しを立てることを難しくしている」と語りました。

ポロズ総裁はまた、7月と9月に行った2回の利上げについて、「経済にどのような影響を与えるかはまだ明らかではない」と指摘。2回の利上げの影響を見極めるため、追加利上げを急がない姿勢を示しました。

ポロズ総裁の講演を受けて、市場では次回10月25日の会合での追加利上げ観測が後退。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が10月5日時点で織り込む、BOCが10月に利上げを行う確率は19.4%。利上げの確率は12月までで65.0%へと上昇します。10月に見送られたとしても、12月に追加利上げが行われるとの見方が有力であることが確認できます。年内利上げ観測が加ドルを下支えすると考えられます。<八代>

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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