市場調査部レポート

2017/09/08 14:00米議会動向、米金融政策、ECB理事会・・・

【相場環境】米議会動向、米金融政策、ECB理事会・・・ 
【全体観・米ドル】9.9 地政学リスクに要警戒
【ユーロ】ユーロ/米ドル、力強い上昇トレンドが継続しそう
【豪ドル】豪ドル/米ドルは上昇のペースが緩やかになる可能性も!?
【加ドル】BOCが連続利上げ。追加の可能性あるも、今後は慎重になりそう
【トルコリラ】TCMBは金融政策の現状維持を決定か


【相場環境】 米議会動向、米金融政策、ECB理事会・・・   

9月6日、トランプ大統領は、ハリケーン・ハービー救済金、デットシーリング(債務上限)の引き上げ、継続予算について、議会と合意しました。7日に上院が合意に沿った法案を可決しました(7時点で下院の可決待ち)。ただし、デットシーリングの引き上げと継続予算は12月8日までの期限付きです。つまり、トランプ政権と議会は問題を3か月程度先送りしたに過ぎません。目先の懸念はいったん後退しましたが、年末にかけて市場がシャットダウン(政府機関の一部閉鎖)や国債のデフォルト(債務不履行)を改めて意識する局面は出てくるかもしれません。

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6日、フィッシャー米FRB副議長が辞意を表明しました。「個人的理由」とのことですが、フィッシャー副議長はトランプ政権が進める金融規制緩和に批判的だったとされ、抗議の意味合いがあるのかもしれません。
フィッシャー副議長が辞任すれば、ワシントンのFRB本部の理事は、議長・副議長を含めた定員7人のうち3人が空席となります。来年2月にはイエレン議長の任期が満了します。FRB理事は、大統領が指名して議会が承認して決まります。今後、FRBに対するトランプ大統領の影響力が増すかもしれません。

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ベージュブック(地区連銀経済報告)によれば、景気は全12地区で「わずか」ないしは「緩やか」に拡大しました。前回7月の報告とほぼ同じです。
個人消費、製造活動ともに比較的堅調でした。ただ、自動車の生産・販売は軟調で、多くの地区で軟調の長期化が懸念されました。雇用の増加ペースはやや弱まりましたが、労働市場は全般に「タイト」と表現されました。製造業や建設業など多くの産業で人手不足が報告されました。賃上げ圧力は限定的であり、賃金の伸びは緩やかでしたが、2つの地区では「人手不足による賃金上昇」が報告されました。

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7日時点のFFレート(政策金利)先物に基づけば、「年内利上げ」の確率は35%、「据え置き」の確率65%を大きく下回っています。地政学リスクが強く意識されるなかで、自動車部門に減速感があり、税制改革の先行きも不透明、さらには超大型ハリケーン・イルマがハービーについで米国に被害をもたらす可能性もあるため、FRBが年内に利上げに踏み切る可能性は大きく低下しているかもしれません。

FFレート先物に基づけは、2018年末までの「据え置き」が32%、利上げ1回が40%織り込まれています。つまり、このまま18年末まで「利上げなし」あるいは「せいぜい1回」との見方が有力になっています。
今後、労働市場のタイト化が賃金の伸びにつながる、携帯通話料金の大幅下落といった特殊要因のはく落によってインフレ率が上振れる等の状況になれば、来年の金融政策に関する観測が大きく変わって、複数回の利上げが織り込まれる可能性があります。その場合は米ドルの押し上げ要因になりそうです。

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7日のECB理事会では、金融政策の据え置きが決定されました。理事会後の記者会見でドラギ総裁が、ECBのQE(量的緩和)縮小の開始決定は10月になる見込みだと述べたため、ユーロ高要因となりました。

ドラギ総裁は会見で、「インフレ率の中期見通しは、主にユーロの上昇を理由に引き下げられた。今後の金融政策決定においてこうした要素(ユーロ相場)を考慮に入れる必要が出てくる」とも述べましたが、市場の想定を上回るほどの強いユーロ高けん制ではなかったようです。

堅調なユーロ圏経済を背景にECBがテーパリング(金融緩和の段階的縮小)に向かう中では、ユーロの強い地合いが継続しそうです。ECBからのユーロ高けん制が強まるかどうか注目されます。

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今後の注目点は、まず9日の北朝鮮の建国記念日。そして、10日には超大型ハリケーン・イルマがフロリダ州に上陸するものとみられます。
14日にBOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)が開催されます。金融政策の現状維持が予想されますが、利上げを主張する委員が前回の2人から増えるかどうかに注目です。12日発表の英CPIの結果にも影響を受けそうです。同じ14日にTCMB(トルコ中銀)の会合もあります。こちらも現状維持が予想されます。
経済指標では、14日に豪雇用統計と米CPI15日に米小売売上高やNY連銀製造業景況指数など。米経済指標が総じて軟調となれば、年内の利上げ観測が一段と後退する可能性があります。(チーフエコノミスト 西田明弘)


【全体観・米ドル】 9.9 地政学リスクに要警戒

9月相場がスタートしてはや一週間が経過しました。8日(当稿執筆)時点から見る、9月の注目イベントスケジュール(メモリアルデーも含む)抜粋について、以下ご確認ください。

【9月 注目イベントスケジュール(抜粋)】(※メモリアルデーも含む)

9日:北朝鮮建国記念日
11日:9.11 米同時多発テロ事件から16年
14日:BOE(イングランド銀行)金融政策委員会(MPC)
15日:リーマン・ブラザーズ破綻(チャプター11適用)から9年
19-20日:米FOMC
20-21日:日銀金融政策決定会合
22日:プラザ合意から32年
24日:独連邦議会総選挙

上記注目イベントスケジュール(抜粋)の中でも、やはり喫緊のマーケット参加者の耳目は、地政学リスクとなり得る9日の北朝鮮建国記念日前後における不確実性に集まっているといってもいいでしょう。

現に、去る3日(日)、6回目となる核実験を北朝鮮が実施したことで、東アジア地域における軍事的オプションの確率が高まる中、マーケット参加者はその不確実性もあり、積極的なリスクポジションを保有しづらい状況と言えます。

その一方で、巷間取り沙汰される「Xデー」観測、つまり、北朝鮮に対する先制攻撃説といった、いわばフェイクニュースに近いような噂も散見されるため、当面のマーケットは、北朝鮮情勢を取り巻く動きに神経過敏な状態が続きそうです。

足もとのマーケットは、北朝鮮を中心とする地政学リスクとともに、北米大陸に迫る大型ハリケーン「イルマ」の脅威にも過敏に反応しそうですが、これら材料がマーケットに与える影響を正確に予測することはほぼ不可能と捉えた方がよさそうです。

昨今の不確実性が増大するマーケット環境下では、やはりできるだけ長い時間軸チャートからその傾向・パターン、そしてクセを見つけ出し、確率の高そうなものには“乗る”、そうでないものには“乗らない”という、マーケットの基本原則に従うべきではないかと個人的に考えます。

一方で、そのチャートはあくまでも「確率」「期待値」を推し量る上でのツールに過ぎないことも認識しつつ、自身の投資計画に無理のない範囲内での“出口戦略”、つまりストップ・ロス・オーダーを必要条件として、粛々と設定していただければと思います。

閑話休題。以下、米ドル/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図、米ドル/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIを見ると、1) 21週MA(21週移動平均線)が横向きであること、2) 遅行スパンがローソク足の下方に向かいつつあること、3) ローソク足が先行2スパンの下方にあること、4) ローソク足の上方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっている(上図青丸印)ことから、下降トレンドが今後強まる可能性が見て取れます。

上記チャートにおける喫緊の重要ポイントは・・・-2σライン(≒108.00円)

8日時点では、ローソク足の下ヒゲが同ラインにワンタッチしていますが、これからの時間帯において、終値レベル、つまり実体ローソク足で同ラインを明確に割り込んだ場合は、下降モメンタムが強まる可能性も視野に入れるべきでしょう。

特に、DMI(方向性指数)において、-DI>+DIの状態でADXが低位置から右肩上がりに推移しつつあることからも、下降モメンタムの強まりには用心した方がよさそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、力強い上昇トレンドが継続しそう

以下、ユーロ/米ドル・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図、ユーロ/米ドル・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIを見ると、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足が先行1スパンの上方にあること、4) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIとなっている(上図赤丸印)ことから、力強い上昇トレンド相場が継続していることが分かります。

ローソク足が、+1σラインと+2σラインの間のゾーンを推移する、いわゆる【上昇バンドウォーク】を形成しており、当面は当該ゾーンを中心に、下値を切り上げる相場展開となりそうです。

7日に行われたECB理事会後のドラギECB総裁定例会見では、ここもとのユーロ高に対する懸念が表明されたものの、マーケット参加者は10月の理事会で段階的なテーパリング(量的金融緩和の縮小)を議論する」というコメントに重きを置いたことで、ユーロが主要通貨に対してさらに強含む形となっています。

ファンダメンタルズ部分のみを切り取ってみると、ユーロ/米ドル相場の強気スタンス継続はやや不可解と言えますが、上図チャートの各メルクマールを見ると、当面のユーロ/米ドルの強さは今のところ不変と言えそうです。

上図チャートから勘案する、ユーロ/米ドルのイグジット・ポイントは、ローソク足が実体ローソク足(=終値レベル)で+1σラインを割り込んだタイミングと捉えるべきでしょう。よって、適宜ストップ・ロス・オーダー、ないしはトレールストップ・オーダーを事前に設定した上で、エントリーを図るのも一案と考えます。<津田>


【豪ドル】 豪ドル/米ドルは上昇のペースが緩やかになる可能性も!?

RBA(豪中銀)は9月5日の会合で、政策金利を過去最低の1.50%に据え置くことを決定しました。

声明では、豪労働市場について、「先行きに関するさまざまな指標は、今後の雇用の堅調な伸びを示している」と分析。賃金の伸びは依然として鈍く、当面はこうした状況が続く可能性があるとの見方を維持する一方、新たに「労働市場の改善によって賃金はやがて幾分押し上げられる見込み」との一文が加わりました。

豪ドルに関する文言は8月から変化なし。「米ドル安も一因となり、豪ドルはここ数か月上昇している」と分析。「豪ドル高は物価圧力を抑制する一因になると予想される」とするとともに、「豪ドル高は生産や雇用の見通しの重しにもなっている」と指摘。「豪ドル高により、経済活動の好転とインフレ率の上昇が、現在の想定よりも鈍くなる可能性がある」との見方を示し、引き続き豪ドル高をけん制しました。

金融政策については、「低水準の金利が豪経済を引き続き支援している」とし、低金利の必要性を強調。そのうえで、「入手可能な情報を考慮すると、理事会は今回の会合で政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」とし、政策金利を当面据え置くことを示唆しました。

今回の声明では、賃金の伸びへの見方が若干前向きなものへと変化しました。そのことは、豪ドルにとってプラス材料と考えられます。米ドルが全般的に弱含んでいることもあり、豪ドル/米ドルは堅調に推移する可能性があります。ただし、豪ドル/米ドルが上昇する場面では、RBAの豪ドル高けん制が意識される可能性があります。上昇のペースは緩やかになるかもしれません。<シニアアナリスト 八代和也>


【加ドル】 BOCが連続利上げ。追加の可能性あるも、今後は慎重になりそう

BOC(カナダ中銀)は9月6日、0.25%の利上げを決定。政策金利を0.75%から1.00%へ引き上げました。利上げは2会合連続です。

今回の利上げは、カナダ経済がBOCの予想以上に力強いことが理由のようです。カナダの4-6月期GDPは前期比年率換算+4.5%と、1-3月期の+3.7%から伸びが加速。約6年ぶりの高成長を記録しました。BOCは声明で、「最近の経済指標は予想以上に強く、カナダの成長がより広範かつ自律的になりつつあるとのBOCの見解を裏付けている」と指摘。消費支出が活発であり、雇用や所得の伸びも堅調との見方を示し、「予想を上回る経済活動を踏まえると、大規模な金融刺激策の一部解除が正当化されると判断した」と説明しました。

インフレについては、2%の目標を引き続き下回っているものの、おおむね7月の予想通りに進展していると分析。一時的要因によるマイナスの影響のはく落や、経済の緩みが吸収されるのと一致して、総合CPI(消費者物価指数)やBOCのコアインフレ指標はいずれも若干上昇したと指摘しました。

今後の金融政策に関しては、「あらかじめ決まっておらず、今後発表されるインフレ見通しに関する経済指標や金融市場動向に左右される」と強調。「高水準の家計債務を踏まえ、利上げに対する経済の感度を注視していく」との考えも示し、追加利上げの可能性に言及しませんでした。

ただし、BOCは声明でカナダ経済の力強さに繰り返し言及しており、追加利上げが行われる可能性はありそうです。一方で、利上げの影響を注視する姿勢を示したことで、今後の利上げには慎重になりそうです。

BOCの次回政策会合は10月25日。そこで利上げが決定されるかどうかの手掛かりとして、雇用統計など経済指標のほか、9月27日のBOCのポロズ総裁の講演に注目です。経済指標やポロズ総裁講演を受けて、市場でBOCの早期利上げ観測が高まれば。加ドルにとってプラス材料になりそうです。<八代>


【トルコリラ】 TCMBは金融政策の現状維持を決定か

TCMB(トルコ中銀)が9月14日に政策金利を発表します。その結果がトルコリラの動向に影響を与える可能性もあります。

TCMBは前回7月の会合で、事実上政策金利となっている“後期流動性貸出金利”を据え置いたものの、声明で「インフレ見通しが著しく改善するまで金融政策の引き締めスタンスを維持する」としたうえで、「必要に応じて一段の金融引き締めを行う」と表明。追加利上げに含みを持たせました。

9月14日の会合では、後期流動性貸出金利や3つの主要政策金利(1週間物レポ金利、翌日物貸出金利、翌日物借入金利)はすべて据え置かれそうです。

トルコの8月CPI(消費者物価指数)は前年比+10.68%と、7月の+9.79%から上昇率が加速しました。ただ、CPI上昇率が加速したといっても今のところ1か月のみです。また、トルコリラは対米ドルで前回7月の会合時から一段と上昇し、年初来の高値圏で推移しています。トルコリラ高がインフレ圧力を抑える可能性があります。8月のCPI上昇率の加速が一時的なものかどうか、TCMBは状況を見極めると考えられます。

一方で、4月以降のCPI上昇率の鈍化などを背景に、市場ではTCMBの次の一手は利下げとの見方も根強いものの、8月のCPIの結果をみると、現時点で利下げも難しいとみられます。

今回の焦点は、声明で追加利上げの可能性が示されるのか?になりそうです。追加利上げが示唆されればトルコリラにとってプラス材料になりそうです。一方で、利上げ打ち止め、あるいは利下げに転じる可能性が示された場合、トルコリラにとってマイナス材料と考えられます。<八代>


※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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