市場調査部レポート

2017/08/11 14:11夏休み中のリスクオフにご用心!

【相場環境】夏休み中のリスクオフにご用心!
【全体観・米ドル】やはり【8月】は“鬼門”の月?
【英ポンド】英ポンド/円、下押し基調が強まる可能性も
【豪ドル】北朝鮮情勢や主要国株価動向に注意が必要
【NZドル】RBNZ総裁らがNZドル高をけん制
【南アフリカランド】ズマ大統領続投、不信任案が僅差で否決


【相場環境】 夏休み中のリスクオフにご用心!   

北朝鮮と米国が威嚇の応酬を続けていることによって、市場では地政学リスクが強く意識されています。
市場のリスクオン/オフの指標であるVIX指数は、7月に90年代初めの指数算出開始以来の最低水準を更新しましたが、10日には大幅に上昇しました。
今年に入ってVIX指数が上昇した局面は4月中旬(フランス大統領選挙)、5月17日(トランプ大統領に更迭されたコミー前FBI長官のメモ公表)、6月29日(主要中銀の金融正常化の動き)がありますが、VIX指数の終値が16.0を上回ったのは大統領選挙の投票日だった昨年11月8日以来のことです。

気になるのは、2015年8月の中国人民元切り下げのケースです。後に「チャイナ・ショック(*)」と呼ばれましたが、人民元が切り下げられた8月11日と12日にはVIX指数はほとんど動きませんでした。「人民元切り下げ」⇒「(背景は)中国景気悪化」⇒「世界景気への懸念」から、まず新興国市場が反応。不安心理が主要市場に波及してVIX指数が上昇したのは8月20日になってからで、週末を挟んで24日には一時50を超える急上昇となりました。米ドル円もほぼ同じタイミングで下落し、24日には一時6円近く急落しました(24日をクライマックスとして、いったん落ち着きました)。

(*)同年6月をピークに中国上海株が急落したことを含めるのが一般的なようです。

もちろん、同様のことが起きると予想するわけではありません。ただ、ちょうど2年前、日本でいえばお盆休みを挟んでの展開だっただけに、用心するに越したことはないでしょう。

なお、「チャイナ・ショック」を受けた世界景気への懸念は尾を引き、2016年春にもVIX指数が30を超える背景要因となりました。

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来週は、米国の経済指標が多く発表されます。15日のNY連銀製造業景況指数(8月)と小売売上高(7月)17日のフィラ連銀製造業景況指数(8月)と鉱工業生産指数(7月)18日のミシガン大学消費者信頼感指数(8月)などです。景気は春先の一時的な減速を経て改善が期待される状況ですが、これらの指標である程度確認できるかどうか。

16日にFOMC議事録(7/25-26開催分)が公表されます。最近の関係者の発言はインフレの鈍化を懸念するものが増えているだけに、物価の見方を中心にどういった議論が展開されたか。バランスシート縮小に関する部分も気になるところです。

米国以外では、14日の日本のGDP(4-6月期)、15日のRBA議事録と英CPI(7月)17日の豪雇用統計(7月)など。なかでも、英CPIは6月に伸びがやや鈍化したこともあって利上げ機運が後退するキッカケになりました。再び利上げ機運を高める結果となるのか注目されます。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 やはり【8月】は“鬼門”の月?

やはり【8月】というのは、マーケットにとって“鬼門”の月なのでしょうか。

ここもと、米国と北朝鮮との間の緊張関係が激化し、マーケット全般においてリスクオフの動きが加速し、比較的安全資産とされる円が買われる展開となっています。

“曰(いわく)付き”の【8月】相場ということは、7/28号の『マンスリー・アウトルック』内でも記載した通りですが、海外ではバカンスシーズン、そして国内でもお盆休み・夏休みで市場参加者が閑散となる中、例年、8月半ばから後半にかけてのマーケットは荒れやすいというのが通説となっています。

【8月】相場の傾向・パターンについては、先の『マンスリー・アウトルック』とともに、8/4号の『ウィークリー・アウトルック』もご参考にしていただければ幸いです。

ちなみに、基本的な相場分析手法については、【8月】相場の傾向・パターンといった「アノマリー分析」以外に、主にチャート分析を中心とした「テクニカル分析」、そして経済や金融、政治状況などを加味した「ファンダメンタルズ分析」が有名ですが、その他では、惑星の動きや月の満ち欠けといった天体観測をベースとする「アストロロジー分析」(金融占星学)という手法も有名です。

この「アストロロジー分析」については、サイクルアナリストであるレイモンド・メリマン氏の分析が有名ですが、そこでは主に“メリマンサイクル”と呼ばれる、サイクル理論に基づくマーケットの重要変化日にフォーカスした内容が特に有名です。

その「アストロロジー分析」の中でも、特に重要とされるのが・・・水星逆行現象。その現象は、通常、年に3-4回確認でき、その中身は、地球上から水星を見た時に、軌道距離の関係から「逆行しているように見える」期間のことを指します。

その期間中は、コミュニケーションの齟齬や移動においてトラブルが発生しやすいと言われていますが、マーケットにおいては、「相場が荒れやすい」時期と定義されることが多く、足もとでは8/13から9/5までの期間がその水星逆行現象が確認できる期間となっています。

その傾向・パターンを確認する上で、今年(*)2回にかけてその現象が発生した時期の相場状況を米ドル/円相場を中心に振り返ってみると、1回目となる2016/12/19-2017/1/8の期間中には、その期間の直前にFRBが利上げを再開したことに伴う利益確定売り、また、11月の大統領選勝利からスタートした、いわゆる“トランプ・ラリー”の反動による下げ、そして、「1月相場」特有の下押し等もあり、米ドル/円の下落基調の起点となり得ています。(*スタートは2016年であるものの、終了日時を基準としています。)

また、2回目については、4/10-5/4までの期間となっており、当該期間中前半の材料は、主に北朝鮮のミサイル発射や核実験観測に伴う地政学的リスクの台頭や、4/23の第1回仏大統領選挙における極右・極左勢力の台頭懸念もあり、米ドル/円の下押し基調が加速する動きとなりました。

その後、地政学的リスクの一旦の収束や、仏大統領選挙における中道・マクロン氏の勝利に伴う、“リリーフ・ラリー”(“マクロン・ラリー”)もあり上昇する動きとなりました。つまり、当該期間中の米ドル/円は上下に大きく振れる展開となったことは記憶に新しいところかと思います。

1回目、2回目に共通するのが、当該期間中のメインテーマが「政治」「軍事」であったということ。となれば、13日からスタートする今年3回目の水星逆行現象期間中のメインテーマも、「政治」「軍事」となり得るのか否かに注目すべきでしょう。

当該期間中である8/15は北朝鮮にとって祖国解放記念日であるということ、また、当該期間後の9/9は同国の建国記念日であることを勘案すると、あくまで推測の域ながら、8/13-9/5の水星逆行現象が見られる期間中に中距離弾道ミサイルの発射や、核実験の実施、もしくは何らかの軍事的衝突がある可能性についても考慮すべきでしょう。以下、米ドル/円・日足チャート(2016/11/1-)と水星逆行現象(1回目、2回目)を重ねたチャートにつき、ご覧ください。

ただし、これらについては不確定要素があまりに多く、推論・推測の域となることもあり、巷間騒がれる「“Xデー”狂騒曲」に左右されるべきではないことも一言付け加えておきたいと思います。

上記については、あくまでアストロロジー分析のサイクル理論に基づく傾向・パターンであり、仮説であるということを十分認識していただくよう、くれぐれもお願いするとともに、不測の事態に対処するためのリスク管理を徹底していただくよう、くれぐれもお願いいたします。(※アストロロジー分析については、M2TV・FXマーケットスクウェア内の『アストロロジー分析と重要変化日について』(8/10)をご覧いただければ幸いです。)

閑話休題。以下、米ドル/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+52週MA+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記チャートにおいて、11日執筆時点の米ドル/円は、足もとの重要テクニカルラインと目されていた52週MA(52週移動平均線≒110.23円)を下回り、今年6月に付けた108円台を窺う展開となっています。

米ドル/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIでは、1) 21週MA(21週移動平均線)がやや右肩下がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足を下放れしつつあること、3) ローソク足が青い雲(=“買い”の雲)の下辺である先行2スパン付近にあること、そして、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していることから、週足レベルにおいても下押しの時間帯であることが分かります。

一方で、DMI(方向性指数)では、+DIと-DIが絡み合い、ADXが依然低い位置にある(上図青丸印)ことから、方向性自体は「弱い状態」であることを示唆しています。

これからの時間帯における重要テクニカルラインは2つ。青い雲の下辺である先行2スパン(≒109.00円)と-2σライン(≒108.60円)。

前者メルクマール[先行2スパン(≒109.00円)]については、ローソク足の刹那的な下抜けの可能性は十分あると見るべきでしょう。その一方で、仮に後者[-2σライン(≒108.60円)]メルクマールをローソク足が明確に下抜けブレークした場合(※)は、下降モメンタムがさらに強まる可能性もあるため、警戒すべき水準と捉えるべきでしょう。(※終値Bidレート基準) <チーフアナリスト 津田隆光>


【英ポンド】 英ポンド/円、下押し基調が強まる可能性も

以下、英ポンド/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記チャートのメルクマール(指標)を確認していくと、1) 21日MA(21日移動平均線)が下向きであること、2) 遅行スパンがローソク足を下抜けブレークしていること、3) ローソク足が青い雲の下辺(=先行2スパン)を下抜けブレークし、-2σラインを割り込んでいること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)が上方で点灯していること、そして、5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIの乖離がさらに拡大する動きとなっていること(上図青丸印)から、英ポンド/円は、下降トレンドが強まる状況であることが分かります。

先週の当レポートでも記載した通り、英ポンド/円・日足チャートの喫緊の重要ポイントであったボリンジャーバンド・-2σライン(≒144.16円)および先行2スパン(≒143.19円)を明確に下回ったことから、英ポンド/円のトレンドは、【レンジ相場主体】→【下降トレンド主体】へと変化したと捉えてよいでしょう。

足もとの英ポンド/円における下値メドは、6/12に付けた安値レベルである、138.65円。(上図赤三角印)

ボリンジャーバンド・±2σラインが、21日MAに対して拡張(エクスパンション)する動きとなっていることも加味すると、当面の英ポンド/円は下押しモメンタムが強まる可能性もありそうです。<津田>


【豪ドル】 北朝鮮情勢や主要国株価動向に注意が必要

豪ドルは今週、下落しました。対米ドルで0.78米ドル台、対円で85円台へと値を下げました。8月1日のRBA(豪中銀)による豪ドル高けん制に加え、今週に入り、北朝鮮情勢が緊迫化したことで、リスク回避の動きが強まり、豪ドルに下落圧力が加わりました。

北朝鮮情勢には、引き続き注意が必要です。また、米国など主要国の株価動向にも目を向ける必要がありそうです。米ダウ平均やナスダック総合指数、S&P500は10日、大幅安となりました。北朝鮮情勢の一段の緊迫化や株価の下落などによって、リスク回避の動きが強まる場合、豪ドルに下落圧力が加わる可能性があります。

来週(8月14日の週)の豪州の独自材料として、15日のRBA議事録(8月1日開催分)、16日の4-6月期賃金コスト指数、17日の7月雇用統計が挙げられます。RBA議事録では、豪ドル高についてどのような議論がなされたのかに注目。RBAは賃金の伸びの鈍さを繰り返し指摘してきました。そのため、雇用コスト指数の結果がRBAの今後の金融政策に影響を与える可能性があります。<シニアアナリスト 八代和也>


【NZドル】 RBNZ総裁らがNZドル高をけん制

RBNZ(NZ中銀)は8月10日、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定しました。据え置きは、5会合連続です。

市場では今回、RBNZがNZドル高をけん制し、2019年7-9月期に想定している利上げ時期を後ずれさせるとの見方がありました。

RBNZは声明で、NZドルについて「5月の声明以降、米ドルの軟化が一部要因となってTWI(貿易加重指数)が上昇した」と指摘。「貿易財インフレの上昇や、よりバランスの取れた成長を実現するために、NZドルの下落が必要だ」と強調しました。

RBNZのウィーラー総裁は政策会合後、「NZドルの下落を望む」と述べ、「RBNZには(為替)介入する能力があり、いつでも実施可能だ」と語りました。さらにその後、マクダーモット総裁補佐が「RBNZはNZドルの水準に対し、5月よりも若干不快感を覚えている」としたうえで、「市場は、最近のNZドル高に対するRBNZの不快感を認識すべきだ」と発言。NZドル高をけん制しました。

一方、金融政策報告における政策金利(OCR)見通しは、前回5月から変化なし。2019年4-6月期まで平均1.8%に維持された後、2019年7-9月期に平均1.9%へと上昇するとの見通しが示されました。RBNZの現在の政策金利は1.75%。OCR見通しをみると、RBNZは引き続き、今後2年間の政策金利据え置きを想定しているようです。

市場は、ウィーラー総裁らがNZドル高をけん制したことを材料視。ウィーラー総裁の発言以降、NZドルは対円や対米ドルで下落しました。

来週(8月14日の週)は、NZドル高けん制発言が引き続き材料視される可能性があります。その場合、NZドルは上値が重い展開になりそうです。北朝鮮情勢の一段の緊迫化や、主要国の株価下落などによって、リスク回避の動きが強まる場合、NZドルにはさらなる下押し圧力が加わる可能性があります。<八代>


【南アフリカランド】 ズマ大統領続投、不信任案が僅差で否決

8月8日に南アフリカのズマ大統領の不信任投票が実施され、賛成177、反対198(棄権9)となり、僅差で否決されました。それにより、ズマ大統領の続投が決まったものの、南アフリカランドが売られました。

ズマ大統領については、相次ぐ汚職疑惑により、批判が高まっていました。今年3月には、市場からの信頼が厚いゴーダン財務相を更迭し、ゴーダン氏を含めて10人の閣僚を交代する大幅な内閣改造を断行したことで、ランドが急落するなど市場の混乱を招くことがありました。

不信任案が否決されたことでランドが売られたのは、南アフリカの政局の不安定な状況は今後も続くと市場でみなされたためでしょう。今回の不信任投票の結果は、ランドにとってマイナス材料と考えられます。

一方で、不信任投票後に北朝鮮情勢が緊迫化したことで、市場の関心は北朝鮮情勢に向きました。そのため、不信任投票の結果はそれほど材料視されていない感があります。ただし、南アフリカの政局関連のニュースは突発的に出てくることも多く、注意は必要です。<八代>


※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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