市場調査部レポート

2017/07/14 14:48「中央銀行には逆らうな」=円売りがしばらく奏功?

【相場環境】今後の米金融政策のイメージ
【全体観・米ドル】「中央銀行には逆らうな」=円売りがしばらく奏功?
【英ポンド】英ポンド/円、18日CPIがその動意となりそう
【NZドル】18日のCPIに注目!!
【加ドル】BOCの利上げ観測を背景に、加ドルは堅調に推移か
【南アフリカランド】政策金利は据え置きか。総裁会見に注目!!


【相場環境】 今後の米金融政策のイメージ    

12-13日のイエレン米FRB議長の議会証言や、11日のブレイナード理事(=FOMCメンバー)の講演、その他の関係者の発言などから、年後半から来年にかけての米金融政策のイメージがある程度明確になってきました。
それは、バランスシートの縮小は比較的早期に、早ければ9月に発表して10月に開始(7月25-26日のFOMCで発表される可能性も否定できず)。その影響を見極めつつ、年内、おそらく12月の利上げの是非を検討する、というものでしょう。

鍵を握るのは、引き続き物価動向(の見通し)であり、それに影響を与えうる賃金動向でしょう。
物価上昇率は足元で鈍化しており、FRBの2%目標とのかい離が広がっています。FRBは、携帯通話料金の年初からの急落といった一時的要因が大きいとみています。FRBがその点を割り引いても「物価上昇率が目標に向かっている」と自信を持つにはまだしばらく時間がかかるかもしれません。

失業率は5月に4.4%まで低下しており、完全雇用が達成されています。にもかかわらず、賃金は伸び悩んでいます。12日に公表されたベージュブック(地区連銀経済報告)でも、「賃金は引き続き、わずか、または緩やかなペースで上昇した」と報告され、とくに変化はうかがえませんでした。

ただし、「低熟練、高熟練の双方のポストで賃金上昇圧力が高まっている」、「福利厚生のコストが上がっている」といった指摘はあり、複数の地区連銀が労働市場のひっ迫により人材確保が困難になっていると報告しました。比較的早い段階で賃金上昇率が高まるかもしれません。

13日時点で、FFレート(政策金利)先物が織り込む年内利上げの確率は54%です。そして、その次の利上げの確率が50%を超えるのは2018年12月以降です。ただし、物価や賃金上昇率が高まるようであれば、よりアグレッシブな利上げの期待によって、市場金利や米ドルに上昇圧力が加わる可能性があります。

イエレン議長の証言で一つ気になったのは、政策金利の中立水準(景気を刺激も抑制もしない水準)が過去に比べて相当低くなっており、そこに到達するために大幅な利上げは必要ないと述べたことです。今後も景気は過熱しない、したがって中立水準を超えた利上げは必要ないとなれば、仮に、年内に利上げが実施されても、そこで打ち止め感が台頭することで、米ドルの方向性が根本的に変わる可能性もあります。そうしたシナリオも頭の片隅に置いておく必要はあるかもしれません。

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来週は、日銀の金融政策決定会合(19-20日)ECB理事会(20日)が注目されます。

他の主要中銀が金融政策の正常化に向けて動き始めるなか、日銀は現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続しそうです。総裁会見などで、「出口戦略」に関するコメントが出てくるかどうか。同時に発表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」の内容にも注目でしょう。

ECB理事会でも、現状維持が決定されそうです。ただし、ECBは軸足を正常化方向に移しつつあるようです。QE(量的緩和)の縮小計画を9月の理事会で発表するとの見方が浮上しており、今回の理事会でそうした「兆候」が見られるか、興味深いところです。

経済指標では、英国のCPI6月分(18日)が重要かもしれません。6月のBOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)では5対3で現状維持が決定されましたが、反対した3人は即時利上げを主張しました。ブレグジットの潜在的な悪影響よりも足元のインフレ加速を懸念したためでした。CPIの結果は、8月3日のMPCの判断に大きな影響を及ぼすかもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 「中央銀行には逆らうな」=円売りがしばらく奏功?

6月後半にポルトガルで開催されたECBフォーラムでの各国中央銀行当局者の発言が起因となり、主要通貨の動きはそれぞれの中央銀行の政策スタンスに副った動きとなっていることは、先週分の当レポートでもお伝えした通りです。

現在の為替市場を大局的に見る上で、各国中央銀行の金融政策スタンスの相違を確認することは極めて重要で、裏を返せば、その政策スタンスに逆らうような投資行動は、相場の格言にある【中央銀行には逆らうな】【Don’t fight the FED.(FED※と喧嘩をするな)】の通り、“御法度”“禁忌(タブー)”と捉えた方がいいのかもしれません。(※FED:米国の中央銀行制度の総称のこと)

現状では、各国中央銀行による「金融政策正常化レース」が繰り広げられていると言ってもよく、その“レース”イメージを纏めてみると、今後の自身の投資行動における“指針”になるかもしれません。以下、各国中央銀行による「金融政策正常化レース」(以下「正常化レース」)のイメージ図をご覧ください。



あくまでイメージ図の解説ですが、上記「正常化レース」の先頭を走るのが米国(FRB)と言えます。その方針は「利上げ」と「B/S縮小」のペースとタイミングですが、足もとの米国におけるインフレ率の低迷もあり、今後の物価動向や賃金動向の改善が確認できるまでは、そのペースは鈍化(立ち止まり?)すると捉えて良いでしょう。

その先頭を走る米国を猛烈な勢いで追いかけているのがカナダ(BOC)。12日に約7年ぶりの利上げを行い、その後の声明文やポロズBOC総裁の記者会見での発言(※)を見ても、そのスピードや勢いは先頭グループのトップレベルと見てよさそうです。(※ポロズBOC総裁「今まで与えていたような景気刺激策は必要がないということが重要」[7/12記者会見])

非伝統的金融政策からの「出口」から一足飛びに金融引き締め(=利上げ)を模索する英国(BOE)や、来年の利上げ観測のある豪州(RBA)NZ(RBNZ)、そして猛烈な勢いで先頭グループを追いかけている欧州(ECB)は、まさにドラギECB総裁のニックネームである“スーパー・マリオ”のような追い上げ(※)と言えます。(※7/14 WSJ 「ECB総裁、9月に資産買い入れ策縮小を示唆か」)

そんな中、先週の七夕(7/7)に、5カ月ぶりに国債買い入れ増額と指値オペを実施し、依然として“非伝統的金融政策のトップランナー”であることを改めて明確にした日本(日銀)は、他の先進各国中央銀行が「正常化レース」を繰り広げる中、逆方向を向いてひた走っている状態と捉えてよさそうです。

上図で示した各国金融政策スタンスの方向性の違いを捉えると、やはりしばらくは【円キャリー・トレード】がワークするのではないでしょうか。その意味でも、次週19-20日に予定されている日銀金融政策決定会合において、改めてその旗幟(きし)が鮮明になれば、円売りフローの進展が加速する可能性もありそうです。

このような状況下、米ドル/円の今後の動きをチャート中心に見ていきたいと思います。以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートのメルクマール(指標)を確認していくと、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足の下方に青い雲(=“買い”の雲)があること、そして4) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている(上図赤丸印)ことから、米ドル/円の基本トレンドは上昇基調となっていることが分かります。

その一方で、パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、また、ボリンジャーバンド・±2σラインが21日MAに向かって収縮(スクイーズ)する動きを見せていること、そして、DMIにおいて+DIと-DIが接近していることから、その上昇トレンドのモメンタムが一時的に弱まりつつあることが確認できます。

米ドル/円の基本トレンドを見る上で重要なメルクマールである、「21日MAの方向性」「雲の色」「遅行スパンの位置」を総合すると、上昇トレンドであることに変化は見られないため、これからの時間帯において一時的な下押しフローが発生した場合には【押し目買い】で対応するのも一案と考えます。

足もとでは、本日(7/14)に予定されている米6月消費者物価指数(CPI)および同小売売上高の結果が米ドル/円の動意となりそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【英ポンド】英ポンド/円、18日CPIがその動意となりそう

早速ですが、以下、英ポンド/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートのメルクマール(指標)を確認していくと、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足の下方に青い雲(=“買い”の雲)があることから、英ポンド/円の基本トレンドは上昇基調となっていることが分かります。

その一方で、パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、また、DMIにおいて+DIと-DIが接近し収斂する動きとなっていること(上図赤丸印)から、上昇トレンドが一服し、その方向性を探る状態となっています。

英ポンド/円の基本トレンドを見る上で重要なメルクマールである、「21日MAの方向性」「雲の色」「遅行スパンの位置」を総合すると、米ドル/円同様、上昇トレンドであることに変化は見られないため、これからの時間帯において一時的な下押しフローが発生した場合には【押し目買い】で対応するのが得策と考えます。

先述した「正常化レース」では先頭グループの一員と想定することのできる英国ですが、英ポンド/円の方向性を確認するためには、次週18日(火)に予定されている英6月消費者物価指数(CPI)が、そのスピードの“追い風”になるのか、はたまた“向かい風”となるのか。

日本時間同日17時30分に予定されている同CPI結果が、足もとの英ポンド/円の動意となりそうです。<津田>


【NZドル】 18日のCPIに注目!!

7月18日、NZの4-6月期CPI(消費者物価指数)が発表されます。RBNZ(NZ中銀)はインフレ目標を採用しているため、CPIは金融政策運営に影響を与えます。そのため、NZドルにとって重要な経済指標です。

CPIは1-3月期に前年比+2.2%と、昨年10-12月期の+1.3%から上昇率が加速し、2011年7-9月期以来の強い伸びを記録。RBNZのインフレ目標(+1から3%)の中央値である+2%を5年半ぶりに超えました。

ただし、RBNZは、1-3月期のCPI上昇率の加速はガソリンや食料品の価格上昇が主な要因であり、それらの影響は一時的なものと分析。5月の金融政策報告では、想定される利上げ時期を2019年7-9月期と、今年2月時点の想定を据え置きました。

市場では、RBNZが来年前半にも利上げに転じるとの観測があります。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が7月13日時点で織り込む、RBNZが来年3月までに利上げを行う確率は48.2%。利上げの確率は5月までで59.6%、6月までで85.6%へと上昇します。

RBNZは5月の金融政策報告で、4-6月期のCPI上昇率は前年比+2.1%と、1-3月期から若干鈍化するとの見通しを示しました。18日に発表されるCPIがRBNZの見通しに反して上昇率が加速すれば、市場では早期の利上げ観測が改めて浮上する可能性があります。その場合、NZドルにとってプラス材料と考えられます。<シニアアナリスト 八代和也>


出所:Bloombergより作成


【加ドル】 BOCの利上げ観測を背景に、加ドルは堅調に推移か

BOC(カナダ中銀)は7月12日の会合で、2010年9月以来、6年10か月ぶりの利上げを決定。政策金利を0.25%引き上げました(0.50%→0.75%へ)。

BOCは声明の冒頭で、「最近のデータによって、潜在成長力を上回る成長や経済における余剰能力の吸収に関する見通しへの自信が強まった」と、利上げの理由を説明しました。

インフレについては、「最近の弱さを認識しているが、それは一時的なものと判断した」とし、現時点でインフレの弱さはそれほど懸念していないことを示しました。カナダの5月CPI(消費者物価指数)は前年比+1.3%と、BOCのインフレ目標の中央値である+2%を下回りました。

声明では、カナダ経済について強気な見方が示されました。個人消費が原動力になって堅調に推移しており、経済における余剰能力がかなり解消されたと指摘。1-3月期の非常に強い成長は今年残りの期間に減速するものの、引き続き潜在成長力を上回るとの見通しを示しました。

また、BOCはカナダのGDP成長率見通しを4月時点から上方修正(下記参照)。需給ギャップが解消される見通しも2017年末頃と、4月時点の2018年上半期よりも早めました。

<GDP成長率見通し>
 ・2017年:+2.8%(4月時点:+2.6%)
 ・2018年:+2.0%(同:+1.9%)

金融政策については、「現時点での見通しは、金融刺激策の一部解除を正当化する」としつつも、「政策金利の将来の調整は、今後発表されるインフレ見通しに関する指標次第」と強調。先行きの不透明感や金融システムの脆弱性も引き続き考慮するとしました。

声明では、追加利上げが明確に示されませんでした。ただし、カナダ経済に関する見方や、BOCのポロズ総裁の発言(*)を踏まえると、BOCは政策金利をまずは2015年の利下げ前の水準に戻すと見られます。BOCは2015年に2回(0.25%×2)の利下げを行ったことから、少なくともあと1回は利上げを行うと考えることができます。(*)ポロズ総裁は6月27日に「2015年の利下げはその役割を終えた」と語りました。

6月半ば以降の加ドルの上昇は、7月の利上げ観測が原動力でした。市場では、BOCは10月にも追加利上げに踏み切るとの観測が浮上。OIS(翌日物金利スワップ)が7月13日時点で織り込む、BOCが次回9月の会合で利上げを行う確率は30.1%。利上げの確率は10月までで58.9%、12月までで69.4%へと上昇します。追加利上げ観測に支えられて、加ドルは引き続き堅調に推移しそうです。<八代>


【南アフリカランド】 政策金利は据え置きか。総裁会見に注目!!

7月20日、SARB(南アフリカ中銀)が政策金利を発表します。

SARBは前回5月25日の会合で政策金利を7.00%に据え置きました。南アフリカ経済がリセッション(景気後退)に陥る一方、SARBはインフレ圧力が再び強まることを懸念しているため、政策金利は今回も据え置かれる可能性が高いと見られます。

SARBの今後の金融政策の手掛かりとして、会合後に行われるクガニャゴ総裁の会見に注目です。会見では、6人の政策メンバーの主張(「据え置き」「利下げ」「利上げ」)のほか、インフレや政策金利についてどのような見解が示されるのか?が焦点になりそうです。

前回5月の会合時は、以下の内容でした。
 ・6名の政策メンバーのうち、5名が据え置き、1名が0.25%の利下げを主張
 ・インフレ見通しへのリスクはおおむね均衡している
 ・政策金利は現時点で適切
 ・CPI上昇率が持続的に目標範囲内に収まるならば利下げは可能

市場では、SARBの次の一手は「利下げ」との観測があります。クガニャゴ総裁の会見で、SARBが近い将来に利下げに動く可能性が示されれば、南アフリカランドが下落する可能性があります。一方、そうでなければ、ランドは上昇しそうです<八代>


出所:Bloombergより作成




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