市場調査部レポート

2017/06/16 13:50米ドル/円、3つのテクニカルシナリオ

【相場環境】主要中銀の金融政策に改めて注目!
【全体観・米ドル】米ドル/円、3つのテクニカルシナリオ
【ユーロ】ユーロ/米ドル、下押しが強まる可能性も?
【ポンド】英ポンド/円、3つの重要テクニカルラインに要注目
【NZドル】RBNZが22日に政策金利を発表、焦点は声明か
【加ドル】BOCの早期利上げ観測が浮上!!
【トルコリラ】TCMBは政策金利を据え置く一方、追加利上げに含み


【相場環境】 主要中銀の金融政策に改めて注目!

米英の政局は引き続き流動的!?
米国では、先週のコミー前FBI長官に続いて、今週13日、セッションズ司法長官が上院情報特別委員会で証言しました。セッションズ長官は、大統領選挙戦中のロシアとの共謀を強く否定。また、コミー前長官の解任についてトランプ大統領と協議したかどうかについて、大統領との「内密」の会話を公にするつもりはないとして証言を拒否しました。

セッションズ証言は、コミー証言を裏付けるものではありませんでしたが、大統領による司法妨害の可能性を否定するものでもありませんでした。14日には、モラー特別検察官がトランプ大統領による司法妨害の可能性を捜査中との報道もありました。ワシントンで「ロシアゲート」の追及が続く間は、減税やインフラ投資といったトランプノミクスの実現が遠のくかもしれません。

なお、税収の遅れにより、9月にもデットシーリング(債務上限)の引き上げが必要になりそうです。それが議会での予算審議に影響を与えるかもしれません。

英国では8日の総選挙で与党保守党が過半数割れとなりました。保守党は、少政党である民主統一党(DUP)の閣外協力を取り付けて政権を維持する方向です。ただし、メイ首相が留任するとしても政治的弱体化は避けられない見通しで、19日にスタートするEUとの離脱交渉にも影響が出てきそうです。

メイ首相は、単一市場から離脱する代わりに移民制限の自由を得るハード・ブレグジットを主張、「悪い合意より合意がない方が良い」との強気の姿勢を示してきました。しかし、幅広い支持を得るためにソフト・ブレグジット(移民問題で譲歩する代わりに単一市場に残留する)に舵を切る可能性もあります。経済面に限れば、ハード・ブレグジットよりソフト・ブレグジットの方が、英国が受ける悪影響は小さいかもしれません。

英国とEUとの離脱交渉は来週19日にもキックオフされる予定ですが、英政府の姿勢がブレれば交渉が一段と難航・長期化する可能性もありそうです。

主要国の金融政策に変化も!?
13-14日の米FOMCでは、利上げが決定されました。同時に発表されたFOMC参加者16人の政策金利見通しでは、4人が年内据え置き、8人が年内あと1回利上げ、4人が年内あと2回利上げを想定していました(あくまで参加者の個人的見解)。また、保有債券の残高(≒バランスシート)を縮小させる方法について具体的な方法も発表されました。総じて、市場は「タカ派的」と受け止めたようです。

もっとも、FRBが金融政策の正常化(=利上げ+バランスシート縮小)を進めるためには、足元の景気の減速や物価の鈍化が一時的だと確認される必要があるでしょう。また、上述した「ロシアゲート」の行方や高値更新を続ける株価動向も金融政策に影響を与える可能性があり、注意が必要でしょう。

15日、BOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)は、金融政策の現状維持を決定しました。ただ、決定は5対3の僅差で、3人の委員が即時利上げを主張しました(前回5月のMPCで利上げを主張したのは1人のみ)。利上げ派が懸念したのは、足元の物価が2%の目標を大きく上回っていること、失業率の低下が続いていることなどです。

一方で、個人消費や賃金は伸び悩んでいます。また、ブレグジット(の交渉)が英経済にどのような影響を与えるかを注視する必要もあるでしょう。ただ、政策金利は昨年8月以降、史上最低の0.25%に据え置かれているので、「微調整」程度の利上げの可能性はあり、英ポンドの下支え要因になるかもしれません。

16日の日銀の金融政策決定会合では、現状維持が決定されました。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みに変更はなく、長期金利の目標「0%近辺」、一部当座預金金利の「マイナス0.1%」、長期国債購入のメド「80兆円」も従来通りでした。今後、日銀が出口戦略についてどのように説明するか、注目されます(本稿執筆は総裁会見前)。

先週8日のECB理事会では、金融政策の現状維持が決定されたものの、先行きを示すフォワードガイダンスから利下げの可能性が排除されました。ECB内部では、QE(量的緩和)の縮小や停止を求める声も強く、「金融緩和がなお必要」と語るドラギ総裁がどこまでそうした要求に抵抗できるか、やや不透明になってきました。

また、今週に入って、BOC(カナダ中銀)のポロズ総裁とウィルキンス副総裁が相次いで利上げの可能性を示唆したことで、市場は年内利上げをかなりの確率で織り込み始めています

主要国の中央銀行は総じて、リーマン・ショック以降の強い金融緩和策からの「出口」に向かいつつあるようにもみえます。ただ、その進捗度にはかなりの差があり、それらがスムーズにいくのか、それとも方針変更を迫られるのか、まだまだ不透明です。今後の金融政策(に対する市場の見方の変化)が為替相場に影響を与える局面が散見されそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、3つのテクニカルシナリオ

13-14日の米FOMCを終え、当座のビッグイベントを通過した感のある米ドル/円ですが、引き続き足もとの重要テクニカルラインは・・・52週移動平均線(52週MA)と言えそうです。

以下、米ドル/円・週足・21週ボリンジャーバンド+52週移動平均線+DMIをご覧ください。


 
上記チャートより、1) 21週移動平均線(21週MA)がやや右肩下がりであること、2) 各ボリンジャーバンドが21週MAに対して概ねパラレルに推移していること、そして3) DMI(方向性指数)において、+DIと-DIが絡み合う形状となり、またADXが右肩下がりとなっている(上図青丸印)ことから、米ドル/円は横ばい基調(レンジ相場)を形成しながら、方向性を探る段階であると言えそうです。

足もとの重要テクニカルポイントは、先述した通り52週MA(≒108.88円)。(上図赤三角印)

4月後半より、この52週MAと21週ボリンジャーバンド・-2σラインがほぼ同位置での推移となっており、テクニカル的な重要度がさらに高まっていると想定することができます。(6/16時点-2σ≒108.67円)

現状、この2つの重要テクニカルライン(=52週MAと-2σライン)がローソク足のサポートラインとなっており、当面は当該ラインが米ドル/円の下値サポートになり得そうです。

これからの時間帯におけるポイントは、DMIの動向。ローソク足とシグマラインの関係と合わせ、以下、そのシナリオにつきご確認ください。

<米ドル/円、3つのテクニカルシナリオ>

1. 今後、DMIにおいて+DI>-DIとなり、その乖離が広がり、またADXが右肩上がりに推移した場合は、上昇トレンドが加速し、+1σライン(≒113.56円)近辺まで上昇する可能性も。

2. 今後、DMIにおいて-DI>+DIとなり、その乖離が広がり、またADXが右肩上がりに推移した場合は、再度52週MAおよび-2σライン近辺への接近となる下押し基調となりそう。仮に、ローソク足が終値レベルで52週MAおよび-2σライン(≒108.80円)を明確に下抜けブレークした場合は、下降トレンドの勢いが強まる可能性も。

3. 引き続き、DMIにおいて+DIと-DIが絡み合う状態が継続し、かつADXが右肩下がりとなった場合は、52週MA≒-2σラインから21週MAラインの間のゾーンである108.80-112.00円を主体とするレンジワークが継続する可能性も。

上記1-3のシナリオをご参考に、52週MAと-2σライン、そしてDMIの動向に注目してみてはいかがでしょうか。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、下押しが強まる可能性も?

早速ですが、以下、ユーロ/米ドル・日足・21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上記チャートより、1) 21日MA(21日移動平均線)が横向きとなっていること、2) 各ボリンジャーバンドが21日MAに向けて収縮(スクイーズ)していること、そして3) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していることから、トレンド転換(上昇→横ばい→下降?) or トレンド加速(上昇→横ばい→さらなる上昇?) に向けて力を溜め込んでいる状態と見ることもできます。

相場の方向性を示すDMI(方向性指数)では、-DI>+DIとなっており(上図青丸印)、今後その乖離がさらに拡大し、またADXが右肩上がりに推移し始めた場合は、マイナスの方向性、つまり下降トレンドが加速する可能性も。

喫緊の注目すべきテクニカルポイントは、-2σライン(≒1.1136ドル)。(上図青三角印)

これからの時間帯において、DMIが上記シグナルを示現し、かつローソク足が-2σライン(≒1.1136ドル)を明確に下抜けブレークした場合は、短期的な下押しが強まる可能性も視野に入れておくべきでしょう。<津田>


【ポンド】 英ポンド/円、3つの重要テクニカルラインに要注目

15日に開かれたMPC(英金融政策委員会)において、政策金利は現状維持となったものの、3人の委員が即時利上げを主張したこともあり、英ポンド/円が短期的に反発しています。ここもと、英ポンド/円は底打ちとなったのでしょうか。それを検証する上で、以下、英ポンド/円のテクニカルチャートを見ていきたいと思います。以下、英ポンド/円・日足・一目均衡表+200日移動平均線(200日MA)+DMIをご確認ください。

上記一目均衡表では、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の中にあること、2) 遅行スパンがローソク足の下方に位置していること、そして3) 転換線が基準線の下方に位置していることから、やや変則的な【三役逆転】となっており、依然として弱気トレンドを示唆しています。

また、相場の方向性を示すDMI(方向性指数)では、-DI>+DIとなっており(上図青丸印)、方向性はマイナス優位、つまり上方硬直性相場が続くことを示唆しています。

一方で、相場の大きな方向性を確認する上で、200日移動平均線(200日MA)とローソク足との関係を見てみると、ローソク足が一時的に同線を下抜けたものの、概ねサポートラインとして機能していることが見て取れます。

これからの時間帯における英ポンド/円の重要テクニカルラインは以下3つ。

1. 200日MA(≒138.95円)
2. 先行2スパン(=“雲”の下辺≒141.80円)
3. 基準線(≒142.86円)

当面の英ポンド/円は、138.95-142.86円の間のゾーンを中心としたレンジワークが続くことを考慮した方がよさそうです。<津田>


【NZドル】 RBNZが22日に政策金利を発表、焦点は声明か

RBNZ(NZ中銀)が6月22日に政策金利を発表します。RBNZは前回5月11日の会合で政策金利を過去最低の1.75%に据え置く一方、声明や金融政策報告で政策金利を長期間据え置くことを示唆しました。

前回会合以降、NZを取り巻く環境に大きな変化はみられず、NZの4-6月期CPI(消費者物価指数)が来月(7月)に発表されます。それらを踏まえると、RBNZは6月の会合で政策金利を据え置く可能性が大です。焦点は、声明で先行きの金融政策について新たな材料が提供されるのかどうかになりそうです(今回、金融政策報告は公表されず、ウィーラー総裁の会見もなし)。その点で、声明におけるインフレや住宅市場の動向、NZドル、金融政策に関する文言に注目です。

前回の声明は、以下の通りでした。
・「総合インフレ率は、中期的に目標レンジの中央値になる」
・「とりわけオークランドで住宅価格のインフレが一段と緩やかになっている」、「住宅価格のインフレは鈍化傾向が続く」、「需給の継続的な不均衡を考慮すると、(住宅価格の)上昇が再び加速するリスクがある」
・「NZドルの下落が持続すれば、貿易財部門の成長見通しのリバランスに役立つだろう」
・「金融政策はかなりの期間、緩和的になる」、「依然として多くの不確実性が残っており、それに応じて政策の調整が必要になる可能性がある」

市場ではRBNZが来年初めにも利上げに転じるとの観測が根強くあります。RBNZの声明を受けて、金融政策に対する市場の見方が変化すれば、NZドルが反応する可能性があります。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が6月15日時点で織り込む、RBNZが年内に利上げを行う確率は10.3%。利上げの確率は来年3月までで34.1%へと上昇します。<シニアアナリスト 八代和也>


【加ドル】 BOCの早期利上げ観測が浮上!!

BOC(カナダ中銀)当局者が今週、BOCが近い将来に利上げに動く可能性があることを示しました

ウィルキンス上級副総裁が12日、「BOCは最近の景気動向に勇気づけられている」と述べ、「経済成長が持続する中で、かなりの金融刺激策が必要かどうかを点検する」と語りました。ポロズ総裁は13日、カナダ経済は勢いを強めつつあり、しかも特定の分野ではなく広範囲にわたっていると分析。政策金利は異常に低い状態が続いていると指摘し、2年半前に起きた原油価格下落によるショックを相殺するために金利は低いと説明。そのうえで、「2015年に実施した利下げは役割をほぼ果たした」と述べました。

BOCは、原油安による経済見通しの悪化を理由に2015年1月と7月にそれぞれ0.25%の利下げを実施した後、政策金利を0.50%に据え置き続けています。

カナダ経済は、堅調に推移しています。アルバータ州で発生した大規模な森林火災の影響で昨年4-6月期にマイナス成長(前期比年率換算-1.4%)に落ち込んだものの、その後回復。7-9月期に前期比年率換算+4.1%、10-12月期に+2.7%、今年1-3月期に+3.7%と、3四半期連続でプラス成長を達成しました。

原油価格が下落基調を強めなければ、ポロズ総裁らの発言をみる限り、BOCは近い将来に利上げに踏み切る可能性がありそうです。仮に利上げが行われた場合、2010年9月以来となります。

ポロズ総裁やウィルキンス上級副総裁の発言を受けて、市場ではBOCの早期利上げ観測が浮上。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が6月15日時点で織り込む、BOCが次回7月12日の会合で利上げを行う確率は40.6%(据え置き59.4%)です。加ドルは原油など資源価格の影響を受けやすい特徴があり、資源価格の動向にも目を向ける必要があるものの、利上げ観測が加ドルを下支えすると考えられます。<八代>


【トルコリラ】 TCMBは政策金利を据え置く一方、追加利上げに含み

TCMB(トルコ中銀)は6月15日の会合で、3つの政策金利(1週間物レポ金利、翌日物貸出金利、翌日物借入金利)をすべて据え置くことを決定。1月半ば以降、事実上の政策金利となっている後期流動性貸出金利も12.25%に据え置きました。TCMBは前回まで3回連続で後期流動性貸出金利を引き上げたものの、いったん休止しました。

TCMBは声明で、政策金利を据え置いた理由を「最近のコスト要因の改善や食品価格の一部調整見通しがディスインフレに寄与するとはいえ、現在の高いインフレ率は価格設定行動にリスクをもたらす」ためと説明しました。

トルコの5月CPI(消費者物価指数)は前年比+11.72%でした。2008年10月以来の強い伸びを記録した4月の+11.87%から上昇率が若干鈍化したものの、TCMBのインフレ目標(+5%、その±2%が許容範囲)を大きく上回りました。一方で、トルコリラは対米ドルで足もと反発傾向にあります。インフレ圧力を強める一因であるトルコリラ安が一服したことで、TCMBは政策金利を据え置く余地が生まれたと考えられます。

 
*日足終値
出所:Bloombergより作成

TCMBは一方で、「物価安定の目標のために利用可能なすべての手段を使う」と表明し、「インフレ見通しが著しく改善されるまで、金融政策の引き締めスタンスを維持する」と強調。「インフレ期待や企業の価格設定行動、そしてインフレに影響を及ぼすその他の要因を注視し、必要に応じて一段の金融引き締めを行う」とし、追加利上げに含みを残しました。

TCMBの今回の決定は、市場予想通りだったため、トルコリラに大きな反応は見られませんでした。TCMBの政策金利発表が終わり、トルコリラ側の独自材料が目先乏しい感があります。トルコリラ/円は約1か月半にわたって、おおむね90日移動平均線(MA)と200日MAの間で上下動を繰り返してきました。その動きがしばらく続く可能性があります。<八代>

トルコリラ/円(日足、2017/1/30-)

出所:M2JFXチャート




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