市場調査部レポート

2017/05/19 11:35ロシアゲート疑惑、5.24が“Xデー”に?

【相場環境】5月23日発表、米予算案の注目点
【全体観・米ドル】ロシアゲート疑惑、5.24が“Xデー”に?
【ポンド】英ポンド/円、打診買い方針を継続
【豪ドル】雇用統計は良好、鉄鉱石価格の動向に引き続き注意
【NZドル】強弱材料が混在
【南アフリカランド】25日のSARB政策金利発表に注目


【相場環境】 5月23日発表、米予算案の注目点

トランプ政権とロシアとの不適切な関係、いわゆる「ロシアゲート」疑惑は、トランプ大統領の弾劾説まで浮上するほど、ワシントンで大騒ぎとなっているようです。

「ロシアゲート」がどう展開するか、トランプ大統領は弾劾されるか、その場合の市場の反応はどうか、など非常に不透明な状況であり、事態を見守るしかないのかもしれません。

税制改革やインフラ投資など、トランプノミクス(大統領の経済政策)の実現性にも疑問が強まるなか、23日に2018年度予算案の詳細が発表されます。注目点は以下の通りです。

まず、財政収支の見通しです。一部報道によれば、予算教書は10年以内の財政均衡化(=赤字解消)を見込んでいるようです。ただし、それは主に「バラ色の経済見通し」を前提とした自然増収に依存するものとなりそうです。また、ペンス副大統領は4月末のインタビューで、「(税制改革が実現すれば)財政赤字は当初増加する可能性がある」とも語っています。
債券市場が財政赤字を懸念すれば、市場金利上昇(=国債価格下落)の反応となりそうです。そして、財政収支の悪化は、中長期的には米ドルにとってマイナスですが、短期的には市場金利上昇が好感されるかもしれません。

次に税制改革の詳細と財源です。減税は、所得税や法人税、資産税など多岐に及んでいます。すでに、3月の概要発表時点である程度明らかにされていますが、それらの詳細な内容によっては市場、とりわけ株式市場が反応しそうです。また、財源として、上述のように自然増収に依存するのであれば、「バラ色の経済見通し」が疑問視されることで、減税の実現性そのものが危うくなるかもしれません。

最後に、歳出削減をどうするか。3月の概要では、国務省や環境保護庁など30%超の大幅な予算カットを求められた省庁もあります。3月の概要では触れられなかった給付金の削減も盛り込まれるようです。また、5月の2017年度包括予算で見送られたメキシコ国境の「壁」の建設費を盛り込むとすれば、その他の支出は一層の削減を求められそうです。いずれにせよ、議会からは民主党を中心に強い反発が出そうです。

*なお、トランプ大統領が弾劾される可能性については、以下のスポットコメントをご参照ください。
4月11日「トランプ大統領が辞任する可能性はあるか」
5月18日「トランプ大統領の弾劾はあるか」

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来週は、国際的なイベントが盛りだくさんです。まず、20日からトランプ大統領が中東・欧州を歴訪します。米国内で「ロシアゲート」の騒ぎが広がるなか、トランプ大統領は各国首脳と何を話し、どう交渉するのか、大いに注目されるところです。各国との通商関係や安全保障(の負担)、テロなどが議題となりそうです。主なスケジュールは以下の通り。

20日 サウジアラビアのサルマン国王と会談
21日 中東湾岸諸国の首脳とのサミット
22日 イスラエル訪問?
23日 イタリア訪問(マッタレッラ大統領、ジェンティローニ首相と会談)
24日 フランシスコ・ローマ法王と会談(バチカン)
25日 NATOサミット参加(ブリュッセル)
26-27日 G7サミット(タオルミーナ、イタリア)

22日、ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)がギリシャ支援について討議します。ギリシャ議会が18日に財政緊縮法案を可決したので、救済融資の実行が承認されそうです。

25日、NATO(北大西洋条約機構)サミット。トランプ大統領が出席、ドイツなど加盟国に対して安全保障の負担増大を求める可能性があります。エルドアン大統領が独裁性を強めるなか、加盟国であるトルコに対する各国の反応も興味深いかもしれません。

25日、OPEC(石油輸出国機構)総会。OPEC加盟国と非OPEC加盟国による減産協調を今年前半から来年4月まで延長する方向で新たに合意できるかどうかが原油価格に影響しそうです。

26-27日、G7サミット(タオルミーナ、イタリア)。トランプ大統領、メイ英首相、マクロン仏大統領など新しいメンバーも加わっての会合。経済成長、自由貿易、安全保障、対テロなどが主要議題となりそうです。

経済指標は希薄ですが、24日の米FOMC議事録(5/2-3開催分)には要注目です。景気・物価の判断や今後の利上げペース、トランプ減税の影響などについて、どのような議論があったか。バランスシート縮小(保有債券の再投資の停止)についての議論も興味深いところです。 <チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 ロシアゲート疑惑、5.24が“Xデー”に?

【相場環境】にも記載されている通り、昨今、トランプ大統領を取り巻く状況が大いに喧しくなってきました。そんな中、次週5月24日は、トランプ大統領にとって本格的な茨(いばら)の道の起点になる可能性も。

そのきっかけとなり得たのが、5月9日に突如発表されたトランプ大統領による米連邦捜査局(以下、FBI)・コミー長官電撃解任のニュース。

その解任理由について当初ホワイトハウスは、「司法長官、副長官の勧告に従った決定」とし、「大統領選挙において戦ったヒラリー氏のメール問題に関する捜査終了の不手際」を理由に挙げ、大統領主導ではなく、あくまでも司法省の勧告に応じただけというスタンスを取っていました。

しかしながら、時を置かずしてトランプ大統領自身が米TV番組において、「勧告に関係なく、元々解任する考えだった。」との、ホワイトハウスの当初の説明とは矛盾する説明を行ったことで、あらゆる方面で灰神楽が立つような状況となったことはニュース等で紹介されている通りです。

具体的な解任理由については未だ謎ですが、以下の時系列経緯やその背景を見ていくと、その“謎”が解けてくるのではないでしょうか。

<時系列経緯>(報道日時も含む)
1月27日 ホワイトハウスにてトランプ大統領とコミーFBI長官※との夕食会で、トランプ大統領がコミー長官に対して忠誠を誓うことを求めたものの、コミー長官が拒否。(※当時の役職。以下同じ。)

4月 コミーFBI長官が上院公聴会において、大統領選挙期間中にトランプ陣営の幹部らがロシアと接触していた疑惑について、「(FBIが)捜査している」との衝撃的な証言を行う。同時に、ロシアによる米大統領選挙関与疑惑を巡る捜査の拡大を司法省に要請。

5月9日 トランプ大統領、コミーFBI長官を突如解任。

5月10日 ホワイトハウスでトランプ大統領と会談したロシア・ラブロフ外相に対し、イスラエルからの機密情報を漏洩したとの報道。

5月11日 トランプ大統領がコミーFBI長官に対し、自身が捜査対象かどうかを再三にわたって確認していたとの報道。

5月16日 トランプ大統領がコミーFBI長官に対し、先に辞任したフリン大統領補佐官に対する捜査を中止するよう要請したとの報道。

これら一連の流れ(報道ベースも含めて)がすべて事実であると仮定すれば、自身や政権スタッフのロシア・コネクションに関する証拠隠滅や司法妨害をしていたこととなり、それに応じないコミーFBI長官をトランプ大統領の一存で更迭したであろうことは想像に難くありません。

これら一連の「ロシアゲート」疑惑の真相究明を図ることを目的に、下院監視・政府改革委員会は、トランプ大統領とコミーFBI長官のやり取りに関連した資料すべてを5月24日までに提出するようFBIに要請し、同日にコミーFBI長官を招き、公聴会を開催することが決定しています。

これら一連の動きに対して「史上最大の魔女狩り」と批判しているトランプ大統領ですが、45年前のウォーターゲート事件(1972年)で追い詰められ、その後辞任したニクソン元大統領と重ね合わせる向きも多くなっています。

「逆境は人間を強くする」「決してあきらめず、戦い続ければ状況は必ず好転する」とのポジティブ発言をし、“鋼のハート”を持ち合わせているトランプ大統領ですが、次週24日に予定されているコミー長官の公聴会以降も強気発言が続くのでしょうか。いずれにしても、次週24日の公聴会からは目が離せません。

「ロシアゲート」疑惑が広がる中、期待感先行で推移していた米ドル/円の動きにもやや変化が見られます。以下、米ドル/円・日足チャート+200日移動平均線(200日MA)+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



上記チャートにおいて、足もとの重要テクニカルポイントは、4月17日時安値(108.13円、上図A)と5月11日時高値(114.33円、上図B)を結んだフィボナッチ・61.8%ライン(上図赤三角印)である110.50円

相場の方向性を示すDMI(方向性指数)において、19日時点では-DI>+DIとなっており(上図青丸印)、日足チャートのトレンドは下方優位となっていることから、仮にフィボナッチ・61.8%ライン(≒110.50円)を明確に下抜けブレークした場合は、200日MAである109.69円レベルまでの下押しを考慮すべきでしょう。

 ただし、19日時点における200日MAの方向性は上向きであること、そして、ローソク足が200日MAの上方にあることを勘案すると、足もとにおける米ドル/円の当該MA(≒109.69円)までの下押しは、打診買い方針でいいのかもしれません。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ポンド】 英ポンド/円、打診買い方針を継続

以下、英ポンド/円・日足チャート+200日移動平均線(200日MA)+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



上記チャートにおいて、足もとの重要テクニカルポイントは、4月17日時安値(135.55円、上図A)と5月10日時高値(148.05円、上図B)を結んだフィボナッチ・38.2%ライン(上図赤三角印)である143.28円

相場の方向性を示すDMI(方向性指数)において、19日時点では-DI>+DIとなっており(上図青丸印)、日足チャートのトレンドは、米ドル/円同様下方優位となっていることから、仮にフィボナッチ・38.2%ライン(≒143.28円)を明確に下抜けブレークした場合は、同・50.0%ライン(=半値押し)水準である141.80円レベルまでの下押しを考慮すべきでしょう。

 ただし、これも米ドル/円同様、19日時点における200日MAの方向性は上向きであること、そして、ローソク足が200日MAの上方にあることを勘案すると、足もとにおける英ポンド/円の下押しは、打診買い方針を継続すべきと考えます。<津田>


【豪ドル】 雇用統計は良好、鉄鉱石価格の動向に引き続き注意

<RBA議事録>
RBA(豪中銀)議事録が5月16日に公表されました。政策金利の1.50%据え置きを決定した5月2日の政策会合の議事録です。

議事録では、RBAの先行きの金融政策は労働市場や住宅市場の動向が鍵を握ることが改めて示唆されました。

政策メンバーは、労働市場について、「失業率はここ数か月間で5.9%へと若干上昇したが、予測期間中に徐々に低下する」と分析。過去数年間にわたる高水準の不完全雇用を踏まえると、余剰生産能力の程度を測るうえでかなりの不確実性があるものの、労働市場には余剰生産能力は残るとの見方を示しました。一方で、労働需要の先行指標は雇用の伸びが幾分加速することを示唆しており、「労働市場の状況が改善し、鉱業投資の低迷や交易条件の調整が終わるとともに、賃金の伸びは徐々に高まると予想される」としました。

住宅市場については、「住宅与信の伸びが家計所得の伸びを上回っており、家計のバランスシートに関連するリスクが高まっていることを示唆している」と指摘。住宅市場のリスクを緩和するために講じられた融資規制の厳格化などの措置や、最近の住宅ローン金利上昇の影響を評価するにはしばらく時間がかかるとの見方を示しました。

議事録では、「労働市場や住宅市場の動向を引き続き、注意深く監視する必要がある」と表明。そのうえで、「入手可能な情報を考慮すると、理事会は現在の緩和的な金融政策スタンスを維持することが、持続可能な経済成長およびインフレ目標の達成と一致していると判断した」としました。

<4月雇用統計>
豪州の4月雇用統計が5月18日に発表されました。雇用者数が前月比3.74万人増、失業率が5.7%。雇用者数は、2015年10月以来の大幅増となった3月から伸びが鈍化したものの、7カ月連続でプラス。失業率は3月の5.9%から改善しました。

雇用者数の内訳をみると、パートタイムが4.90万人増加した一方、フルタイムが1.16万人減少しました。ただし、3月のフルタイム雇用者は、1987年12月以来の大幅増でした。今回(4月)はその反動と考えることもできます。今回の雇用統計は、おおむね良好な結果と考えられます。利下げが必要な状況ではなさそうです。一方で、RBAが利上げを検討し始めるには、失業率の低下に加えて、フルタイム労働者の安定した増加や賃金の上昇が必要とみられます。政策金利は当面、現行の1.50%に据え置かれる可能性が高いと考えられます。

<鉄鉱石価格に注意>
豪州の主力輸出品である鉄鉱石の価格が軟調です。中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)価格 は、1トン=95ドル近くまで上昇した今年2月をピークに下落傾向にあります。足もとでは1トン=61ドル前後で推移しており、ピークからの下落率は3割を超えました。鉄鉱石価格の下落は、豪ドルにとってマイナス材料です。

豪ドルは、良好な雇用統計が下支えする一方、軟調な鉄鉱石価格が上値を抑えそうです。ただし、鉄鉱石価格が下落基調を強める場合、豪ドルには下押し圧力が一段と加わる可能性があり、注意が必要です。<アナリスト 八代和也>


*鉄鉱石価格=中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)
出所:Bloombergより作成


【NZドル】 強弱材料が混在

乳製品電子オークション(GDT)が5月16日に開催されました。乳製品国際価格の指標であるGDT価格指数は1089と、前回5月2日の1055から上昇。2014年6月以来、2年11か月ぶりの高水準となりました。

GDT価格指数は、今年3月7日に955まで低下した後に反発し、今回で5回連続の上昇です。NZにおいて乳製品は最大の輸出品であり、その価格動向は経済に影響を与えます。GDT価格指数の上昇は、NZ経済はもちろん、NZドルにとってもプラス材料と考えられます。

一方で、RBNZ(NZ中銀)が5月11日に公表した金融政策報告において、政策金利を長期間据え置く可能性を示しました。早期利上げ観測が後退したことで、NZドルは上昇しにくい地合いとも考えられます。NZドルの独自材料では強弱が混在しています。そのため、NZドルは、対米ドルでは米ドル、対円では円の動向に左右される展開になる可能性があります。<八代>


出所:Bloomberg、GDT資料より作成


【南アフリカランド】 25日のSARB政策金利発表に注目

5月25日、SARB(南アフリカ中銀)が政策金利を発表します。SARBは前回3月30日の会合で政策金利を7.00%に据え置いたものの、6名のメンバーのなかで1名が“0.25%の利下げ”を主張しました(残りの5名は“据え置き”)。

インフレ圧力と景気低迷とのジレンマに陥るなか、SARBは政策金利を今回も据え置く可能性が高いとみられます。南アフリカの3月CPI(消費者物価指数)は前年比+6.1%と、3か月連続で上昇率が鈍化したものの、SARBのインフレ目標の上限である+6%を7か月連続で上回りました。一方、南アフリカ経済は2014年以降、たびたびマイナス成長を記録。2016年10-12月期のGDPは前期比年率マイナス0.3%でした。

景気の低迷やSARBがCPI上昇率の鈍化を予想していることで、市場では利下げ観測があります。SARBのクガニャゴ総裁は5月4日、「SARBの利上げサイクルは終わりに近づいている可能性がある」との見解を示す一方、市場が利下げを予想していることについては、「先走りしている」と指摘。「利上げサイクルの終了は、利下げの始まりを意味しない」と強調し、利下げ観測をけん制しました。

25日の会合における注目点は、6人の政策メンバーの主張(「据え置き」「利下げ」「利上げ」)や、クガニャゴ総裁が会見でインフレについてどのような見解を示すのかです。それらが近い将来に政策変更が行われる可能性があることを感じさせる内容になれば、ランドが反応する可能性があります。<八代>


出所:Bloombergより作成


出所:Bloombergより作成




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