市場調査部レポート

2017/03/17 11:52米ドル/円、レンジワーク主体の動きが継続しそう

【相場環境】米予算バトルがスタート!?
【全体観・米ドル】米ドル/円、レンジワーク主体の動きが継続しそう
【ユーロ】ユーロ/円、上抜けブレークとなるメルクマールは?
【豪ドル】豪雇用統計は弱め? 資源価格に反応しやすい地合いか
【NZドル】23日のRBNZ政策金利発表に注目!!
【トルコリラ】TCMBが後期流動性貸出金利を引き上げ


【相場環境】 米予算バトルがスタート!?

今週、3つの重要イベントが集中する「3.15」は、総じて米ドルが軟調でした。

FOMCは予想通り0.25%の利上げを決定する一方、イエレン議長の会見などで「緩やかな」利上げの継続が示唆されました。声明文や政策金利見通し(いわゆる「ドット」)は、市場が反応したほど「ハト派」的ではなかったように思われますが、市場がアグレッシブな利上げを織り込むためには、実際にインフレの高まりが確認される必要があるのかもしれません。

オランダ総選挙でルッテ首相の自由民主党(VVD)が第一党になり、ウィルダース氏の極右・自由党が失速しました。ポピュリズムの勢いにブレーキがかかったことで、選挙結果はユーロにポジティブと評価できるでしょう。その流れが4-5月のフランス大統領選挙にも受け継がれるのか、慎重に見極める必要がありそうです。

16日、米デットシーリング(債務上限)が復活しました。財務省が「非常手段」を発動することで、デフォルト(債務不履行)の危機は今秋ごろまで現実味を帯びない見込みです。ただし、後述するようにこれから本格化する予算交渉の行方には注意が必要かもしれません。

トランプ政権の予算案は議会とのバトルの「号砲」か
16日、トランプ政権が今年10月に始まる2018年度の予算案を発表しました。通常の予算教書ほど詳細ではなく、また、医療保険や税制などに関する部分は含まれていません。それでも、国防費の大幅増額や、国務省や環境保護庁などの予算の大幅減額を提案するなど、物議を醸すには十分かもしれません。

トランプ大統領が発動してきた数々の大統領令(行政令)と異なり、予算は議会での立法化が必要です。その意味で、予算編成は、トランプ政権と議会が共同で行う初の本格的なプロジェクトと言えるかもしれません。
議会は上下両院とも共和党が過半数を占めています。それでも、決して一枚岩ではなく、とりわけ財政保守派は財政赤字の拡大には強く反対するものとみられます。

2018年度予算だけでなく、デットシーリング問題や4月28日に期限切れとなる2017年度継続予算への対応など、予算関連の課題が山積しています。トランプ政権の予算案の発表は、これから本格化する予算バトルの「号砲」と言えるかもしれません。

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来週は、重要な経済指標に乏しく、大きなイベントも予定されていません。
週初、為替市場は17日の米独首脳会談(ワシントン)や、17-18日のG20財務相・中央銀行総裁会議(独、バーデンバーデン)への反応からスタートしそうです。

米国では、政府と議会の予算交渉や、金融政策予想の見直しなどが相場材料になるかもしれません。
前者に関しては、トランプ政権の予算案に対する議会の反応が注目されます。政権と議会、とりわけ大統領と共和党議員との距離感に注目したいところです。
後者については、FOMC参加者の発言機会が多くあります。15日のFOMC決定の背景や、「ハト派」と受け止めた市場の反応に対する評価が明らかになるかもしれません。主な発言予定は以下の通りです(日付は米国時間)。


(*)14-15日のFOMCで、カシュカリ総裁は現状維持を主張して、ただ一人利上げに反対しました。

英国では、メイ首相にEU離脱を宣言する権限を与える法案が成立しました。25日のローマ条約60周年記念に配慮して、27日の週にEU離脱が宣言されるとみられます。EU離脱の条件や交渉に関する思惑が来週の相場材料になるかもしれません。

欧州では、フランス大統領選挙の動向に引き続き注目です。16日に発表された最新の世論調査(Ifop)では、極右・国民戦線(FN)のルペン氏の支持率が26.5%、無所属のマクロン氏が25.5%、中道右派のフィヨン氏が18.0%でした。そして、決選投票では、61%対39%でマクロン氏がルペン氏を破るとの予想でした。オランダ総選挙の結果を受けて、情勢に変化は生じるのか、興味深いところです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、レンジワーク主体の動きが継続しそう

【相場環境】にもある通り、注目の「3.15」イベントを受けた米ドル/円は、軟調な展開となりました。

その他イベントも順次消化し、今のところは先般の「シナリオレポートvol.9」において演繹法的推論で示した「中立」ケースが概ね当てはまる形となっています。

17日時点での米ドル/円の日足チャートにおいても、足もとでは横ばい基調(レンジ相場)主体の展開となることが予想されます。以下、米ドル/円・日足・ボリンジャーバンド(21日)+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) 21MA(21日移動平均線)が横向きであること、2) 各ボリンジャーバンドが21MAに対してパラレルとなっていること、3) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方に位置していること、そして4) DMI(方向性指数)において、+DIと-DIが接近し、またADXが右肩下がりとなりつつあることから、総じてレンジ相場の様相を呈していることが分かります。

足もとでの予想コアレンジ(=核となる予想レンジ)は、21日ボリンジャーバンド・±2σラインをメドとする112.00-115.20円。しばらくは、当該レンジをベースとするレンジワークが継続しそうです。

米ドル/円の俯瞰図を確認することを目的に、タイムフレームとともにテクニカルシグナルを少し変更してみましょう。以下、米ドル/円・週足・一目均衡表+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



週足・一目均衡表では、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の上方にあること、2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること、3) 転換線が基準線の上方にあることから、【三役好転】、つまり上昇トレンドサインが示現していることが分かります。

一方で、相場の方向性を教えてくれるDMI(方向性指数)では、-DIと+DIが接近し、またADXが右肩下がりとなっていることから、トレンドが弱まるシグナル、つまりレンジ相場を示唆しています。

現在の米ドル/円は、2015年6月時高値(125.86円、A)と2016年6月時安値(98.76円、B)を結んだフィボナッチ・50.0%ラインと同・61.8%ラインの間のゾーンである112.30-115.50円を中心に推移しており、多少のオーバーシュートはあるものの、週足レベルでは9週連続で当該ゾーン内を“往って来い”する相場展開となっています。

週足・一目均衡表では、先行スパン(いわゆる“雲”)の上辺(=先行2スパン≒111.20円)付近がサポート帯として機能していることもあり、仮にフィボナッチ・50.0%ライン(≒112.30円)を割り込む動きとなった場合は、先行2スパンまでの下押しを想定した「買い・トラップトレード」を仕掛けてみるのも一案です。

現在の米ドル/円は、奇しくも日足チャートと週足チャートが示す重要テクニカルサインにおいて、概ね重複するレンジ(日足112.00-115.20円週足112.30-115.50円)を主体とするレンジ相場の様相を呈しています。当面の米ドル/円は、当該レンジをベースとするレンジワーク主体の動きとなりそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、上抜けブレークとなるメルクマールは?

以下、ユーロ/円・週足・一目均衡表+パラボリック+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の中にあること、2) 遅行スパンがローソク足に絡み合う形状であること、3) +DIと-DIが接近し、またADXが右肩下がりとなっていることから、現時点のユーロ/円は方向性を探る展開となっています。

喫緊の重要メルクマールは、パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)一目均衡表・先行2スパン

両指標が示すレートは、それぞれ123.24円(パラボリック・SAR)と123.12円(先行2スパン)となっており、今後ユーロ/円が両指標を上抜け、さらに+DI>-DIが確認できた場合は、上昇トレンドが強まる可能性も。

一方で、両指標の上抜けに失敗した場合は、再び“雲”の中を推移するレンジ相場の展開となりそうです。<津田>


【豪ドル】 豪雇用統計は弱め? 資源価格に反応しやすい地合いか

豪州の2月雇用統計が3月16日に発表されました。雇用者数が前月比0.64万人減、失業率が5.9%でした。雇用者数は市場の予想(+1.60万人増)に反して1月から減少し、失業率は予想(5.7%)よりも高めでした。

ただし、雇用者数の内訳をみると、パートタイムが3.35万人減少した一方、フルタイムが2.71万人増加しました。また、雇用者数は月ごとのブレが大きい指標です。雇用者数の傾向を把握するために、6か月平均をみると、9年ぶりのハイペースとなった2015年の反動で、昨年初めから秋口にかけて伸びが鈍化したものの、その後、持ち直し傾向にあります。


出所:Bloombergより作成

失業率は1月の5.7%から悪化。約3年ぶりの低水準を記録した昨年9、10月の5.6%からやや悪化傾向にあるものの、2015年10月以降、おおむね5%台後半で推移しています。

RBA(豪準備銀行)のロウ総裁は2月24日の議会証言で、政策金利の年内据え置きを示唆する一方、「RBAは労働市場を注視しており、労働市場が減速する場合は対応(=利下げ?)が必要になる」と述べました。今回の雇用統計を根拠に、RBAが利下げに踏み切る可能性は低いと考えられます。年内据え置きを予想する市場のRBAの金融政策見通しもほとんど変化しませんでした。

雇用統計を受けて豪ドルが下落しました。市場のRBAの金融政策見通しを踏まえると、雇用統計を材料視した豪ドル売りは長続きしない可能性があります。

来週(3月21日の週)は、21日にRBA議事録(3月7日会合分)が公表されます。7日の声明と比べて議事録の内容に大きな違いがなければ、あまり材料視されない可能性があります。その場合、豪ドルは鉄鉱石や原油など資源価格の影響を受けやすいとみられます。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 23日のRBNZ政策金利発表に注目!!

RBNZ(NZ中銀)が3月23日に政策金利を発表します。RBNZは前回2月9日の会合で政策金利を過去最低の1.75%に据え置く一方、声明や金融政策報告で政策金利を長期間据え置くことを示唆。それを受けて、市場ではRBNZの年内利上げ観測が後退しました。

前回会合以降、NZを取り巻く環境に大きな変化はみられず、NZドルも対米ドルで反落しました。加えて、NZの1-3月期CPI(消費者物価指数)が来月(4月)に発表されます。それらを踏まえると、RBNZは3月の会合で政策金利を据え置く可能性が大です。焦点は、声明で先行きの金融政策について新たな材料が提供されるのかどうかになりそうです(今回、金融政策報告は公表されず、ウィーラー総裁の会見もなし)。その点で、声明におけるインフレや住宅市場の動向、NZドル、金融政策に関する文言に注目です。

前回の声明は、以下の通りでした。
・「インフレ率は目標中央値(+2%)へ緩やかに回復することが予想される」
・「最近の住宅価格の上昇鈍化は喜ばしいものの、需給の継続的な不均衡を考慮すると鈍化傾向が続くかどうかは不透明感がある」
・「バランスのとれた成長を持続可能にするには依然として高い。為替レートの下落が必要だ」
・「金融政策はかなりの期間、緩和的になる」、「とりわけ国際的な見通しに多くの不確実性が残っており、それに応じて政策の調整が必要になる可能性がある」

昨年10-12月期CPIがRBNZのインフレ目標範囲内に戻ったことや、堅調なNZ経済を背景に、市場ではRBNZの年内利上げ観測があります。RBNZの声明で、金融政策に対する見方が変化すれば、NZドルが反応する可能性があり、注目です。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が3月16日時点で織り込む、RBNZが今年9月までに利上げを行う確率は17.7%。利上げの確率は11月までで39.5%へと上昇します。<八代>


【トルコリラ】 TCMBが後期流動性貸出金利を引き上げ

TCMB(トルコ中銀)は3月16日に政策会合を開催。1週間物レポ金利(主要政策金利)、翌日物借入金利、翌日物貸出金利をいずれも据え置きました。一方で、後期流動性貸出金利を11.00%から11.75%へ、0.75%引き上げました。後期流動性貸出金利は本来、金融機関が資金不足を回避するための最終手段として用意されている例外的な資金供給金利であり、1月半ば頃から短期市場金利の事実上の上限として機能しています。これにより、1月初めに8.5%前後だった短期市場金利(翌日物銀行間金利)は、足もと11%強で推移しています。

TCMBは声明で、「ここ数か月間のコスト上昇圧力や食品価格のボラティリティが、インフレ率の急激な上昇をもたらした」と指摘。インフレ率の著しい上昇が短期的に続くとの見通しを示したうえで、「インフレ見通しの悪化を抑えるために、金融政策の引き締めを強化することを決定した」と説明しました。

トルコの2月CPI(消費者物価指数)は前年比+10.13%と、1月の+9.22%から上昇率が加速。2012年4月以来の強い伸びとなり、TCMBのインフレ目標(+5%、その±2%が許容範囲)から一段と上方にかい離しました。一方で、エルドアン大統領は景気支援のためにTCMBに対して利下げを繰り返し求めています。1週間物レポ金利、翌日物借入金利、翌日物貸出金利を据え置くことでエルドアン大統領に一定の配慮をしつつ、インフレ圧力に対応するために後期流動性貸出金利を引き上げたとみられます。

TCMBは声明で、「物価安定という目標のために利用可能なすべての手段を使う」と表明。「インフレ見通しが著しく改善されるまで金融政策の引き締めスタンスを維持する」と強調し、「インフレ期待や企業の価格決定行動、そしてインフレに影響を及ぼすその他の要因を注視し、必要に応じて一段の金融引き締めを行う」としました。 TCMBが主要政策金利を据え置きつつも、後期流動性貸出金利を引き上げて事実上の利上げに踏み切ったことは、トルコリラの下支え材料となりそうです。<八代>


出所:Bloombergより作成




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