市場調査部レポート

2017/04/28 13:37【マンスリー・アウトルック(2017/5)】「100日ハネムーン期間」の終了と“セル・イン・メイ”について

― 2017年5月の為替相場展望 ― 

《相場環境》

地政学リスクを意識する展開は続く可能性があるものの、景気、金融政策、税制改革の行方など米国のファンダメンタルズの変化に注目する必要がありそう。仏大統領選挙や英総選挙など欧州政治にも引き続き注目。

<主要通貨の動向>
・【全体観・米ドル】「100日ハネムーン期間」の終了と“セル・イン・メイ”について
・【ユーロ】5月7日フランス大統領決選投票結果がその起点に?
・【英ポンド】英ポンド/円、“52週MAの壁”を19週間ぶりに上抜けブレーク!

<資源国・新興国通貨の動向>
・【豪ドル】鉄鉱石価格に影響を受けやすい地合い。雇用、住宅関連指標にも注目
・【NZドル】11日のRBNZ政策金利発表に注目!!
・【加ドル】原油価格に注目、NAFTAをめぐるニュースにも注意
・【トルコリラ】TCMBが後期流動性貸出金利を引き上げ、トルコリラにとってプラス材料か
・【南アフリカランド】南アフリカの政局に引き続き注意が必要

◆主要経済指標・イベント
◆OIS(翌日物金利スワップ)に基づく金融政策見通し


≪相場環境≫

5月以降も、北朝鮮情勢をはじめ地政学リスクが意識される展開は続きそうです。ただ、そうした中でも、ファンダメンタルズ、とりわけ米国を取り巻く状況をチェックすることは重要かもしれません。

米経済は改善基調を取り戻すか
米景気は今年初めに大きく減速した可能性があります(本稿執筆時点で1-3月期GDPは未発表)。ただ、3月開催のFOMCの議事録によれば、暖冬によるエネルギー消費の減少や、税還付の遅れによる消費の伸び悩みなど、一時的な要因の影響が大きいとのことでした。仮にFOMCの見解が正しいのであれば、春以降は景気の反発がみられるはずです。

フィッシャー副議長らFRB関係者の多くは、年内残り2回の利上げは妥当だとの見解を繰り返しています。他方、4月27日時点のFFレート(政策金利)先物に基づけば、市場は6月の利上げを70%織り込んでおり(5月の利上げは13%)、12月までの追加利上げは五分五分とみています。米景気の改善が確認されれば、利上げ観測が高まることで米ドルのサポート要因になりそうです。

トランプ減税は実現するのか
4月26日、トランプ政権は税制改革案の大枠を発表しました。主な内容は、法人税引き下げ(35%→15%)、企業の海外所得の非課税化、海外利益の国内還流に対する一時的軽減税率、所得税簡素化(最高税率39.6%→35%)、富裕層の代替最低税(AMT)廃止、資産税廃止、など。

一部の税控除の廃止など増収策は含まれるものの、主な財源は不透明であり、財政赤字の拡大につながるようであれば、共和党内部からも反対が出そうです。 税制改革案の発表を受けて、株価は下落、市場金利は低下(国債価格は上昇)、米ドル円は下落しました。市場は、トランプ減税の効果が不透明、あるいは実現性が乏しいと評価したようです。

トランプ政権は引き続き年内の成立を目指しています。今後、議会審議が進む中で、財源はどうするのか、何の項目が残って、何が落とされるのか、あるいはパッケージとして成立するのか、成立しないのか等を探りながら、市場は反応することになりそうです。

欧州政治にも引き続き要注目
5月7日、フランス大統領選挙の第2回投票が実施されます。世論調査では、中道改革派「前進!」のマクロン氏が極右・国民戦線のルペン氏を大きくリードしています。第1回投票で敗退したフィヨン氏やメランション氏もマクロン氏支持を呼び掛けています。ルペン氏は、コア支持層は強固のようですが、支持は広がっておらず、マクロン氏が勝利する可能性が高そうです。

その通りとなれば、金融市場は結果を冷静に受け止めそうです。ただし、6月11&18日に議会選挙が予定されており、共和党や社会党の議員が多く当選するとみられるので、新大統領の政権運営能力が試されることになりそうです。

英国では、4月中旬にメイ首相が突如、解散総選挙を決断しました。メイ首相の狙いは、(1)与党保守党の議席増による政権安定化、(2)その結果として一枚岩でのEUとの離脱交渉、(3)政権長期化(総選挙の当初予定は2020年)などとみられます。
6月8日の総選挙の結果が、メイ首相の思惑通りとなるのか注目されます。思惑が外れれば、英政治は不安定化しそうです。仮に、思惑通りとなっても、選挙後に本格化するであろうEUとの離脱交渉が前途多難であることに変わりはないでしょう。

日欧金融政策の方向性にいずれ違いも!?
4月27日、日銀とECBはいずれも会合後に金融政策の現状維持を発表しました。黒田総裁もドラギ総裁も会見で金融緩和を維持する意向を表明しました。ただし、今後、両者の金融政策の方向性には違いが出てくる可能性があります。

日銀の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、景気判断が上昇修正され、物価見通しが下方修正された一方で、2%の物価目標達成は「見通し期間の後半(2018年度ごろ)」が維持されました。

安倍政権は7月に任期切れとなる日銀審議委員2名の後任候補を国会に通知しました。退任する2名の委員は現行の金融緩和に反対を表明してきました。一方、後任候補のうちの1人はリフレ派であり、物価目標達成のために追加緩和が必要となりうるとの見解を持っているようです。新任の審議委員が金融政策決定会合に参加するのは9月20-21日の会合からですが、9月の会合が近づくにつれて市場で追加緩和期待が高まるかもしれません。

他方、ECBのドラギ総裁は4月27日の会見で、景気に楽観的な見方を示しつつも、出口戦略を議論しなかったと明言しました。ただ、ECB内部ではQE(量的緩和)縮小を求める声が出ているようです。フランス大統領選挙の不透明感が払しょくされ、またBREXITの交渉がユーロ圏経済に与える影響は軽微との判断が強まれば、ECBがQE縮小に向けて地ならしを始める可能性はありそうです。

日銀の追加緩和の可能性は円安要因であり、ECBのQE縮小の可能性はユーロ高要因であると考えられます。すぐにではないとしても、市場はそうした状況を徐々に意識するかもしれません。

今後の主なスケジュール
4/28 米継続予算期限切れ(対応なければ政府機関閉鎖も)
4/29 EUサミット (交渉プロセスの検討←3/29メイ首相宣言)
5/2-3 FOMC
5/7 仏大統領選挙第2回投票(決選投票、マクロン氏vsルペン氏)
5/9 韓国大統領選挙(事実上、文氏と黄氏の一騎打ち)
6/8 英国議会選挙
6/11&18 フランス議会選挙
6/? トランプ政権が2018年度予算案&税制改革案の詳細発表

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来週は、欧州などでのメーデー、日本のゴールデンウィークなど休みが多く、相場の急変に注意が必要かもしれません。

米議会における2017年度予算審議の行方は、本稿執筆段階で依然として不透明です。現行の継続予算が4月28日に期限切れとなったあと、(1)年度末(今年9月末)までの予算が成立、(2)1週間程度の予算を成立させて交渉継続、(3)政府機関の一部閉鎖、のいずれの可能性もあります。
(3)であっても、長期化しなければ経済や金融市場への影響は限定的とみられます(雇用統計など経済指標の発表スケジュールは変更されるかもしれません)。ただし、共和党と民主党が今回の交渉で禍根を残せば、オバマケア改廃や2017年度予算、税制改革などの対応に悪影響が出るかもしれません。

米経済指標では、3月のPCEコアデフレータ(1日)4月のISM製造業景況指数(同)ISM非製造業景況指数(3日)雇用統計(5日)などが発表されます。それらによって、米景気の改善が確認されるかどうか。とりわけ、雇用統計は3月にNFP(非農業部門雇用者数)の伸びが弱まったため、どの程度反発するか。ただ、完全雇用がほぼ達成されており、人材不足からNFPの増加ペースは鈍化しても不思議ではありません。失業率や時間当たり賃金が労働需給の一段のひっ迫を示唆する可能性もあります。

その他にも、米FOMC(2-3日)で今後の利上げペースに関して何らかの材料が提供されるか、7日のフランス大統領選挙第2回投票に向けて、世論調査などでマクロン氏有利の状況に変化がみられるか、などにも注目したいところです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


<主要通貨の動向>

【全体観・米ドル】 「100日ハネムーン期間」の終了と“セル・イン・メイ”について

4月29日(土)は、トランプ第45代米大統領の1月20日就任式から数えて100日目にあたります。

歴史的に、新政権発足から最初の100日間は【100日ハネムーン期間】と呼ばれ、その期間は、有権者や議会・マスメディアが新政権や新大統領に対して性急な評価や批判を避けるという紳士・淑女協定、不文律があり、いわば“様子見期間”として見られることが一般的と言われています。

そのような「協定」「不文律」がある中、トランプ大統領の支持率(4月27日時点)は42.1%となっており、歴代米大統領の支持率に比べても相対的に低い数字となっています。以下、『FiveThirtyEight』に掲載されている、歴代米大統領(1977-)との比較グラフについてご覧ください。


出所:FiveThirtyEight
 
上記表において、縦に描画された点線が『就任100日目』を示しており、それぞれ就任100日目の支持率を近い順から、オバマ氏:60.8%、ブッシュ氏:57.6%、クリントン氏:58.2%、“パパ”ブッシュ氏:58.0%、レーガン氏:67.6%、カーター氏:62.8%となっています。(上図緑線:トランプ大統領の支持率推移)

過去6代の米大統領支持率を見ると、“パパ”ブッシュ氏(1989-93年)を除いては、100日目以降の支持率は右肩下がりとなっており、まさに“蜜月(ハネムーン)”期間の終了と同時に厳しい評価が下されるという傾向・パターンが見られます。

となると、4月27日時点での支持率が50%を割っている※トランプ大統領にとって、これからの時間が正念場となりそうです。(※ 就任100日目で支持率が50%割れとなっているのは、近年ではフォード第38代大統領(1974-77)の45.0%以来。“大統領選挙に勝利して選出されたことのない、唯一の合衆国大統領”とも。)

支持率の低下も然ることながら、議会では民主党との軋轢とともに、身内である共和党、特に保守強硬派・フリーダムコーカスとの関係が取り沙汰されているトランプ大統領。早速【100日ハネムーン期間】明けの5月から、その政治的真価が問われる時間帯と見てよいでしょう。

その【5月】と言えば、マーケットの“アノマリー”※で有名な格言が・・・<セル・イン・メイ>(5月売り)。(※ はっきりとした理論的根拠を持つ訳ではないものの、よく当たるかもしれないとされる経験則や傾向・パターンのこと) 正確な言い回しは以下の通りです。

“Sell in May, and go away! Don’t come back until St. Leger day!”『5月に売り逃げろ!そして(9月第2土曜日の競馬レースがある)セント・レジャー・デーまで戻ってくるな!』

このウォール街の格言について、過去の事例を検証してみたいと思います。以下、過去20年間(1997-2016年)におけるNYダウおよび日経平均の月別騰落率を表したグラフについてご確認ください。



上記グラフから分かることは、特にNYダウは年間を通じて4月は上昇しやすく、5月以降は日米株価ともにマチマチ(8-9月にかけては下落)であるという傾向・パターンが見て取れます。

この傾向・パターンから勘案すると、実は<セル・イン・メイ>(5月売り)ではなく、<セル・イン・エイプリル>(4月売り)が正解なのかもしれません。ただし、一方で、西暦末尾に「7」の付く年の株価騰落率は夏場まで高くなる傾向・パターンも見られるため、一概には言えないことも加味する必要があります。

あくまで、過去20年間の日米株価の傾向・パターンとしてご参考にしていただければと思います。

閑話休題。以下、米ドル/円・週足チャート+52週移動平均線(52週MA)+DMIにつき、ご確認ください。



上記チャートにおいて、米ドル/円の中長期トレンドを判断するポイントは極めてシンプルで、メルクマール確認のポイントは以下の通りです。

1) 52週MAが右肩上がりで、ローソク足が同線の上方にあれば【上昇トレンド】
2) 52週MAが右肩下がりで、ローソク足が同線の下方にあれば【下降トレンド】

また、その上下トレンドの方向性やモメンタム(勢い)を判断するシグナルであるDMI(方向性指数)を合わせて見てみると、上記1)の状態で+DI>-DIかつADXが右肩上がりになった場合(上図赤丸印)は【上昇トレンド】が加速し、一方で上記2)の状態で-DI>+DIかつADXが右肩上がりになった場合(上図青丸印)は【下降トレンド】が加速する傾向・パターンが見られます。

4月28日時点での米ドル/円・週足チャートでは、ローソク足が52週MA(≒108.37円)で一時的にサポートされる形状となっているものの、同線の方向性は横向きとなっています。また、DMIにおいて-DI>+DIかつADXが低い位置にあることから、当面は<方向性を探る時間帯>と捉えることも可能です。

今後は、a) 52週MAの方向性(上方or下方or横向き)がどうなるのか、b) ローソク足が52週MAにサポートされるか否か、そしてc) DMIにおいて+DIと-DIがクロスした後、ADXが右肩上がりとなるのか否か(上図赤点線丸印)といった点が重要なトレンド判断材料となりそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>

【ユーロ】 5月7日フランス大統領決選投票結果がその起点に?

以下、ユーロ/米ドル・週足チャート+52週移動平均線(52週MA)+DMIにつき、ご確認ください。



4月28日時点でのユーロ/米ドル・週足チャートでは、ローソク足が52週MA(≒1.0913ドル)付近で一時的に上値が抑えられるような形状となっていること、また、52週MAの方向性が右肩下がりとなっていることから、中長期トレンドは緩やかな下降基調が継続していることが分かります。

一方で、相場の方向性を見るためにDMI(方向性指数)を確認してみると、現状では+DI>-DIの乖離がさらに広がりつつあること、また、ADXが右肩上がりとなっていることから、上昇トレンドが加速する可能性を示唆しています。

過去のパターンにおいて、1) ローソク足が52週MAを明確に下回り、2) –DI>+DIの乖離がさらに広がり、また同時にADXが右肩上がりに推移し始めたポイントが、【下降トレンド】の起点となっていることが分かります。(上図青丸・青線印)

これからの時間帯において、a) 52週MAの方向性が右肩上がりに変化し、b) ローソク足が明確に52週MAを上回り、そしてc) +DI>-DIの乖離がさらに広がり、またADXが右肩上がりに推移した場合は、中長期上昇トレンドの起点となる可能性も。

5月7日に予定されているフランス大統領選挙・第2回投票の結果とともに、6月11・18日に予定されているフランス国民議会選挙結果も少なからずその動意となりそうです。<津田>

【英ポンド】 英ポンド/円、“52週MAの壁”を19週間ぶりに上抜けブレーク!

以下、ポンド/円・週足チャート+52週移動平均線(52週MA)+DMIにつき、ご確認ください。



上記チャートにおいて、米ドル/円同様、英ポンド/円の中長期トレンドを判断するポイントも極めてシンプルと言えます。以下、そのメルクマール確認をご覧ください。

1) 52週MAが右肩上がりで、ローソク足が同線の上方にあれば【上昇トレンド】
2) 52週MAが右肩下がりで、ローソク足が同線の下方にあれば【下降トレンド】

その上下トレンドの方向性やモメンタム(勢い)を判断するシグナルであるDMI(方向性指数)を合わせて見てみると、上記1)の状態で+DI>-DIかつADXが右肩上がりになった場合(上図赤丸印)は【上昇トレンド】が加速し、一方で上記2)の状態で-DI>+DIかつADXが右肩上がりになった場合(上図青丸印)は【下降トレンド】が加速する傾向・パターンが、米ドル/円同様、英ポンド/円でも見られます。

4月28日時点での英ポンド/円・週足チャートでは、ローソク足が52週MA(≒139.74円)を一時的に上抜けており、昨年12月以来19週間続いた“52週MAの壁”を上抜けブレークする形となっています。

また、相場の方向性を示すDMI(方向性指数)において、+DIと-DIがクロスし、その後+DI>-DIとなっている(上図赤点線丸印)ことから、今後、52週MAの方向性が右肩上がりとなり、またDMIにおいて+DI>-DIの乖離がさらに広がることになれば、英ポンド/円の強気基調がさらに強まる可能性もありそうです。<津田>


<資源・新興国通貨の動向>

【豪ドル】 鉄鉱石価格に影響を受けやすい地合い。雇用、住宅関連指標にも注目

5月の豪ドルは、鉄鉱石価格の動向に目を向ける必要がありそうです。豪州の主力輸出品である鉄鉱石の価格が下落基調にあります。中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)価格 は足もとで1トン=65ドル前後で推移。今年2月のピークからの下落率は、3割を超えました。豪州は鉄鉱石を主力輸出品とするため、豪ドルにとって鉄鉱石価格の下落はマイナス材料です。鉄鉱石価格が一段安となれば、豪ドルに下押し圧力が加わる可能性があります。

5月2日のRBA(豪中銀)会合では、政策金利の据え置きが決まる可能性が大です。豪州の1-3月期CPI(消費者物価指数)は前年比+2.1%と、RBAのインフレ目標(+2から3%)の範囲内に10四半期ぶりに収まりました。一方、基調インフレ率(トリム平均と加重中央値の平均値)は同+1.80%と、2015年10-12月期以来の強い伸びを記録したものの、RBAの目標を下回りました。また、RBAは2月の金融政策報告で、今年6月にCPI上昇率は前年比+2%、基調インフレ率は同+1.75%との見通しを示しました。CPIや基調インフレ率はRBAの見通しに沿って推移していると考えられるためです。

4月4日のRBA会合の議事録では、政策メンバーが現時点でインフレよりも、労働市場や住宅市場を懸念していることが判明。先行きの金融政策は、労働市場や住宅市場の動向が鍵を握ることが示唆されました。そのため、豪ドルは雇用や住宅関連の指標にこれまで以上に敏感に反応する可能性があります。5月に発表される主な雇用関連指標は、賃金指数(1-3月期)と雇用統計(4月)が、それぞれ5月17日と18日。住宅関連指標は、コアロジック住宅価格(4月)と住宅建設許可件数(3月)が、それぞれ5月1日と8日に発表されます。<アナリスト 八代和也>

【NZドル】 11日のRBNZ政策金利発表に注目!!

5月のNZドルは、11日のRBNZ(NZ中銀)政策金利発表が最大の材料になりそうです

RBNZは前回3月23日の会合で、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定。その時の声明で、「金融政策はかなりの期間、緩和的になる」と表明。「とりわけ国際的な見通しに多くの不確実性が残っており、それに応じて政策の調整が必要になる可能性がある」とし、追加利下げに含みを残しました。

5月11日の会合では、政策金利の据え置きが決定されそうです。NZの1-3月期のCPI(消費者物価指数)は前年比+2.2%と、昨年10-12月期の+1.3%から上昇率が加速。RBNZのインフレ目標(+1から3%)の中央値である+2%を超えました。中央値を超えたのは、2011年7-9月期以来、5年半ぶりです。ただし、2%に達したといっても今のところ1四半期のみです。昨年初めの原油安の影響がはく落したほか、食料品の価格上昇などの一時的要因が大きく、RBNZは上昇率が今後も2%以上に定着するのか、それとも一時的なものなのかどうかを見極めると考えられるためです。

注目は、政策金利と同時に発表される金融政策報告におけるCPI上昇率やOCR(オフィシャル・キャッシュ・レート、政策金利)の見通しです。RBNZは2月の金融政策報告で、CPI上昇率が2%に達するのは2019年4-6月期と予想。その見通しをもとに、2019年7-9月期の利上げを示唆しました(それまでは「据え置き」)。

CPI上昇率見通しは、おそらく2月時点から上方修正されるとみられます。その場合、想定される利上げ時期も前倒しされると考えられます。焦点は、利上げ時期がどの程度前倒しされるのか。市場では、来年2月にも利上げに転じるとの見方があります。OIS(翌日物金利スワップ)が4月27日時点で織り込む、RBNZが年内に利上げを行う確率は29.6%。利上げの確率は来年2月までで56.8%へと上昇します。金融政策報告におけるOCR見通しが、市場の見方に近づくほど、早期利上げ観測が高まるとみられます。その場合、NZドルにとってプラス材料と考えられます。一方、CPI上昇率やOCRの見通しが2月時点から大きな変化がなければ、NZドルには下落圧力が加わる可能性があります。<八代>

【加ドル】 原油価格に注目、NAFTAをめぐるニュースにも注意

加ドルは対米ドルで原油価格に影響を受けやすい地合いが続いています。カナダは原油輸出国であるため、カナダドルにとって原油価格の上昇はプラス材料、原油価格の下落はマイナス材料です。米WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物など原油価格の動向に引き続き注目する必要がありそうです。クロス円である加ドル/円は、米ドル/円にも目を向ける必要があります。


出所:Bloombergより作成

NAFTA(北米自由貿易協定)をめぐるニュースにも注意が必要かもしれません。NAFTAからの離脱もあり得るとしていたトランプ米大統領が26日、現時点で離脱せずにカナダやメキシコと再交渉を行う意向を示しました。カナダは米国への輸出依存度が高く、輸出の約7割が米国向けです。そのため、NAFTAの行方が加ドルの動向に影響を与える可能性があります。<八代>

【トルコリラ】 TCMBが後期流動性貸出金利を引き上げ、トルコリラにとってプラス材料か

TCMB(トルコ中銀)は4月26日の政策会合で、「1週間物レポ金利(主要政策金利)」、「翌日物借入金利」、「翌日物貸出金利」をいずれも据え置きました。一方で、「後期流動性貸出金利」を11.75%から12.25%へ、0.50%引き上げました。後期流動性貸出金利は1月半ば頃から短期市場金利の上限として機能しているため、今回の決定は事実上の利上げと言えそうです。

TCMBは声明で、「ここ数か月間のコスト上昇圧力や食品価格のボラティリティが、インフレ率の急激な上昇をもたらした」と指摘。「最近のリスク選好の改善がコスト要因からの上向き圧力を幾分抑制するものの、現在の高水準のインフレは企業の価格設定行動にリスクをもたらす」としたうえで、「インフレ見通しの悪化を抑えるために、金融政策の引き締めを強化することを決定した」と説明しました。

トルコの3月CPI(消費者物価指数)は前年比+11.29%と、2月の同+10.13%から上昇率が加速。2008年10月以来の強い伸びとなり、TCMBのインフレ目標(+5%、その±2%が許容範囲)から一段と上方にかい離しました。

TCMBは、「物価安定という目標のために利用可能なすべての手段を使う」と表明し、「インフレ見通しが著しく改善されるまで金融政策の引き締めスタンスを維持する」と強調。「インフレ期待や企業の価格設定行動、そしてインフレに影響を及ぼすその他の要因を注視し、必要に応じて一段の金融引き締めを行う」とし、追加利上げに含みを残しました。

政策会合前にトルコ政府高官がTCMBに対して利下げを要求。短期市場金利(翌日物銀行間金利)が今年1月初めから大幅に上昇していたため、市場ではTCMBがインフレ対応で利上げを行うのは難しくなりつつあるとの見方もありました。

そのなかで、主要政策金利を据え置きつつも、後期流動性貸出金利を引き上げたことは、TCMBが中銀の独立性を守り、インフレ対応への決意を示したと言えそうです。今回の決定は、トルコリラにとってプラス材料と考えられます。ただし、エルドアン政権からの利下げ圧力が一段と強まるか注視する必要はありそうです。

3日に4月CPI(消費者物価指数)が発表されるものの、TCMBの政策会合がなく(次回は6月15日)、5月はトルコの独自材料が乏しい感があります。トルコ関連で突発的なニュースが出てこなければ、トルコリラは外部材料に左右される展開になる可能性もあります。<八代>


出所:Bloombergより作成

【南アフリカランド】 南アフリカの政局に引き続き注意が必要

南アフリカの政局の混乱や同国国債の格下げを受けて、ランド/円は4月12日に一時7.90円へと下落しました。ズマ大統領は3月30日に、ゴーダン財務相ら9人の閣僚を解任。与党ANC(アフリカ民族会議)内で反対意見が強いなかで、内閣改造が強行されたことで、ANC内での亀裂が表面化しました。

格付け会社のS&Pは4月3日、フィッチは同7日に、いずれも南アフリカ国債(外貨建て)の格付けを投資適格級最低の「BBBマイナス」から投機的等級(いわゆるジャンク)の「BBプラス」へと1段階引き下げました。一方、ムーディーズは内閣改造の影響を見極めるために7日予定されていた格付けの見直し結果の発表を見送りました。

ランドについては、南アフリカの政局や格付けをめぐるニュースに注意する必要があります。

5月のランドの独自材料として、25日のSARB(南アフリカ中銀)の政策金利発表が挙げられます。SARBは前回3月30日の会合で政策金利を7.00%に据え置いたものの、会合では6名のメンバーなかで1名が“0.25%の利下げ”を主張しました(残りの5名は“据え置き”)。

SARBはインフレ圧力と景気低迷とのジレンマに陥っています。南アフリカの3月CPI(消費者物価指数)が前年比+6.1%と、3か月連続で上昇率が鈍化したものの、SARBのインフレ目標の上限である+6%を7か月連続で上回りました。一方、2016年10-12月期のGDPは前期比年率マイナス0.3%でした。インフレを抑えるために利上げをすれば景気に打撃を与える恐れがある一方、景気支援のために利下げを行えばインフレ圧力を強める可能性があります。

CPI上昇率が鈍化傾向にあるとはいえ、インフレ目標を上回っている状況で、SARBが利下げする可能性は低いとみられます。5月の会合では、政策金利を据え置きそうです。会合における注目点は、6人の政策メンバーの主張(「据え置き」「利下げ」「利上げ」)や、クガニャゴ総裁がインフレについてどのような見解を示すのかです。クガニャゴ総裁は3月の会合では、「インフレへのリスクはやや上向き」との見方を示しました。近い将来に政策変更が行われる可能性があることをクガニャゴ総裁が会見で示唆すれば、ランドが反応する可能性があります。<八代>




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