市場調査部レポート

2017/03/24 14:24オバマケア改廃、ブレグジット、仏大統領選挙

【相場環境】オバマケア改廃、ブレグジット、仏大統領選挙
【全体観・米ドル】米ドル/円、110円台割れも視野に
【ポンド】英ポンド/円、緩やかな下降トレンドが継続しそう
【豪ドル】鉄鉱石価格に注意が必要か
【NZドル】米ドル主体の展開となりそう
【南アフリカランド】30日、SARBが政策金利を発表!!


【相場環境】 オバマケア改廃、ブレグジット、仏大統領選挙

今週、総じて米ドルが軟調でした。
オバマケア(医療保険制度)の改廃法案の議会審議が難航しているからです。トランプ大統領は減税やインフラ投資を含む包括的な財政政策に優先してオバマケア改廃を進める意向を表明していました。オバマケア改廃の難航が景気刺激策の先送りにつながるとの見方が強まりました。

オバマケア改廃法案は3月24日にも下院で可決される可能性があります。その場合、同法案は上院で審議されます。下院案通り可決されれば、大統領に送付されて署名を得れば成立します。上院で下院案が修正されて可決されれば、今後は上院案が下院で可決される必要があります(両院が同一の法案を可決して初めて、大統領に送付される)。上院は下院に比べて共和党穏健派が多いとみられ、下院案が保守派の要望を反映するなら、上院での審議は難航するかもしれません(*)。

(*)上院は全100議席のうち、共和党52議席、民主党46議席、無所属2議席(民主党に同調する傾向あり)。したがって、民主党と無所属の議員全員が反対すると仮定すると、共和党から3人の議員が反対すれば、改廃法案は可決されません

3月16日にデットシーリング(債務上限)が復活しました。現在の債務残高はほぼ上限に達しており、財務省は「非常手段(*)」を発動してやり繰りしている状況です。そのため、真にデフォルト(債務不履行)の危機が迫るのは今秋とのことですが、今後の予算審議に暗い影を落とすかもしれません。

(*)例えば、公務員年金が投資している特殊な国債を一時的に償還することができます。その特殊な国債はデットシーリングの対象なので、それらを償還することでその分だけ債務の増加余地を生み出すことができます。

3月16日、トランプ政権が今年10月に始まる2018年度の予算案を発表しました。ただ、通常の予算教書ほど詳細ではなく、また、医療保険制度や税制などに関する部分は含まれていません。それらを含んだ包括的な予算提案は5月ごろになるとされています。オバマケア改廃が遅れれば、予算提案も後ズレするかもしれません。

2017年度の継続予算が4月28日に期限切れとなります。年度残り(9月末まで)の継続予算を新たに成立させなければ、一部の政府機関が閉鎖される可能性があります。上述のオバマケア改廃法案や2018年度予算案とも絡んで、トランプ政権の議会運営が試されることになるかもしれません。

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英国では、メイ首相が3月29日にBREXIT(EU離脱)をEUに対して通告する予定です。これにより手続きが開始されます。
EUのトゥスク大統領は、BREXITの交渉ガイドラインを協議するため、EUサミット(27か国首脳会議)を4月29日に設定しました。

報道によれば、英政府はEU離脱時の拠出金として上限30億ポンドで内部調整しているとのこと。一方、 EU側では500-600億ユーロを要求するとみられており、交渉は最初から暗礁に乗り上げるかもしれません。
また、別の報道では、EU当局者が、合意なしでも英国が離脱交渉を早期に終了させる可能性に言及したとされています。そのケースでは、2年間の交渉期間を満了せずに早々にハード・ブレグジット(単一市場からも離脱)が現実味を帯びるかもしれません。

他方、メイ首相は、スコットランド独立に関する住民投票実施の要求を拒否する意向のようです。

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23日に第1回投票が行われるフランス大統領選挙では、世論調査で無所属マクロン氏と極右・国民戦線(FN)のルペン氏が接戦を繰り広げています。
3月20日に行われた主要5候補によるテレビ討論では、マクロン氏がやや優勢だとみられたようです。第1回投票でマクロン氏とルペン氏が勝ち、第2回投票でマクロン氏がルペン氏を破るというのが、依然として大方の予想です。ただ、ルペン氏勝利のケースは、確率が低いながらも、ユーロ崩壊など大きな影響を持ちうるという意味で注意は怠れません。

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来週の経済指標は、各国の物価関連が中心です。31日に、日本のCPI(消費者物価、2月)ユーロ圏のCPI(同、2月)米国のPCE(個人消費支出、2月)が発表されます。それらの動向は金融政策に影響を与えるために注目されます。

日本のCPIは、食料とエネルギーを除くコアが前年比0%近辺で推移しており、2%の物価目標達成が全く見えない状況です。日銀は物価目標を「早期に達成するもの」から「中期的に目指すもの」へと変更しており、弱いCPIが直ちに追加緩和を迫るものではありませんが、緩和期待を残させるものとなりそうです。

ECBは、食料やエネルギーを除くコアを重視する日銀やFRBと異なり、消費者物価総合を重視する傾向にあります。ただ、さすがに足元の急上昇は、エネルギーを主因とした一時的なものと判断しているようです。ドラギ総裁は金融緩和を継続する意向を表明しており、その状況は変わらないものとみられます。

米PCEコアは前年比2%を下回っているものの、ジリジリと伸びが高まっています(1月1.7%)。2%に一段と接近するようであれば、利上げ観測をサポートすることになりそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、110円台割れも視野に

【相場環境】にある通り、24日時点において、オバマケア(医療保険制度)改廃法案の議会審議が難航していることもあり、米ドルは対主要通貨で軟調な展開となっています。

そもそも、どうしてオバマケアの議会審議が難航することが、米ドル売り・株安フローとなるのでしょうか。

そのフローを確認する上で、昨年11月8日の米大統領選を起点にスタートした、いわゆる“トランプ・トレード”の中身について見ていく必要がありますが、その“トランプ・トレード”について別の表現をしてみると「トランプノミクス期待相場」と言えるのかもしれません。

以下、「トランプノミクス期待相場」の想定フローについて、ご覧ください。



「トランプノミクス期待相場」とは、その名の通り“期待感”先行相場のことで、トランプ大統領がその主軸政策として掲げる【減税】【大型インフラ投資】といった大型財政政策がもたらすであろう“予想図”がマーケットの期待感(=“アニマル・スピリッツ”)を刺激し、「株高・債券安(金利高)・ドル高」フローとなったと言えます。

ここでは、トランプ大統領がリーダーシップを発揮して、彼の選挙公約通りの【減税】【大型インフラ投資】が可及的速やかに実施されることが大前提となっており、議会運営のイニシアチブも含めた期待感がその原動力と言えます。

そんな中、トランプ大統領が議会に判断を委ねる主要政策の“1番バッター”とも言えるオバマケア(医療保険制度)改廃法案について、身内の共和党内で意見が割れてしまうという状態はマーケット参加者の不安感を煽ることになり、また仮に「否決」となり得た場合は、先に掲げた【減税】【大型インフラ投資】の実現性に対して大いに疑問符が付く結果となり得ます。

言うなれば、オバマケアの改廃法案すら纏めきれないトランプ政権に対する信認低下となり、マーケット参加者の“根拠なき楽観トレード”のアンワインド(巻き戻し)※が発生することは避けられそうにありません。(※ 株安・債券高・ドル安フローのこと)

24日東京時間でのオバマケア改廃法案は採決延期であって、否決ではないことには留意する必要がありますが、仮に24日東京時間深夜に可決となり得た場合であっても、今般の法案審議がスムースに決定できなかったことが後々の因果となる可能性も視野に入れておくべきなのかもしれません。

その他、先の大統領選におけるトランプ陣営とロシアとの連携問題がFBIの捜査線上にあがる動きを見せており、今後この問題は政権を大いに揺るがす「第2のウォーターゲート事件」になり得る可能性も取り沙汰されています。

いずれにしても、まずは足もとのオバマケア改廃法案のゆくえと今後の議会運営のハンドリングに注目する必要がありそうです。

閑話休題。以下、米ドル/円・日足・一目均衡表+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) 遅行スパン[先端部分]がローソク足の下方に位置していること、2) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の下辺にあること、そして3) DMI(方向性指数)において-DI>+DIとなり、その乖離が広がっていること(上図青丸印)から、下降トレンドが強まりつつあることを示唆しているのが分かります。

また、24日時点において、2016年11月時安値(101.18円、A)と同年12月時高値(118.65円、B)を結んだフィボナッチ・38.2%ライン(≒111.98円)を明確に下回っており、このモメンタムが継続すると仮定するならば次なるメドは同・50.0%ライン(=半値戻し)である109.92円

上記チャート形状から勘案する米ドル/円は、上方硬直性を伴うレンジ相場が継続することも想定できます。足もとの米ドル/円は、一時的に110円台を割り込むことも想定した方がいいのかもしれません。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ポンド】 英ポンド/円、緩やかな下降トレンドが継続しそう

以下、英ポンド/円・日足・一目均衡表+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) 遅行スパン[先端部分]がローソク足の下方に位置していること、2) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の下辺にあること、そして3) DMI(方向性指数)において-DIと+DIがクロスし、その後-DI>+DIとなった上でその乖離が広がりつつあること(上図青丸印)から、下降トレンドが今後強まる可能性を示唆していることが分かります。

また、24日時点において、2016年10月時安値(124.68円、A)と同年12月時高値(148.43円、B)を結んだフィボナッチ・38.2%ライン(≒139.36円)を下回りつつあり、今後明確に同ラインを割り込んだ場合の次なるメドは同・50.0%ライン(=半値戻し)である136.56円

上記チャート形状から勘案する英ポンド/円は、緩やかな下降トレンドが継続しそうです。<津田>


【豪ドル】 鉄鉱石価格に注意が必要か

豪ドルは今週(3月20日の週)、対米ドルや対円で軟調に推移しました。豪州の主力輸出品である鉄鉱石の価格が下落したことや、米国の医療保険制度(オバマケア)改廃案をめぐるリスクオフを背景に、豪ドルに下押し圧力が加わりました。

鉄鉱石価格は昨年秋以降に上昇基調を強め、今年2月に約2年半ぶりの高値を記録。その背景には中国の需要増がありました。その一方で鉄鉱石価格は今年2月までの1年間で2倍と急激に上昇したことから、投機マネーが先物市場へと流入することで現物価格を押し上げたとの見方もありました。鉄鉱石価格はその後、供給過剰懸念が浮上したことで下落へと転じました。

鉄鉱石価格の下落は、豪ドルにとってマイナス材料です。鉄鉱石価格が一段と下落すれば、豪ドルに一段の下押し圧力が加わる可能性があります。来週(3月27日の週)は、豪州の主要経済指標の発表がありません。豪ドルは、鉄鉱石など資源価格の動向により影響を受けやすい地合いになりそうです。<アナリスト 八代和也>


 *鉄鉱石価格=中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)
出所:Bloombergより作成


【NZドル】 米ドル主体の展開となりそう

RBNZ(NZ中銀)は3月23日、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定しました。

声明では、「NZの昨年10-12月期のGDP成長率は予想よりも弱かった」としたものの、「一時的な要因によるもの」と分析。「現在の緩和的な金融政策や力強い人口増加、家計消費や建設活動の増加に支えられて、成長見通しは依然として明るい」としました。一方で、「乳製品価格が最近のオークションにおいてボラタイルであり、今後の成り行きに不確実性が残る」と指摘しました。

国内のインフレに関しては、「全体のCPI(消費者物価指数)は今後12か月間、最近の食品および輸入価格の動向による一時的な影響で変動しやすいが、中期的には目標の中央値(+2%)に戻る」との見方を示しました。

NZドルについては、「TWI(貿易加重指数)は、乳製品価格の下落や金利差の縮小に応じて2月から4%下落した」と指摘。「これは心強い動き」とNZドルの下落を歓迎しつつ、「よりバランスの取れた成長を達成するためには、(NZドルの)さらなる下落が必要だ」と強調しました。

金融政策に関しては、「かなりの期間、緩和的になる」と改めて表明。「とりわけ国際的な見通しに多くの不確実性が残っており、それに応じて政策の調整が必要になる可能性がある」とし、引き続き、追加利下げに含みを残しました

今回の声明をみると、RBNZはNZの経済やインフレに関する見方を前回2月からほとんど変えていないようです。金融政策に関する文言も前回と全く同じでした。RBNZは政策金利の据え置きを当面続けるとみられます。

来週(3月27日の週)は、NZの2月住宅建設許可件数が31日に発表されるものの、材料としては小粒です。NZ側の次の大きな材料としては、4月4日の乳製品オークション(GDT)が挙げられます。NZの独自材料が乏しい来週は、NZドルは米トランプ政権の政策など外部要因の影響を受けやすい地合いになるとみられます。<八代>


【南アフリカランド】 30日、SARBが政策金利を発表!!

SARB(南アフリカ中銀)が3月30日に政策金利を発表します。SARBは前回1月の会合で、政策金利を7.00%に据え置くことを決定。クガニャゴ総裁は会見で、インフレ見通しについて「短期的に警戒を要する」述べ、リスク判断を2016年11月の「わずかに上向き」から「上向き」へと若干修正しました。

南アフリカのCPI(消費者物価指数)上昇率はSARBのインフレ目標を上回っています。今年2月の上昇率は前年比+6.3%と、1月の+6.6%から伸びが鈍化したものの、SARBのインフレ目標の上限である+6%を6か月連続で上回りました。

一方で、南アフリカでは経済が低迷。昨年10-12月期にマイナス成長へと転落しました。南アフリカの10-12月期GDPは前期比年率換算でマイナス0.3%。マイナス成長を記録したのは、2014年以降、4回目です。

インフレ圧力の高まりと景気低迷の狭間で、SARBは今回、政策金利の据え置きを決定しそうです。

市場では、SARBがCPI上昇率は今後鈍化するとの見通しを示していることや景気低迷を背景に、SARBの次の一手は“利下げ”との見方もあります。クガニャゴ総裁が政策金利発表時の会見で、先行きの金融政策について新たな材料を提供するのかどうかに注目です。新たな材料が提供されれば、南アフリカランドが反応する可能性があります。<八代>


出所:Bloombergより作成


出所:Bloombergより作成




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