市場調査部レポート

2017/02/17 10:46米利上げは3回では終わらない!?

【相場環境】米利上げは3回では終わらない!?
【全体観・米ドル】米ドル/円、28日まではレンジ相場が継続か
【ユーロ】ユーロ/円、鯨幕相場の展開も
【英ポンド】英ポンド/円、三角保ち合いが継続しそう
【豪ドル】鉄鉱石価格上昇。豪ドルの支援材料となりそう
【NZドル】対米ドル、対円ともにレンジの動き継続か
【トルコリラ】国民投票は4月16日。世論調査に反応しやすい地合いへ!?


【相場環境】 米利上げは3回では終わらない!?

14-15日の議会証言で、イエレン米FRB議長は、「利上げを待ち過ぎることは賢明ではない」と述べ、従来以上に利上げに積極的な姿勢を示しました。今週発表された米経済指標も、1月の小売売上高やCPI(消費者物価)、2月のNY連銀およびフィラ連銀製造業景況指数など、概ね早期利上げをサポートする内容でした。

昨年12月に公表されたFOMC参加者の政策金利見通し、いわゆる「FOMCのドット」では、2017年中に3回の利上げを示唆されました(利上げ幅を0.25%と仮定)。ただし、これはあくまでも中央値であり、17人の参加者が同一の見解を持ったわけではありません。17人の利上げ見通しは、1回-6回と大きなバラツキがありました。

議長だけでなく、フィッシャー副議長も含めてFOMC参加者の多くは、物価は+2%の目標に近づいているとみているようです。そして、物価目標が達成されるならば、今後3回の利上げでは不十分になる可能性が高そうです。

金融政策の先行きについて、2月1日のFOMC声明文では、「FFレートは、長期的に予想される水準をしばらくは下回って推移する公算が大きい」とされました。ただ、3回の利上げを想定してFFレートが1.25-1.50%に上昇するとしても、物価が+2%ならば、実質金利(名目金利-インフレ率)はマイナス圏に沈んだままであり、引き続き景気刺激的と判断することが可能です。FRBが政策金利の正常化を進めるなかで、3回利上げしても、まだ道半ばと判断できそうです。

上述の「FOMCのドット」では2018年も3回の利上げが示唆されています。ただ、現在の為替市場はせいぜい2017年中の3回利上げを織り込んでいる程度だと思われ、2018年にかけても利上げが続くとの観測が強まれば、米ドルのサポート要因となりそうです。

**********



来週は、あまり目立った経済指標はありません。翌週の28日に予定される上下両院会議でのトランプ大統領の所信表明演説(一般教書演説に代わるもの)で、具体的な経済政策が打ち出されるかに市場の関心は移っていきそうです。

そうしたなかでも注目されるのは、21日のRBA(豪中銀)の議事録、同日のカーニーBOE(英中銀)総裁の議会証言22日の米FOMC議事録など、中央銀行関連のイベントでしょう。

RBAは7日の会合時の声明で、CPI上昇率は年内に2%を上回るとの見方を示す一方、先行きの金融政策について言及しませんでした。議事録で新たな手掛かりが出てくる可能性は低そうです。

BOEのMPC(金融政策委員会)内部では、足元のインフレ率加速を懸念して利上げを支持する委員もいるようです。しかし、ブレグジット(英国のEU離脱)の影響が不透明だとして、カーニー総裁は辛抱強く金融緩和を続けることを表明しそうです。

FOMCが以前に比べて利上げに前向きになってきたことは、既にイエレン議長の議会証言で明らかになっています。ただし、トランプ大統領の財政政策について、あるいはハト派とタカ派の間で、どんな議論がなされたかは興味深いところでしょう。

その他では、ブレグジットの宣言に向けてメイ首相が議会から承認を得られそうな英国や、極右の国民戦線(FN)のルペン候補がリードしているフランス大統領選挙など、欧州情勢にも注意が必要かもしれません。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【全体観・米ドル】 米ドル/円、28日まではレンジ相場が継続か

トランプ新政権がスタートしてからそろそろ1カ月が経過しようとする中、その政権運営に暗雲が立ち込めるようなニュースが次々と入ってきています。

まずは、トランプ大統領の“懐刀”とも言えるフリン米大統領補佐官の辞任。大統領就任前の段階でロシア側と米国の対ロ制裁について協議したとの疑いが表沙汰となり、民間人による外交政策への介入を禁止した法律に抵触することとなり、トランプ大統領の任命責任が問われる可能性も。

さらに、次期労働長官に指名されていたパズダー氏が指名を辞退(※)。また、トランプ大統領の上級顧問であるコンウェイ氏によるトランプ大統領の実娘イバンカさんのブランドに関する発言が、連邦倫理規定違反に問われる可能性も取り沙汰されるなど、問題山積の船出模様となっています。(※パズダー氏自宅の家事使用人として不法移民を雇っていた事実が発覚したため。)

新政権スタートから時を置かずして政権中枢メンバーの離脱や問題発言は、今後の政権運営にも少なからず悪影響を与え、米国政治史上でも異例といえるほどの遅いペースとなっている閣僚承認が、さらに遅延する可能性も。

そんな中、トランプ大統領は、今月末28日米上下両院合同本会議において、通常の「一般教書演説」にあたる施政方針演説を行う予定となっており、その中で「減税」「大型インフラ投資」について市場参加者にとってポジティブな内容が飛び出すのではないかとの憶測が取り沙汰されています。

トランプ大統領としては、出来るだけ煌びやかな政策を掲げて、ネガティブな話題(=入国禁止令を巡る訴訟問題や問題山積の政権人事等)から耳目をそらしてもらう必要性もあり、その意味でも実現可能な政策か否かはさて置き、いかに大きく、そしていかに派手な風呂敷を広げるかどうかがポイントとなりそうな気がします。

今や、トランプ政権を象徴するワードになりつつなる“オルタナティブ・ファクト”(代替的事実)ですが、28日に予定されている演説内容も、その“オルタナティブ・ファクト”となり得るのでしょうか。

閑話休題。以下、米ドル/円・週足・一目均衡表+フィボナッチ+DMIをご覧ください。



上記チャートより、1) ローソク足が先行スパン(いわゆる“雲”)の上方にあること、2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること、3) 転換線が基準線の上方にあることから、週足・一目均衡表から勘案する米ドル/円のトレンドは【上向き】と見ることができます。

一方で、相場の方向性を示すDMI(方向性指数)を見ると、マイナスの方向性を示す-DIがプラスの方向性を示す+DIよりも上方に位置していることから、週足・DMIから勘案する米ドル/円のトレンドは【下向き】となっています。(上図赤丸印)

ここでは、一目均衡表が示すトレンドとDMIが示すトレンドとにダイバージェンス(=相違、逸脱)が生じており、その力学上のベクトルが相殺し合う形の帰結として【レンジ相場】が継続しそうです。

レンジ相場が継続するという仮説の下、当面の米ドル/円は、2015年6月高値(125.86円、上図A)と2016年6月安値(98.76円、上図B)を結んだフィボナッチ・50.0%(=半値戻し、上図C)ラインと同61.8%ライン(上図D)の間のゾーンである112.31-115.51円をコアレンジとする展開となりそうです。

テクニカル的な面とともに、先述した通り、政治や政策面の『不確実性』を勘案した上で、当面の米ドル/円はレンジプレイを主体とする戦略がワークしそうです。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、鯨幕相場の展開も

以下、ユーロ/円の週足・一目均衡表+パラボリック+DMIをご覧ください。



先週の当レポートでもお伝えした通り、ユーロ/円の週足チャートにおいて、パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)が先週時点で売りサインに転換しています。(上図青丸印)

チャートを改めて確認してみると、1) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、2) DMI(方向性指数)において-DIと+DIがクロスし、-DI>+DIとなっていることから(上図赤丸印)、ユーロ/円の下向きモメンタムが継続しそうです。

DMIのADXがさらに高い位置へと推移しつつあることからも、-DI>+DIが示すトレンド、つまり下降トレンドの勢いがさらに加速する可能性も。

足もとのユーロ/円の下値メドは、先週に引き続き週足・一目均衡表の基準線である118.07円付近と想定され、当面は“雲”の中で方向感の定まらない“鯨幕相場”(=気迷い相場)が継続しそうです。<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、三角保ち合いが継続しそう

以下、英ポンド/円の週足・一目均衡表+パラボリック+DMIをご覧ください。



先週に引き続き、英ポンド/円の週足・一目均衡表+パラボリック+DMIを見ながら、当面のトレンドとコアレンジを考えてみたいと思います。

上記チャートより、1) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、2) DMI(方向性指数)において-DI>+DIとなり、その乖離が拡大しつつあること(上図赤丸印)、3) 同DMIにおいて、ADXが高い位置へと推移しつつあること、また4) 遅行スパンがローソク足と絡み合っていることから、英ポンド/円は上方硬直性を伴うレンジ相場となりそうです。

足もとの英ポンド/円の下値メドは、ユーロ/円同様、週足・一目均衡表の基準線である136.56円付近と想定できます。当面の英ポンド/円は、“雲”の下辺である先行1スパン(≒141.16円)の圧力を受けつつ、三角保ち合い(もちあい)を継続していくのではないでしょうか。<津田>


【豪ドル】 鉄鉱石価格上昇。豪ドルの支援材料となりそう

豪州の1月雇用統計が2月16日に発表されました。結果は、雇用者数が前月比1.35万人増、失業率が5.7%と、いずれも市場予想の1.00万人増、5.8%よりも強めの結果でした。

ただし、雇用者数の内訳をみると、パートタイム雇用者が5.83万人増加した一方、フルタイム雇用者が4.48万人減少。また、労働参加率が横ばい予想に反して昨年12月の64.7%から64.6%へと低下しました。それを踏まえると、雇用者数や失業率は、ヘッドラインの数値(雇用者数1.35万人増、失業率5.7%)が示唆するほど強い内容ではなさそうです。

一方で、豪州の主力輸出品である鉄鉱石の価格が上昇しています。中国の青島に荷揚げされる鉄鉱石(鉄分62%)価格は、足もとで1トン90ドル前後と、2014年8月以来、2年半ぶりの高値圏にあります。

鉄鉱石価格上昇の背景には、中国の輸入増が挙げられます。中国の1月の鉄鉱石輸入量は9,200万トンと、昨年12月の8,895万トンから増加。前年同月と比べて12%増えました。ただし、今年は春節に伴う連休が昨年よりも前倒しされました。今年の連休は1月27-2月2日、昨年は2月7-13日でした。それにより、春節前の駆け込み需要が昨年よりも早まり、統計が歪められているとの指摘もあります。それでも、中国の需要の堅調さが示唆されたことは鉄鉱石価格にとってプラス材料と考えられます。鉄鉱石価格が一段と上昇すれば、豪ドルの追い風となりそうです。<アナリスト 八代和也>


出所:Bloombergより作成


【NZドル】 対米ドル、対円ともにレンジの動き継続か

RBNZ(NZ中銀)が2月9日の会合時の声明や金融政策報告で、政策金利を長期間据え置くことを示唆しました。それを受けて、RBNZの早期利上げ期待が後退し、会合後にNZドルがいったん下落しました。

ただ、声明などを材料視したNZドル売りは長続きせずに反転。今週、一時NZドル/米ドルは0.72米ドル台、NZドル/円は82円台へと上昇しました。根強い年内利上げ観測がNZドルの支援材料になっていると考えられます。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が2月16日時点で織り込む、RBNZが今年11月までに利上げを行う確率は42.1%、据え置きが57.3%、利下げが0.6%です。

NZドル/米ドルは昨年6月以降、おおむね0.70から0.74米ドルを中心とした動きが続いてきました。米FRBが年内に複数回利上げするとの見方が上値を抑える一方で、RBNZの利上げ観測が下値を支えそうです。レンジで上下を繰り返す動きは当面続く可能性があります。

NZドル/米ドル(週足、2015/3/22週-)

出所:M2JFXチャート

一方、NZドル/円は、2カ月半にわたって80から84円のレンジで上下を繰り返してきました。NZドル/米ドルや米ドル/円がレンジ色を強めていることを考えると、NZドル/円は方向感が出にくいとみられます。80から84円の動きが当面継続する可能性があります。<八代>

NZドル/円(日足、2016/9/30-)

出所:M2JFXチャート


【トルコリラ】 国民投票は4月16日。世論調査に反応しやすい地合いへ!?

トルコの憲法改正案の是非を問う国民投票が4月16日に実施されることが決まりました。憲法改正案は、現行憲法で象徴的な意味合いが強い大統領の権限を強化することが目的です。首相を廃止して大統領を補佐する副大統領を新設し、閣僚や政府高官の指名権や議会の解散権、予算編成権などを大統領に与えることなどが盛り込まれています。

市場は、憲法改正によってエルドアン大統領が独裁色を一段と強めることを懸念。それがトルコリラの重石となっています。

最近の世論調査では、憲法改正に賛成と反対がそれぞれ40%前後と拮抗しており、予断を許さない状況です。投票日に向けて、各種世論調査が発表されることが予想されます。その結果に、トルコリラが敏感に反応する可能性があります。トルコリラは足もとで反発傾向にあるものの、引き続き注意が必要です。<八代>




PDF(PDFファイルでご覧いただけます。)
市場調査部レポート

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

バックナンバー

「市場調査部レポート」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ