週刊2分でわかるトルコ

2016/05/23注目人事と利下げ見通し

「強い大統領制へ」

トルコの与党・公正発展党(AKP)が22日、アンカラで臨時党大会を開催。辞意を表明したダウトオール首相に代わる新しい党首として、ユルドゥルム運輸海事通信相を選出しました。

党首選には、エルドアン大統領が後押ししたとされるユルドゥルム氏以外、立候補者はいない無風選挙でした。

AKPの党規では、党首が首相を務めると定められています。ユルドゥルム氏は、エルドアン大統領からの正式の首相指名を経て、直ぐに新しい内閣を発足させるとみられます。

シリア内戦とISIS、難民、クルド系武装組織PKKとの戦争など、トルコは多くの問題を抱えています。しかし、新政権の最優先課題は、大統領制の導入です。現行の憲法では、大統領は名誉職で象徴的存在。ドイツやイタリアに似ています。これを、アメリカやフランスなどと同様に、強大な権限を持つ大統領制に移行することが狙いです。ユルドゥルム氏は、選出に先立つ演説で、「政府の最重要任務は、憲法を改正し大統領制を導入することだ」と明言しました。

エンジニア出身のユルドゥルム氏は現在60歳。エルドアン大統領がイスタンブール市長だった当時、フェリー会社の社長として海上交通網、インフラの整備に手腕を発揮しました。2002年にAKPが政権を取って以降、一貫して運輸相を務めました。エルドアン大統領の側近中の側近です。

目先の注目は新内閣。特に、首相職を事実上奪われたダウトオール氏が起用を主導したシムシェキ副首相の処遇です。マーケットの評価が高かったトルコ中央銀行のバシュチュ前総裁が離職したいま、アメリカの投資銀行出身のシムシェキ副首相は、唯一の「マーケットの理解者」とされています。

政府寄りになったヒュリエット紙は先週、エルドアン大統領の娘婿、アルバイラク・エネルギー相がシムシェキ氏に代わる経済担当の副首相に指名されそうだとするコラムを掲載しました。

トルコリラの対米ドル相場は先週、ユルドゥルム氏の首相指名が確実になったことを伝える速報で、上昇に転じることはありませんでした。エルドアン大統領の権限が強化されることへの不信感が根強くあり、ダウトオール首相の辞意表明後の安値水準を抜けられませんでした。新内閣の人事次第で、懸念が一段と強まることも予想され、人事が当面のトルコリラの方向を決めそうです。

「利下げ圧力」

トルコ中央銀行は24日、金融政策委員会を開きます。チェティンカヤ総裁の2回目の会合。4月に続いて、3つの政策金利のうち最も高水準の翌日物貸出金利を引き下げるとみられています。4月の消費者物価指数が6.6%まで低下したことが利下げ予想の背景です。

ロイターが地元のエコノミスト18人を対象にした調査では、11人が0.50%引き下げを予想。4人が0.25%利下げするだろうと答えました。主要な1週間物レポ金利は7.50%、最も低い翌日物借入金利については7.25%に据え置くと予想されています。

トルコ中銀が予想通り翌日物貸出金利のみを引き下げた場合、マーケットへの影響は限定的だとみられます。ただ、懸念があります。メディアへの登場が稀なゲディキリ大統領顧問は先週、中央銀行は0.25%利下げするのではなく、経済成長のため、積極的に利下げを継続しなければならないとコメントしました。大統領顧問のコメントはマーケットで材料視され、トルコリラ売りにつながりました。

エルドアン大統領の独裁色が強まるとの懸念、そして利下げ見通しを背景に、当面のトルコリラは上値の重い展開が予想されます。

BofAメリルリンチは、トルコリラの対米ドル相場が、6月末の2.90から、9月末と12月末には3.10になると予想。そして、来年については、3月末の3.25から下落基調が続くとの見通しを顧客向けレポートで示しました。
 


[May 23, 2016 T0078] 

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

「トルコリラ」関連コンテンツ

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

「週刊2分でわかるトルコ」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ