週刊2分でわかるトルコ

2016/11/28効果なかった利上げと大統領の警告

「予想超える利上げ幅」

トルコの中央銀行は24日に開いた金融政策委員会で、主要な政策金利である1週間物レポ金利を0.5%引き上げました。予想は0.25%利上げだったので、それを上回りました。中銀はまた、翌日物貸出金利を0.25%引き上げました。

2年10カ月ぶりの利上げ。中銀会合の前日、トルコのエルドアン大統領は「トルコの金利は世界で最も高い」と批判、利下げを迫る政治圧力を強めました。中銀のチェティンカヤ総裁がそれに逆らった形。独立性を示しました。

中銀は声明の中で、通貨安がインフレ率見通しの上昇リスクを招いていると懸念を表明。トルコリラの下落を食い止めることが狙いだと説明しました。

声明発表の直後、トルコリラの対米ドル相場が急上昇しました。しかし、すぐに方向転換。売りが膨らみトルコリラは対米ドルで過去最安値を更新しました。翌25日の取引でも、トルコリラが値を戻すことはありませんでした。

なぜか。原因の一つはトルコとEUの関係悪化。トルコ中銀が利上げの決定を発表して間もなく、欧州議会が、トルコのEU加盟交渉の凍結を求める決議を採択しました。7月15日のクーデター未遂事件後の「粛清」が背景です。軍関係者、警察、公務員、教員など10万人以上の身柄が拘束、もしくは解任されました。多数のメディアを閉鎖、言論の自由を奪いました。ヨーロッパ各国は、トルコ政府の対応が「非人道的だ」と繰り返し批判していました。

エルドアン大統領は25日、イスタンブールで演説、欧州議会の決議を批判。EUがさらなる動きに出れば、ヨーロッパを目指す難民や移民に国境を開くと警告しました。Financial Timesは、欧州議会の決議がエルドアン大統領の怒りを招き、同氏が300万人の難民をヨーロッパになだれ込ませると脅迫したとトップ級で報じました。エルドアン大統領は27日も「何もわかっていない」と欧州議会をあらためて批判しました。

「時代が変わった」

The Wall Street Journalは、トルコ中銀が予想以上の利上げに踏み切ったが、トルコの問題を解決することには至らなかったと報じました。

Journalは、トルコ中銀の約3年ぶりの利上げは正しい措置だったが、トルコは新興国の冷え込みに特に影響されやすいと指摘しました。欧州議会の決議に加え、巨額の経常赤字をはじめとする弱さが多く存在するとしています。その上で、トルコはかつて、世界の金融緩和と利回り追求の恩恵でマーケットの混乱を切り抜けてきたが、そうした日々は終わったようだと解説しました。

11月8日のアメリカの大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利して以降、財政拡大や減税によるインフレ率上昇への期待感を背景に、アメリカの金利と米ドル相場の上昇が加速しました。S&Pは、トルコが「トランプフレーション」のリスクの矢面に立たされていると指摘しました。新興国通貨が幅広く売られていますが、メキシコペソと並んでトルコリラの下げが目立っています。

トルコのヒュイレット紙によりますと、ユルドゥルム首相は25日、1月20日にトランプ氏が大統領に就任するまでマーケットが不安定で、トルコリラが大きな影響を受けるとの見方を示しました。その上で首相は、中銀の利上げに続いて、政府がトルコリラ安を阻止する対策を講じると述べました。

アナリストは懐疑的です。ロウビーニ・グローバル・エコノミクスのアナリストは「トルコの環境は悪くなる一方だ。経済への信頼感がなくなり、資本が流出している」として、過去最低水準(1米ドル=3.45リラ)にあるトルコリラの対米ドル相場が来年末までに3.7リラまで下落するだろうとReutersにコメントしました。

トルコリラは当面、軟調に推移するとの見方が優勢です。新興国通貨が反発する局面でも上値が重いと予想されています。クロス取引の対円相場は、米ドル円の振れが大きいため、その影響を受けそうです。
 
[November 28, 2016 T0105]

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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