週刊2分でわかるトルコ

2016/09/26トルコリラ「望ましいレベルではない」

「格下げ」

アメリカの格付け会社ムーディーズは23日遅く、トルコの長期国債の格付けを引き下げたと発表しました。投資適格級の中で最低の「Baa3 」から投機的水準、別の言い方ではジャンク級の「 Ba1」に1段階引き下げました。見通しは「安定的」としました。

ムーディーズは当初、8月5日にトルコの格付け見直しを発表する予定でした。非常事態で正確な情報が得られなかったこと、判断材料が乏しいことなどを理由に見直しを延期しました。10月半ばに発表されると見られていましたが、23日にウェブ上で突然リリースされました。

発表資料の中でムーディーズは、クーデター未遂事件後の経済活動の低迷や政治リスクの高まりを背景に、外国資本が急激に逆流、国際収支が大幅に悪化する懸念があると指摘しました。その上でムーディーズは、「今後2〜3年にわたり信用力の低下が続く」とコメントしました。

トルコ国債をめぐっては、3つの主要格付け会社のうち、スタンダード&プアーズ(S&P)が7月に投機的水準に引き下げています。もう1つのフィッチは、来年1月に見直す予定です。

「エルドアン大統領」

エルドアン大統領は先週、国連総会に出席するためアメリカの東海岸を訪問しました。ニューヨークの国連での演説のほか、複数のメディアとの会見、投資家との会合などの日程を精力的にこなしました。

メディアのインタビューでは、クーデター未遂事件の首謀者と名指しする在米のギュレン師の身柄引き渡しを事実上拒んでいるアメリカ政府を繰り返し批判しました。ムーディーズが格下げした前日に行われたブルームバーグとのインタビューでは、「格付け会社は政治的判断をする」「格下げされても全く気にしない」と発言しました。

一方、トルコのアナドル通信は、ニューヨークでエルドアン大統領と会ったアメリカの投資家が、強い好印象を持ったと伝えました。クーデター未遂事件後のトルコ経済が想像以上に堅調だと受け止めたと解説しました。

エルドアン大統領の圧力で、トルコの主要メディアは政府の影響下にあります。これが影響してトルコ国内の報道と欧米メディアのトーンの違いが、クーデター未遂事件以降に顕著になっています。

ムーディーズはメディアではありませんが、発表資料の厳しい指摘は、トルコ国内メディアが伝える情報と大きなギャップがあります。

「リラ売り圧力」

世界の大手投資ファンドの多くは、3つの主要格付け会社の中で少なくとも2社が投資適格級に格付けしていることを投資の最低条件にしています。ムーディーズの格下げにより、2社がジャンク級に格付けしたことになります。トルコに投資している外国ファンドが、投資の引き揚げを強いられることが必至です。

格下げにより、トルコ政府や企業の資金調達コストが大幅に高くなることも予想されます。経済活動がさらに停滞する懸念があります。

トルコリラの対米ドル相場は比較的安定していました。クロス取引の対円相場は、日米金融当局の政策をめぐる見方、思惑で米ドル円が大きく動いた影響を受け、やや軟調でした。ムーディーズの格下げは、発表がトルコ時間の23日深夜だったため、先週末の相場に反映されていません。週明けのトルコリラは、ムーディーズの格下げを嫌気した売り圧力が高まる可能性があります。

エルドアン大統領は、トルコリラの対米ドル相場の現在の水準について「望ましいレベルではない」とブルームバーグのインタビューで述べました。エルドアン大統領は通貨高の必要性をかつてから主張しています。
 
[September 26, 2016 T0096]

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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