週刊2分でわかるトルコ

2016/08/29トルコリラと南アフリカランドの関係

「女性警官のスカーフ」

フランスのリゾート地カンヌで「ブルキニ」の着用が禁止されました。他のフランスのリゾートも続き、欧米で話題になっています。

「ブルキニ」とは、イスラム教徒の女性の衣装「ブルカ」と「ビキニ」を合わせた造語で、オーストラリアの女性が発案した女性の水着です。「ブルキニ」を公共のビーチで着用した場合、38ユーロ(約4300円)の罰金となります。警官が「ブルキニ」を強制的に脱がす映像が欧米で幅広く流れました。

フランスのニースで先月、イスラム教徒が運転するバスが暴走するテロ事件が発生。その前にもイスラム教徒によるテロが相次ぎ、多数が犠牲になりました。反イスラムのフランスの国民感情が「ブルキニ」禁止を後押し、フランスの首相も賛成しました。人権団体やイスラム教団体が反発、社会問題に発展しました。

一方、トルコでは、フランスとは反対の動きになっています。27日の官報で、女性警官がスカーフを着用することが初めて解禁されました。トルコは建国以来、厳格な政教分離政策を実施、公共の場や教育の現場ではスカーフの着用が禁止されました。トルコ人の99%がイスラム教徒とされていますが、イスタンブールやアンカラの街を歩く女性はフランスやアメリカと変わりません。中東のいずれの国とも異なります。

しかし、エルドアン大統領が設立したイスラム系与党の公正発展党(AKP)は、2002年に政権を取って以降、大学などでスカーフを着用することを解禁してきました。エルドアン大統領は、アメリカ在住のギュレン師をクーデター未遂事件の首謀者と特定しています。背景には、政教分離を強く主張するギュレン師とイスラム教に大きく傾斜するエルドアン大統領のイデオロギーの対立があります。エルドアン大統領はまた、イスラム金融を今年に入り強化しています。

「売られたリラとランド」

先週のマーケットでは、アメリカのワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウムに注目が集まりました。山場となったFRBのイエレン議長の演説が、年内利上げの可能性を示唆する内容だったことで、米国債利回りが上昇、米ドルが買われました。

低い金利の通貨で資金を調達し、高金利の市場に投資する「キャリートレード」が過去1カ月増えていました。しかし、ジャクソンホールのイエレン演説に注目が集まった先週は、その巻き戻しが急激に活発化しました。

特に目立ったのは、南アフリカランドとトルコリラの2通貨です。FTなど複数の経済メディアが2通貨の下げを大きく取り上げました。

南アフリカでは先週、投資家や財界の信任が厚いゴーダン財務相に対し警察への出頭命令が出されました。国税庁長官時代に違法にスパイ部門をつくったとの疑いが持たれています。ゴーダン財務相は出頭を拒否しましたが、警察の背後にいるズマ大統領との関係が悪化したことを示す形になりました。
ゴーダン財務相が解任されるとの観測も広がりました。政局混迷で、南アフリカランドは対米ドルで約5%下落しました。

トルコリラ相場は、7月15日のクーデター未遂事件後の急落後に戻し、その後安定していました。しかし、トルコ軍がシリアに越境、本格的な軍事行動に出たことを受け、基調が変わりました。週末にトルコ軍兵士が死亡したことで、シリアへの攻撃がエスカレートしています。長期化、泥沼化する可能性があります。

クーデター未遂事件後の非常事態でエルドアン大統領の権限が大幅に強化され、中央銀行の独立性が疑問視されていることもトルコリラ売りを誘っています。トルコ中銀は23日の金融政策委員会で、エルドアン大統領の要望に沿う形で6カ月連続で政策金利を引き下げました。

ロイターによりますと、シティグループはこれまで、トルコリラと南アフリカランドの通貨ペアで、トルコリラ買いを推奨していました。先週、推奨を取り下げました。シリア越境などを理由に、先行きが不透明になったことを理由にあげています。シティグループは、新興国通貨への投資を慎重にするようアドバイスしています。

ニューフリート・アセットマネジメントのストラテジストは「新興国通貨は不安定で、短期間に大きく変動するリスクにあらためて気付かされた」とブルームバーグにコメントしました。

キャリートレードの巻き戻し、シリア戦争、中銀の独立性への懸念、それらとFRBの早期利上げ観測との組み合わせで、トルコリラの対米ドル相場は当面の間、軟調に推移するとの見方が優勢です。クロス取引の対円相場については、日米の金融政策をめぐる思惑で米ドル円の変動率が高くなる傾向があり注意が必要です。

[August 29, 2016 T0092]

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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